走れ

ただし「いやー、間に合った」
田中「なんだよ、ずいぶんぎりぎりだな。待ち合わせの時間」
ただし「ああ」
田中「何かあったの?」
ただし「いやー。友達の結婚式があって、さっきまでそれ行ってたんだ」
=====
ただし「これだけです」
-「これだけですか」
ただし「はい。これだけで、メロスですよ」
-「・・・」
ただし「これだけで僕のあだ名、メロスですよ。酷いものでしょう」
-「ええ、まあ」
ただし「あまりいないでしょう?。周りにあだ名、メロス」
-「まあ、いませんね」
ただし「妙に知られているから、困るんですよ、このあだ名」
ただし「ただ走っているだけでも、面白いらしいんですよ、このあだ名知ってるやつから言わせると」
-「でも、あだ名の由来、なかなか気が利いてるじゃないですか」
ただし「まあそうですけど」
-「それに、なかなかカッコいいらしいですよ、メロス」
ただし「え、そうなんですか」
-「治のなかでは」
タダシ「ふーん。悪い気はしないですけどね」
-「いいじゃないですか。解決ですよ」
タダシ「まあ、そうですね」
-「じゃあ、この問題は解決ということで」
メロス「まあそれでいいですけど」
-「・・・何か、問題が解決したとたん、見違えるようにカッコよくなりましたね」
メロス「え、そ、そんなことないですよ」
-「いや、何か外人みたいですよ、メロス」
メロス「何だ、冷やかさないでくださいよ」
-「ほんとですって。メロス!! メロス!!」
メロス「ちょっ、ちょっと!!」
-「メロス!! メロス!! メロス!!」
メロス「ちょっと!!。何いい具合に終わらそうとしているんですか!!」
nimbus7942「・・・ごめんなさい」

友好的買収

ずいぶんと山奥で心配だった。
人家はあまりなく、歩道も整備されているとは言いがたい。
すぐそばを、猿の親子が歩いていく。
でも会場に近づくにつれ、にぎやかな祭囃子が聞こえ、人の数も劇的に増していった。
その桜祭りは大盛況だったのだ。
なんだか懐かしい気持ちになりながら出店を見回っていくと一角、すっぽりと人だかりのない箇所に気付いた。
近寄ってみると、ハチマキにハッピを着用したオヤジが、ちょこんと座っている。
そして、手にヒモを持っている。
そのヒモが奇妙なのだが、ヒモの先にはハッピが。
オヤジの着用しているハッピと同じものなのだが、ずいぶんと小さい。
そんなものが付いているのだ。
私はたまらず「オヤジさん。何やっているのですか?」と聴いてしまった。
するとオヤジは「やっぱり、分かりませんかね。」と言う。
私が返答に困っていると、それを察したのか教えてくれた。
「今、エア猿回しやっているんですけどね。」
そう言われて周りをみると、確かに小さなタイコや竹馬など、まあ猿回しの芸として重要なツールがいくつか置いてある。
「エア猿回しですか。」
「ええ、でも、ちょっとわからないですよね。」
「まあ。その、なんですか。ちょっとオヤジさんは先見の明すぎでしょ。」
「そうですかねえ。」
「でも、なんですか。別にエアじゃなくてもいいんじゃないですかね。」
「猿回しとしては訓練とかも必要でしょうけど、さっきなんか、そこらでも猿を見かけましたよ。」
「ああ、それですか。いやだなお客さん。それもエア猿回しですよ。」
そう言うとオヤジは、私の背後の風景を見るような目をした。

音楽性の違い

「だから、俺はバンドを抜けるって言ってるんだよ」
「急にそんなこと言われても、ハイそうですかってなるかよ」
「…おまえ、「うらがえしポンチョ」から誘われてるだろ?」
「えっ、あの有名なコーラスグループに?」
「、…おまえらには関係ないだろ」
「関係ないことないだろ。ずっとうまいことやってきたじゃないか」
「その点は、今回の話とは関係ない」
「くそっ。お前も何か言えよ」
「…そうだね」
「あ?」
「いや、そうだね」
「僕らには関係ないよ」
「関係ないよって…」
「その点は僕らと関係ない」
「どの点が関係ないっていうんだ!」
「5行目のやつだね」

未来パトロール隊

「今日のゲストは、殺し屋のジョニーさんです。」
ジョニー「こんにちは。」
「さっそくですが、ジョニーさんは業界でも有名な「やさしい殺し屋」であるとのことですが。」
ジョニー「そう、言われていますね。」
「なぜでしょう?。」
ジョニー「相手さんに、納得して死んでもらう、ということを実践しているからでしょう。」
「と言いますと?。」
ジョニー「私は、相手にこう言います。私は、未来パトロール隊の者だ。あなたは将来、世界を変えるような大発明をするのだが、その大発明のために、未来の世界は争いごとが絶えない社会になってしまっている。」
ジョニー「そういうことで、あなた自身に罪はないのだが、未来を変えるため、死んでもらわなくてはならないのだ、と。」
「なるほど。」
ジョニー「これで、ほとんどの人は納得してくれます。」
「だから、銀色のタイツをいつも身につけていらっしゃる。」
ジョニー「ええ。」
「ヘルメットに触覚みたいなものをつけていらっしゃる。」
ジョニー「ええ。」
「なかなかいい仕事をしていらっしゃる。今日はどうもありがとうございました。」
ジョニー「こちらこそ。」
スタッフ「ジョニーさん。お帰りなら、タクシーを呼びましょうか?。」
ジョニー「いやあ、大丈夫です。もうすぐ未来パトカーが来ますんで。」
スタッフ「まれに見る、職人気質ですね。」

音の見える装置

博士「ついに、音を視覚化できるメガネを開発しました」
助手「やったですね」
博士「じゃあ君、かけて見たまえ」
助手「はい」
博士「じゃあ、スイッチON」
助手「うわあ」
博士「どうしたの」
助手「ごちゃごちゃして、前が見えません」
博士「うーん。人間の聴こえる音域だけでも、そんなになるんだ」
助手「ぜんぜん見えない」
博士「試しに、もっと見える音域を広げてみよう」
助手「うわあ」
博士「どうしたの」
助手「い、息ができません」

間違い酒場

バーテンダー「いらっしゃいませ」
「2人なんですけど、いい?」
バーテンダー「カウンターにどうぞ」
「なんだか、見慣れないカクテルが多いね」
「私、このスイングDDTっていうの」
「僕はアーガマ・プラトゥーンを」
・・・
「ねぇ、なんだかカクテル、硬い粒が混じってない?」
「あれ、君のも?」
「ねぇ、ちょっといいですか」
・・・
バーテンダー「当店ではオーナーの意向により、全てのカクテル with 小石となっております」
「な、なんですか。意向ってのは・・・」
バーテンダー「口にしたものの中に硬い粒があった場合、それを探り取り除こうとする舌の動きがたまらなく魅力的だということでして。そういった点では意向というより嗜好といったほうが当たっていまして。はは」
「・・・でも、その嗜好には賛同しない客もいるんじゃないですか」
バーテンダー「そうですね。でもみなさん、ちゃんと消毒していることを聞くと、納得されますよ」
「・・・うーんそういう問題じゃない気がしますけど。もう帰ります。会計を」
バーテンダー「お二人合わせて、4700円、102です」
「え、なんですか。102って」
バーテンダー「お二人の体重の合計となっております。カウンター席が体重計を兼ねております」
「そんなサービス、いらないよ・・・」
「今日は女性のお客様ということを考慮しまして、単位の方は伏せさせていただいております」
「聞いてないよ・・・」

ドリア三味、ごちそうさま。

ドリアはあつあつなので、食べるのに時間がかかる。

食べている途中で満腹感が得られる。

食べ過ぎることがない。

ヘルシー。
以上の命題が、真か偽か。
判定するため、150人のモニターを用意し、あつあつのドリアを3日間、提供しました。
「その調査で言えることは?」
あつあつなのに、がんばって食べる人が多いことがわかりました。
「ドリアが冷えてたら、どうなったんだろう?」
既に実験しています。150人のモニターを用意し、冷え冷えのドリアを3日間、提供しました。
「その調査で言えることは?」
食の進まない人が多いことがわかりました。
「・・・うん。冷凍食品のドリアに、別の可能性が示唆されたな。」

時間感覚

みなさんもご存知のように、エルフは長生きです。
どのくらい長生きかというと、500歳くらいまで生きる、ということでいいんじゃないでしょうか。
人間と比較すると、だいたい5倍です。
「それはすごい。さぞかし、有意義な時間を過ごしているのでしょうね。」
軽率な発言ですね、臼井さん。
実は、そんなことありません。
私たちと彼らの生い立ちを見比べてみましょう。
まず、この世に誕生したときです。
人間「バーブー」
エルフ「バーーーーーブーーーーー」
5倍です。
彼らが発したいのは同じ「バーブー」ですが、エルフは「ーーーーーーーー」分、かかってしまうのです。
次に、小学校です。
人間:九九
エルフ:四五四五
各5倍です。
覚えることよりも、1×1から言っていくことや、書き取りが大変です。
エルフ達は小学30年生までの時間のうち、5%を四五四五書き取りに費やすのです。
中学校を見てみましょう。
人間:障害物競走
エルフ:障害物競走
一見同じですが、エルフの方は、5倍危険になっています。
網くぐり・・・電流が流れています。
平均台・・・設置高度と距離が5倍です。
パン食い・・・20%の割合で釣り針になっており、50%の割合で、疑似餌です。
跳び箱・・・中に人がひそんでいます。
ハードル・・・これだけは横に5倍伸びているのみとなっています。
白い粉から飴探し・・・白い粉が毒になっています。
成人してからはどうでしょう。
人間:成人式
エルフ:市長から「これからもお元気で」という手紙が来る
我々の感覚だと、5倍長生きなんだから、成人のときは20×5=100歳がエルフにとっての成人では、と思われます。
しかし、彼らの世界でも100歳からは、人間のそれと同等の扱いとなってしまうのです。
そして、そこから寿命である500歳までは、世間話に費やす時間が5倍だったり、袋から出たネギの長さが5倍だったり、モチも5倍伸びたり、5倍疲れやすくなったり、5倍長い距離、渋滞になったりしてしまいます。
どうですか、白井さん。
ああ、臼井さんでしたね。
有意義じゃない、とは言えないですが、我々がエルフに対して有意義ですね、とは言えなさそうですよね。

空き巣たち2

昨日からのつづきです。
【あらすじ】
老舗のバー「ほっかむり」。
全国で活躍する「空き巣」達が集まり、その武勇伝を披露するテーブルでは「物件を物色中、こんなのが干してある家があった」というお題で盛り上がりを見せていた。
========
テル「ちょっと趣向が変わりますけど、例えば警察手帳が干してあったら、どう思います?。」
タケちゃん「空き巣に対して、意識持ちすぎじゃね?、って思うよ。」
テル「確かに、ちょっとダイレクトすぎますよね。威嚇しすぎ。」
ミヤマ「それが、そういう意図でないとしたら、「あー、それ洗っちゃったか?」って思うな。」
ゴンゾー「そして、「さらに干しちゃったか?」って思う。」
テル「エロ雑誌が干してあったら?。」
ミチ「拾ったか?、って思う。」
タケちゃん「干すときに開いているページが、ポイントだったんだな?、って思う。」
ミチ「でも、エロ系だったらもっと、干すとおもろいもんあるだろう?。」
一同「・・・」
テル「小学生のテスト用紙だったら?。」
ミヤマ「せっかく捨てたのに、拾われたんだなー、って思う。」
ゴンゾー「捨てる場所を、もっと精査すべきだったんだな。」
テル「宝くじだったら?。」
テル「こりゃ、ぜったいイイモノだ、ってなりますよね。」
ミヤマ「いや、結構考えさせられるぞ。これ。」
ゴンゾー「期待させておいて、ブーでしたってのは、ある話だ。」
ミヤマ「ブーだったら、これは空き巣に対する宣戦布告になりますね。」
ゴンゾー「そしたらうちら、速やかに降伏だな。」
テル「糸のついた、あやつり人形だったら?。」
ミヤマ「どうやって洗ったのかなー、って思う。」
タケちゃん「洗ったあと、からまった糸をほどく使用者のことを思う。」
ミチ「洗濯機の中を、顔だけ出してぐるぐる回ってるのが、いいと思う。」



ゴンゾー「今日はこのくらいで終わりか。」
ミヤマ「今日は制限がきつかったですねぇ。」
テル「でも、何で今日は、こんなにハードル高くしているんですか?。」
ゴンゾー「・・・今日でこの会をやめようと思っている。」
ミヤマ「え、何でです?。」
ゴンゾー「ここにいる全員、空き巣に入ったこと、ないだろう?・・・」
一同「・・・」

空き巣たち

老舗のバー「ほっかむり」。
ここには、全国で活躍する「空き巣」達が集まり、その武勇伝を披露するテーブルがある・・・。
ゴンゾー「じゃあ、今日は「マジかよ!!。こんなのが干してあったイシモチ(※1)を見た」だ。」
テル「俺は「スーパーマンの衣装」が干してあったところに進入したぜ。」
ミヤマ「そういうのは、あんまし求めてないんだよね、この席。」
テル「・・・」
ゴンゾー「もっといいのは、ないかね。」
ミチ「イカの一夜干し、とかは?」
タケちゃん「そういうのも、もう何かで、あるからなぁ・・・。」
ゴンゾー「男性用下着とか、デストロイヤーのマスクとか、勝負下着とか、アニメのコスプレとか、しいたけとか、そういうのはいいんで。」
一同「・・・高いな・・・。」
ゴンゾー「ラインとしては、ティッシュ、ティーパックあたりがぎりぎりラインだな。」
ミチ「じゃあ、ティッシュ、ティーパックはもう使えないんですね。」
一同「・・・」
ミヤマ「こないだ、切手干してるところがありましたよ。」
ゴンゾー「ほう、切手。」
ミヤマ「届いたはがきから剥がしたのでしょう。コレクションなのか、まだ使えそうだったのか・・・。」
ゴンゾー「なかなか深いな。」
タケちゃん「深いですね。で、そこには?。」
ミヤマ「入ってない。忘れた?。俺は「干し物調査会社」だから。」
テル「切手と似てるんですけど、きっぷが干してある家がありました。」
ゴンゾー「そこから、何が考えられそうかな。」
テル「うーん。」
ミヤマ「普通、忘れ去られたきっぷは、次にその衣類を身につけたとき、くしゃくしゃに固まった状態で発見されるのが運命なんですがね。」
テル「そうだとすると、その家の人は几帳面というか、神経質ですね。」
ミヤマ「衣類を洗って、干すタイミングで見つけたんだ。普通は取り出して終わり、のところをわざわざ干す。」
ゴンゾー「何かの証拠にしようとしている可能性があるな。」
ミヤマ「・・・男、いますね。」
ゴンゾー「テル、そこにはポイ(※2)したか?。」
テル「いえ。」
ゴンゾー「・・・正解、だな。」
テル「ところで、ちょっと趣向が変わりますけど・・・」
次回へ。
※1イシモチ
ターゲットとした部屋のこと。
空き巣たちの隠語で、うそ。
※2ポイ
進入するという意味の、隠語。
うそ。