パッチ

「このほど、度重なる政府の不祥事を鑑み、明日午前7:00より修正パッチが適応されることになりました」
そんな緊急ニュースが流れた翌日。
いつもはうるさい電車の音も聞こえず、静かな朝だ。

何かが起こりそうだよストーリー エチュード

ヒロユキが12歳の頃、そのいとこのヨシミは、理科の実験名目でペットボトルのジュースを買ってもらっていたっけ。
サトシはそう思った。
ヨシミの同級生のカズヒロはレギンスのことをテニス選手のことだって思っていたし、カズヒロと苗字が同じなタカヤは、自分の接触にタッチパネルが反応しないことを虫の知らせだと覚悟を決めていた。
嫌いな同級生の下駄箱に、自分にしか分からないしるしをつけることが趣味だったトモミはタカヤのことを知らなかったが、レトルトカレーを温めるんだったら同時にゆでたまごも作りたいと思っていたし、その弟のツバサは心身ともに身軽になった。
そんなツバサと同じ雰囲気のハムドが、「しゃかりきコロンブス」のアナグラムに夢中だった頃、学校の一緒だったシンジは体育教師に怒られる寸前で談笑をやめる事が、ナミは鶏肉のすっぱ煮が得意だった。
ナミのすっぱ煮を怪訝そうに食べていたハルゾウは「こふきいもは料理のレパートリーに含めるな」と言っていたが、その将棋友達のゲンジは、基本的に無傷だった。
ゲンジの義妹のオサヨは気の強い女性で、タイプ音で相手を威圧するため、キーを全てセラミック製にしていたけど、それを愛おしく見ていたヘイハチは未来警察ロボ「デカバーン」だった。
この二人はタキシード仮面さながら表と裏の顔を持つキーパーソンになっちゃって。
オサヨなんてずっとタキシード仮面側で貫こうとしていたけど、その結果、デカバーンとタキシード仮面で、表の顔がなくなっちゃってた。
その時代、ショウジは野球の審判をしていて、一度くらいはアウトのときにレッドカードも出してみたいと思っていたが、ピッチャーをやってたトモキは、ストライクゾーンが18?35だった。
そんな僕らが、芸能プロモーターのひとに、声をかけられました。
よろしくお願いします。

何かが起こりそうだよストーリー
何かが起こりそうだよストーリー リターンズ
何かが起こりそうだよストーリー プレリュード
何かが起こりそうだよストーリー プロローグ
何かが起こりそうだよストーリー ノクターン

綿毛考察 2

図書館で綿毛について調べていたところ、頻繁に「はふり」「綿毛のはふり」という言葉の出るページがあった。
「はふり」というのは聞きなれない言葉だが、確か神事に携わる職のことだったはず。
綿毛とそれには、どんな関係があるのだろう。
興味を抱いた俺は、さっそくそのページが指し示す場所に向かってみることした。
兵庫県太子町。
紹介されていた住所は住宅街の一角だった。
大した連絡もせずに来訪した俺を出迎えてくれたのは、本にも載っていたじいさんだった。
俺:
「はふり」というのご存知ですか?。
じ:
「は、なんだそれは?」
俺:
ええと、「綿毛のはふり」とかいうやつなんですけど。
ほら、本にも載ってる。
コピーを見て、じいさんはひざを打った。
じ:
ああ「綿毛のはふり」ですか。
知ってますよ。
毎年たんぽぽの綿毛が見られると、行われるんです。
俺:
どういったものなんですか?。
じ:
まあ、なんですな。
人生の教訓を学ぶための行事とでもいいますか。
何か神事などとは違う気もしてきたが、とりあえずお願いしてみた。
俺:
それって今、見せてもらえます。
じ:
いいっすよ。
じいさんが綿毛を捜しに行っている間、綿毛が庭にたくさん落ちているのを見つけた。
ここで「綿毛のはふり」をやっているのだろうか。
じ:
戻りました。
俺:
ではさっそくお願いします。
と、突然じいさいがたんぽぽの綿毛を口の中に入れた。
あの、丸い形状を壊さないようにか、大口を開けて。
あっけに取られている俺の前で、爺さんはボールか何かをほおばったような顔で、たんぽぽの茎だけを出していた。
して、これからどうなるのかと見ている俺に向かって、大声で叫んだ。
「ふぃふぃほ!!」
たくさんの綿毛がじいさんの口から放たれ、いくつか俺の顔に当たった。
明らかに口の中の部品を総動員して「あとかたづけ」をし出したじいさんに「え、これでおわりですか?」。
じ:
そう。これが「はふり」じゃよ。
突然「じゃよ」語を使い出したことが気になりつつも、その意味を聞いてみた。
あらましはこうだ。
飛んでいく綿毛もあるが、唾液に犯され飛んでいけない綿毛もある。
そんななかでも、お前はがんばっていけ。
そんなことを表現しているそうだ。
さっきの「ふぃふぃほ!!」は「生きろ!!」だったらしい。
帰る時、じいさんは本をくれた。
自費出版だったらしい。
俺は自費出版の本でも図書館にあるんだなと感心しながら、東京に戻った。
=====
今年もたんぽぽの季節になった。
もうそろそろやるのだろうか、「綿毛のはふり」。
今回で8回目になるその行事のために、じいさんは練習を欠かさないはずだ。

辞世

おいおいなんかかっこいいんじゃね、的な死に際セリフを考えてみた。
=====
「ネゴシエーターだったんなら、撃たれないようにしていたさ」
享年42歳
「明日はあの柵の向こうだ。俺は行かない」
享年28歳
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダ」
享年35歳
「葬儀はシンプルに。参列者には餅を振舞うように」
享年68歳
「aiko内の歌の区別が、つかなくなったことだしね」
享年26歳
「このことは問題じゃない。だいじょうぶだ」
享年31歳

悲しい比喩2

「チホ、こないだ一高の制服来た男と歩いてたよ」
そいつは俺がチホと付き合っていることを知ってか知らずか、こともなげにそう言った。
チホと付き合い始めてもう2年になる。
ひやかされるのがいやだったのか。
何か罪悪感を感じたのだろうか。
俺たちは誰にもばれないように会っていた。
でも、待ち合わせの時間すら幸せだったし、部屋で雑談するのも楽しかった。
しかし、近頃急に連絡がつかないようになった。
何か忙しいそぶりをして、俺と会おうとしてくれなかったように感じた。
廊下で出会っても、前と同じような知らんふりが、今ではつらくなった。
それがもう2週間になる。
チホが他校のやつと?。
不安が、ガンダムSEEDのMSVのように、増大していった。
前回の。
悲しい比喩

一通あいさつ

ジョギングコースから少し外れた場所が登山道の入り口で。
まぁ登山とは言っても10分くらいで頂上付近に到達できる、そういった山でして。
ある時期の夕暮れですと、その山の頂上から町を見下ろしたとき、山の影が町を覆い、それは壮大な風景なのです。
その日、私は田んぼを散歩するついでに、山へ向かいました。
そこは涼しいですし、何より久しぶりでした。
登山道の入り口に着きますと、もうそこからひんやりとした空気が流れていることに気づきました。
自転車から降り、舗装されていない山道を歩いていきます。
そこは先ほども言いましたように、夏にも関わらず涼しく、快適です。
ここの空気を吸ったあとの吐息が暖かいことに、ちゃんと空気が自分の中のものと置換されたことがうれしくもあり、こことは相容れないものを排出する自分が残念だ、とか、そんなことを考えて歩いていました。
ふと、目の前を何かが上から下に通り過ぎ、足元に落ちました。
なんだろうと足元を見ると、どんぐりです。
青い、まだ未熟などんぐりが落ちています。
それを手にとって良く見てみると、奇妙な点がありました。
どうにも、ぽろりと落ちたようには見えなかったのです。
どんぐりは、それが着いていた小枝とともに落ちており、しかもその小枝は、何か鋭利なもので切られたかのような断面をしていたのです。
普通なら鳥の仕業、その植物の特徴か何かと思うのでしょうけれども、そのときは散歩中ですし「もっけ」も読んでいました。
山の精のようなものが、あいさつ代わりにどんぐりをよこしたのだと思うようにしたのです。
道行く人にあいさつをするなんて、律儀なものです。
さて、周りを良く見てみると、同じようなどんぐりが枝とともに落ちていました。
全ての人にあいさつをしているのかもしれません。
でも、これではどんぐりがなくなってしまうでしょうに。
それに、こんなあいさつじゃ、気づかない人の方が多そうですし。
そんなことを考えながら、手にしていたどんぐりを放って歩き出した私はそのあとすぐに、案外この考えがいいセン行っているかも、と苦笑しながら思ってしまいました。
何故かといいますと、その先の道に、今度は、青く未熟な栗がたくさん落ちていたのですから。

あるなし

あるなしクイズ!!
「家」はあるけど、「家族」はない。
「時間」はあるけど、「お金」はない。
「鍵」はあるけど、「ドア」がない。
これなーんだ!?。
=====
「これなーんだ、か・・・」
10年にわたって続いた内戦のせいでここ、タフツ・シティーの治安はひどいものになった。
それでも長年住んだ場所だからと、離れられない俺。
でも、帰宅してみてこれはどうしたことか。
家族を安全な場所に住まわせていたのは正解だった。
どうも家に賊が入ったらしい。
でもこの状況じゃあ。
あの子が問いかけを思い出したのは、ちょっとつらい。

反芻

日々のありふれた生活において、ちょっとしたイベントとしてよく知られていることに「歯にはさまっていた食材が口内に躍り出る」がある。
「小さい反芻」と別名を持つこの現象。
みなさんはどんな食材が出てきたとき、うれしいだろうか。
僕は、紅しょうがが出てきたときが一番うれしい。
一方、きゅうりが出てきたときはちょっといやだ。
このときのきゅうりは、やたらと青臭いのだ。
でも、いやだって言ったら「髪の毛」がある。
口から髪の毛をつまんで出すときの感触は、なかなか気持ち悪いもの。
あれが一番やだな。
あ、今回は「歯にはさまっていた食材が口内に躍り出る」ことについてだった。
髪の毛、そもそも歯にはさまるものでもないな。
それに、常時人を食ってるわけではないし。

除湿機

ひまだし、クイズでもする?。
ここにある除湿機。
電源の横に、こう書いてあるんだ。
除湿
満水
霜取
電源を入れたときは除湿。
水が満杯になったときは満水。
霜取モードでの運転は霜取。
それぞれのときに、そこにランプがつく仕組みなんだ。
で、問題。
この並びでもう一つ、書いてあるものがあるんだけど、それは何かな?。
はい、みっちゃん。
「関取」?
除湿
満水
霜取
関取
・・・いやだね。
あんまし僕はそういうの、嫌いだね。
「家庭教師のトライ」のCMよりは、マシだけどね。
はい、みっちゃん。
「分解」?
除湿
満水
霜取
分解
これは考えさせられるね。
空気中の悪いやつを分解、無害化してくれるのかな。
それとも除湿機自体がいくつかの部品に分解、片づけしやすくなるのかな。
僕としては、押しても特に何も起きないか、除湿機が分解しようと何か音を立てて、そのまま何も起きない、っていうのがいいな。
はい、みっちゃん。
「緊急」?
除湿
満水
霜取
緊急
これはいいね。
何を緊急で除湿することがあるのか、っていう感じだね。
じゃあこれを選ばなかったら、全力出してないんかい、っていう感じだね。
はい、みっちゃん。
「脱水」?
除湿
満水
霜取
脱水
これは怖いね。
さっきまで除湿を緊急でとか言っていたけど、これは容赦しない感があるね。
リミッター解除しているね。
はい、みっちゃん。
「純潔」?
除湿
満水
霜取
純潔
みっちゃん。
ひまだけど、クイズはもうやめようか。

悲しい比喩

「もうだめかも知れない」
ずっと父親と連絡が取れていない。
山で行方知れずになってから3日が過ぎた。
激しい雨。
思うように捜索もさせてくれない。
そのとき。
私の携帯電話から聞きなれたメロディが流れた。
この音楽は父親の携帯からの着信のはずだ。
電話に出ると、雨音にかき消されないくらいの、父親の大きな声が聞こえた。
「心配かけてすまない。今見慣れた道に出た」
私は思わず叫んでいた。
「そのさき!!。そのさきを行けば、捜索隊の人と合流できるはずだよ」
電話口から父親以外の声が聞こえたとき。
さっきまでの不安が、削がれていくケバブの肉塊のように、小さくなっていった。