基本、とぎ汁

最近、妻の身につけるアクセサリーが増えてきたと思う。
出張が多い私は、何か案じるところが無かったわけではない。
何気なく問い詰めてみると、彼女は少し笑いながらクローゼットをあさり始めた。
大事そうに持ってきたのは小さなアタッシュケースだった。
何でもこの前、スズメが怪我をしているのを助けてあげたところ、そのスズメから恩返しをされたのだそうだ。
いい話だが、腑に落ちないところが。
それらは全て、イミテーションであるらしい。
しかし、妻はスズメの気持ちがうれしいのだと言う。
私は夫であることをいいことに、スズメのところへ行くことにした。
もちろん、したきりすずめの話を知っていたからである。
山というよりは大きな丘と言った方がよさそうな場所で、私は大声で名乗った。
すると、スズメが一羽、舞い降りた。斥候役のようだ。
住民票を見せると納得したのか、少し飛んでは地面に降り立ち、こちらを見るしぐさをし出した。道標だ。
スズメのお宿に着いた私は最上級の接待を受けた。少なくともそう感じた。実際、最高のもてなしだったし、なによりも帰りのお土産のことが私をうれしがらせたのだ。
そして帰り、既にスズメたちはアタッシュケースを用意してくれていた。ちゃんと2つ。
もちろん私は見慣れないほうのアタッシュケースを選んだ。
大きいとはいえ、それはスズメから見たこと。
人間にとっては普通のサイズだ。
中央線、青梅線と乗り継ぎ、家に帰る。
11時半。妻はもう寝ているはずだ。
居間の明かりをつけた私は、とりあえずお茶漬けを食べた。こんな状態でも何か食べようとする自分が好きだ。私には明日がある。
自分の部屋に戻り、「つづら」を開けようと思った。
もちろん、金銀財宝を望んでいる。けど、勘違いしないでほしい。
こちらがはずれで、お化けが入っていたとしても、ある意味興味深い経験となる。
私にとってはずれ無しのくじなのである。
暗証番号は「7309」。
スズメは「スズメで7309なんて、すぐばれちゃいますよね!!。」と言っていたが、人間である私には何がばれちゃうのか、皆目見当も付かない。
さておき、とりあえず。
ダイヤルを回した。
そしてそれが、ゆっくりと開いた。
Yシャツ。
白い肌着。
ズボン下。
紺色の靴下はビニール袋に入れられている。
旅行用の歯ブラシセット。
歯ブラシセットはブリーフと共に、バスタオルに包まれていた。
明日は出張。
サンキュー、スズメたち。

神々の黄昏

アンナ「やめてッ!!。どうしてあなた達が争わなくちゃならないの!?。」
ケンジ「アンナ!!。どうしてここに!?。来ちゃだめだ!!。」
トウヤ「いいじゃねえか、ケンジ。お前が負ける瞬間を見せてやれるんだからなぁ?。」
ケンジ「そういつまでも粋がっていられるかな?。」
アンナ「二人は・・・、二人は兄弟なのよ!!。」
ケンジ「なッ、何!?。」
トウヤ「・・・・・・。」
アンナ「だから止めて!!。」
トウヤ「・・・知ってるさ。」
アンナ・ケンジ「!!」
トウヤ「だからこそ戦わなくちゃいけないんだ・・・。俺はなぁ、一度死んだとき、あの世で魔王とやらから聴いたんだ・・・。ケンジと俺は兄弟だということ。そして、お互いに半人前だということを。お前を倒せば、俺は一人前になれる・・・。なれるんだよッ!!。」
ケンジ「させるか!!」
トウヤ「そこだ!!」
魔王「うわー。あいつ信じちゃってるよ。」
ケンジ「クッ・・・。」
トウヤ「とどめだ!!、ギガファイヤーアタック!!!。」
魔王「うそでしたって、言いづれー。」
アンナ「させないわ。オメガアイスバーン!!!。」
トウヤ「うおっ!!。邪魔するなーーーッ!!」
魔王「それにしても信じないだろー、ふつう。」
アンナ「キャーーーーー!!。」
魔王神「うん。」
ケンジ「アンナーーーーーー!!!。」
大魔王「そうだよね。」

かがみ

「せんせー!!。しつもーん!!」
・・・なんだい?。
「川で泳いでてワニに襲われたら、ジグザグに泳ぐと少しは助かる率が上がるってほんと?。」
・・・そうだね。上がるって書いてある本があるね。けど、そんなとこで泳いじゃだめだよね?。
「せんせーがお手洗いのとき、便器にネクタイがいっつも付いてるってほんと?。」
・・・そうだね。付いてるね。けど、手はちゃんと洗ってるよ?。
「せんせーの家にはセーラームーンの衣装が全員分あるってほんと?。」
・・・そうだね。あるね。基本好きだね、制服。けど、きっちり分けて考えてるよ?。
「せんせーが奥さんとケンカした次の日、お弁当箱にミールワームが入ってたってほんと?。」
・・・そうだね。入ってたね。元気だったね。けど、野鳥がくわえていってくれたよ?。
「じゃあ、せんせーの大切なものってなに?。」
生徒だよ。

的確な語句

店員「いらっしゃいませ。何名さまですか?。」
客「一人です。」
店員「喫煙されますか?。」
客「いや。」
店員「では、ご案内いたします。」
私が案内されたのは、店の角、窓際のテーブルだった。
店員「ご注文がお決まりでしたらお呼び下さい。」
・・・
店員「お決まりでしょうか?。」
?「この、草原のそよ風ぞうすいをひとつ。」
店員「はい?。」
?「いやだから、この草原のそよ風ぞうすいを・・・。」
店員「???。」
?「何度も言わせんなよ!!。草原のそよ風ぞうすいだよ!!。ハズいよ!!。なんだよそよ風って!!。さわやか過ぎるだろ、ぞうすいにしては!!。」
店員はかしこまって行ってしまった。
私も少し、大人げなかったと反省した。
数分後出されたのはごく普通のぞうすいだった。
明らかにそよ風でない熱気に包まれながら、私はぞうすいを口にやった。
「お待たせしました。こちらぞうすいになります。」という言葉が、気にかかった。
テーブルの上には店員が置いていった伝票。そこには「ぞうすい」と走り書きが。
そよ風いらなくていいやん。

何かが起こりそうだよストーリー

ヒロユキが12歳の頃、そのいとこのヨシミは、うぶ毛を剃っていたっけ。
サトシはそう思った。
ヨシミの同級生のカズヒロは自分のことをKAZUHIROと名乗っていたし、カズヒロと苗字が同じなタカヤは、蟻の巣に棒を突っ込んでいた。
他人のレシートを集めるのが趣味だったトモミはタカヤのことを知らなかったが、「某」をつければ全て許されると考えていたし、その弟のツバサはこの間、妹になった。
そんなツバサと病院が一緒だったハムドがシャア専用Tシャツを臆することなく着ていた頃、学校の一緒だったシンジは暗黒舞踏が、ナミはりんごの皮むきが得意だった。
ナミがむいたりんごを栽培していたハルゾウは携帯が鳴る瞬間にそれを感知していたが、その将棋友達のゲンジは、基本的に無傷だった。
ゲンジの前世のオサヨは気の強い女性で、大和芋を棍棒のように振り回していたけど、それを愛おしく見ていたヘイハチは独身だった。
この二人は戦国自衛隊さながら現代にワープしちゃって。
オサヨなんてゲンジと出会っちゃったけど、ぎりぎりセーフだった。
その時代、ショウジは野球の審判をしていてボールを見ると追いかけたくなったらしいが、ピッチャーをやってたトモキは、一塁のベースが球場爆破を抑えるスイッチであることを知らないでカーブとかを投げていた。
そんな僕らが、今度地球を守ることになりました。
よろしくお願いします。

「こころ」、ここに有らず

私は一億何千万といる日本人のうちで、ただ貴方だけに、私の過去を物語りたいのです。
私は昔、病床に臥しておりました。
そのころ、ある人と知り合ったのです。
私はその友達の名をここにKと呼んで置きます。
Kは医者として優れ、有望されておりましたが、自身が病弱で、過酷な医療現場ではつらい日々をおくっておりました。
そんなある日、Kは日々のつらさを切々と私に話すのです。
彼の重々しい口から、日々のつらさを打ち明けられた時の私を想像して見て下さい。
とりあえず「すごく鍛えよ」と言いました。
Kが消え、長い月日がたったある日、私の病室に訪ねるものがありました。
そのまま金網デスマッチを行えるような四肢。
「なにかの影響を受けました」という感じのリストバンド。
全体的に劇画調。
そして、明らかに指で人を殺せるような顔。
生まれ変わったKでした。
そうです。
彼はスーパードクターと呼ばれる存在になっていたのです。
とりあえず私はバッチリ治してもらい、お嬢さんと結婚をいたしました。
Kはウェディングケーキの影で、うんうんうなずいていました。

蠍の火は二人を照らす

新説「銀河鉄道の夜」
-何でか知らないけど、ジョバンニとカムパネルラはブルートレインの寝台車に乗っていました。
ジョ「あ・・・。カムパネルラ・・・。」
カム「あーもう!!。ジョバンニじゃん!!」
ジョ「ぼくらはどうしたんだろうか・・・。」
カム「気分がフォルテッシモなんだよ!!。白井!!。」
-何でか知らないけど、カムパネルラはホカホカでした。戸惑いながらもジョバンニは最低限の受け答えをするのでした。
ジョ「ぼく、白井じゃないよ・・・。」
カム「あー。高いとこ行きてー。道場六三郎の和食に対する志くらい、高いとこ。」
ジョ「??。」
カム「うっそあれ、アモーレの鐘じゃん!?。鳴らしてー。」
-ブルートレインが美ヶ原高原美術館近くを通るはずありませんでした。ジョバンニは悲しくなりましたが、どうにか話題を逸らそうとしました。
ジョ「さそりの話、聞かせてくれない?。」
カム「斎藤陽子のこと?」
ジョ「カムパネルラーーーーーー!!。」
夜のアモーレの鐘が夜の12時をお知らせしそうなので、これにて。