不可視の森その3

前のつづきなので、そちらから。
早朝、研究所の一室を改造した被験者室から出てきた私を、待っていたとばかりに所長が笑顔で迎えた。
「結果が出たよ。君は帰っていいよ。」
どういうことですか?。
「君は天涯孤独じゃない。今は鎖が一本、ジャラジャラいっているよ。」
・・・そうですか・・・。
・・・2つ、聞いていいですか?
実験というのは?。
「昨日の朝刊、ネットを使って、君がやっている慈善事業を特集した。それだけだ。」
そうですか・・・。
で、僕の鎖の先は?。
「それは個人的な話になるだろう?。わからないよ。」
「で、だ。この調査の御礼として、これを受け取ってほしい。」
そう言われて受け取ったのは小さな箱だった。
振ると、かたかた音がする。
これは?。
「今、君が一番ほしいだろうものだ。」
・・・。
「大丈夫、副作用はない。たぶん。」
研究所を去るとき、所長が駐車場まで見送りに来てくれた。
どうもありがとう。
「いや、こちらこそ。いい研究ができた。」
さて、僕はこれから、そっと鎖をたどらなくては。
「所長。所長が今朝出された調査報告書と、彼の「鎖」の数が合いませんけど?・・・。」
?「わかってる。」

不可視の森その2

前のつづきなので、そちらから。
男「???」
?「空、飛べる?」
男「何言っているんですか。そんなことできないでしょ。」
?「隠してない?」
男「おちょくってるんですか?。」
?「・・・今から3ヶ月ほど前に当研究所である薬が開発されたのだ。」
?「何かとの関係を「見る」ことのできる薬だ。」
男「???」
?「この薬を服用すると、例えば赤ん坊とそのお母さんが「鎖」のようなものでつながっているのが確認できるのだ。」
男「まさか!!。」
?「嘘ではない。血のつながり、赤い糸、絆、カレシの束縛。こういった象徴的な関係が可視化される薬なのだ。」
男「動物などでは?」
?「残念ながら人間でのみ、可視化できている。」
男「すごいですね。・・・それじゃ、僕が天涯孤独かどうかも、聞かなくても分かるじゃないですか。」
?「そう。実は、既に私は薬を服用している。そして、君には一本の鎖も見えないのだ。」
男「そうですか・・・。で、私がここにいる理由は?。」
?「その、見える「鎖」というものを特殊な機材で検査したら、ある程度の物性を持つらしいことがわかったのだ。」
男「と、いうと?。」
?「本物の鎖の性質を少なからず持つということだ。この薬を飲んでいると、いかに人間というものが多くのリレーションを持つ生物か、というのを実感させてくれる。」
?「もし、この鎖がひとつでもない場合、その人はどう違うのかを調べたいんだ。人間関係という呪縛。言いすぎかな?。それがないと、どうなるのか・・・。最初の質問は少し跳躍しすぎかもしれないがね。」
男「・・・で、調べるというと?。」
?「・・・。もう、実験は9割がた終わったよ。明日には結果が出る。」
ガキの使いとか見たいんで、明日というか、次に続く。

不可視の森その1

「所長、天涯孤独な人を発見しました。」
?「ここに。」
男「何か、御用ですか?。」
?「君は天涯孤独だそうだが、本当かね?。」
男「まぁ、そうみたいです。家族は死にましたし、親類と呼べるような者は一人もいません。もちろん、友人もありません。」
?「まずそのような立場の人間はいないと思うのだが?。血のつながりなどなくても、何かしら人間関係はあるだろう?。」
男「いえ、ないんですよ。お金は遺産がありますし、家にも誰もいない。買い物で人と接触があるといっても、知らない人ばかりですから。」
?「例えば、私との関係などはどうかね?。」
男「いやー。ここを出ちゃえば、もう一生会わないだろうことは想像に難くないですよ。」
?「本当にかね?。今、友達になって、と頼んでも?。」
男「お断りします。友達なんて、面倒くさいですし。」
?「うん。天涯孤独なんて、推理小説にしか存在しないと思っていたが。本当のようだ。」
?「では、本題。」
?「君、空は飛べるかね?。」
年末なので明日に続く。

線路沿いドリフター

新宿のハンズに用があって、新宿駅で降りたはずなのに。
今、なぜか上海。
じゃなくて代々木駅だ。
知らない間に一駅分歩いてしまったようだ。
たぶん、その日は大陸棚に変化あった。
まぁ、いい。
ハンズは新宿と代々木の間くらいにあるから。
線路沿いを漂流していると、喫茶店が。
・・・なぜ・・・。
なぜカプチーノにシナモンを入れるんだ・・・。
シナモンが苦手な僕は、その部分だけを先に食べ、むせることに。
店内の人は、
・「あいつコーヒーでむせてるよ」
・「あいつ、コーヒーで酔うんじゃない?」
・何も気にしていない
のどれかだっただろう。
ハンズが工事中で、いろんなことが分からなくなったのでゲーセンに立ちよる。
・・・なぜ・・・。
なぜキミのベガ(格闘ゲームのキャラクタ。帝都大戦の趣)は、画面端でずっとしゃがんでいるんだ・・・。
そんなにこちらのジャンプを期待されたら・・・。
期待に答えちゃうじゃないか!!。
完敗だったのでルノアールのケーキを猛食いし、心を鎮めた。

志村のこと、ずっと忘れない!!

ぼくはただ、友達とキャッチボールをしていただけなんです。
たまたま、ぼくの投げたボールが少しそれて、歩道の方に飛んでいっただけなんです。
そこにはおばちゃんが歩いていたんですが、ボールには気付いていません。
こんな日常にありそうなシーンなのに、ぼくはその瞬間、迷いました。
今おばちゃんに「あぶない!!」と声をかけると、おそらく彼女は振り向いてしまいます。
そうしてしまうと、顔にボールが命中してしまいます。
でも、声をかけなくても頭に当たってしまいます。
声をかけるべきか、かけないべきか・・・。
ぼくは迷ったんです。
というとき、あなたならどうするだろうか?。
語り部Aさんの場合、「しゃがんで!!」と叫んだが、おばちゃんは振り向いてしまいました。
結果、ボールは顔に命中、全治2日の怪我を負わせてしまいました。
そしてその6ヵ月後に挙式。
今では二児のお父さんです。
誰でも子供の頃、こんな感じの経験があるのではないでしょうか?。
映画とかでもありますね。
「志村、うしろ?!!」状態。
あの時、ぼく達は志村けんに、背後に幽霊がいることを伝えるべきなのでしょうか?。
黙っておいてあげたなら、志村けんはたとえひとときでも幽霊のことを気にせず済むのかもしれないのです。
でも、結局はコント的に幽霊とはちあわせしてしまうわけですから、ぼくとしては何か、志村けんの心に残る言葉をかけてあげるのがいいと思います。
みなさんも今回のようなシーンに出くわしたときは、選択項目として考えてみてください。
それにしてもあの時、ぼく達は何故志村けんを呼び捨てにしていたのでしょうか?。
最善策と謎は暗闇の中。

気功弾頭

最近、「ミッションインポッシブル3」のレンタルが開始されました。
個人的な意見ではありますが、確か「1」は「すごいなぁ。」で、「2」が「鳩がすごいなぁ。」という感じ。
実は、映画公開の時からみようと思っていた映画でした。
なぜかというと、CMか何かで流れた映像で気になったものがあったから。
そのシーンはトムさんがこちらに向かって走ってくるシーン。橋の上です。
なぜ走ってくるかというと、後方の車がミサイルによって爆破されてしまうから。
そこから逃げるために走っているわけです。
しかし、まだ逃げ切れていない距離でミサイルが車に命中。
トムさんは爆風に吹っ飛ばされてしまいます。
ここで、後方で爆発があったにもかかわらず、なぜかトムさんは横に吹っ飛び、そこにある車にしたたか打ち付けられるのです。
なに!?。
後ろで爆発だから、手前に吹き飛ばされそうなのになぁ・・・。
でも、何かよく分からない力が、こういうときには働くのかも!!。
何かが、何かがリアル志向なんだな!!。
と、いうことで借りて見ました。
だいぶ吹っ飛んでました。

しゃかいべんきょう

やぁ、おはよう。今日は、みんなのお父さんがどんなところで働いているかを見てみよう。
みんなのうちのお父さんは、いつも朝早くに出かけるよね。
どこに向かっているのかな?。
そう、会社だね。
お父さんたちは家族のために働いているんだ。
みんな、通勤ラッシュを知っているかい?。
朝なんかは、電車がすごく込むから大変なんだ。
踏切の近くで、朝早くの電車を見てごらん。
これからがんばって働く、たくさんのお父さんたちが見えるから
そしてそれを狙う巨大カラスがね!!。
そんなことはないよね?。
ともかく、お父さんたちはよく働くんだ。
都心の駅なんかは大混雑だ。
ニュースなんかで流れるよね?。
例えば渋谷駅の大きな十字路なんて、すごい人が交差しているよね?。
あぁ、ごめん。
渋谷は平日でも祝日でも込んでいたね。
平日はともかく、お休みの日はお父さんにだけでなく、お兄さん、お姉さんやお友達が多いんだ
そしてそれを狙う巨大シロサギもね!!。
怖がらせてしまったね。
じゃあ、今日はここまで。

作用と反作用

「わが社「死に方応援団」では、あらゆるニーズにお答えすることをモットーとしています。」
珍しい会社があるものだと、ビルの前で看板を見ていたら声をかけられた。
「人間いつ死ぬか分かりませんから。弊社でご契約いただければ、かなり突発的な最後でも、対応できますよ。」
ちょっと、イメージが湧きませんね・・・。
「例えば、お亡くなりになる前に親戚全員に看取られたい、といった契約をしていただければ、そのようにするということです。」
へぇ。
変な話、契約される方ってのはけっこういるんですか?。
「それはもう。」
プライバシー的なこともあるでしょうが、何か他にも例を挙げていただかないと、分かりませんね・・・。
「散骨を希望される方もいますし、最後は自宅で、という方もいます。そして、あらゆる手段を講じてそのようにいたします。」
他には?。
「そうですねぇ。最後は歩行者天国で、雨に打たれながら一人死にたいとかいう人もいます。誰かに刺されて、なんじゃこりゃーと叫びながら、という人も複数いますね。」
けっこう死に方を気にする人、多いんですね・・・。
「そうですね。どんな人でも生まれ方が選べない以上、死に方に執着するのはしょうがないでしょう?。」
なるほど。
では、私は「カミナリにうたれて骨が点滅し、アフロになって死にたい」で契約しましょう。
「ありがとうございます。ここにサインを。」
そして29年後の今、ゴルフをしていた私はカミナリにうたれたようだ。
病院に運ばれた私は、意識が消えゆく中、駆けつけた家族が腹を抱えて大笑いするのが少しだけ見えた。
・・・
ふと、ぼんやりした映像が、死んだはずの私の頭に浮かんできた。
どこか道を歩いている。
他の感覚はないのだが、実際に歩いているような感じだ。
しばらく歩いていると、前の方にログハウスのような建物が現れた。
「生まれ方応援団」とある。
・・・
選べてたんだ・・・。

臨戦態勢、まえかけ用意。

僕がよく行く美容室は、自宅から2時間弱。
極めてめんどいのだ。
だが、皆さんもうなずかれると思うのだが、美容室を新規開拓するのはかなり勇気がいることなのである。
もちろんそんなことはないと思うのだが、初めての美容室に入ったら、店員さんに
「今日はどうなさいます?。ちんちくりん?。」
とか言われたらもう立ち直れない。
ということで、僕は2時間かけざるを得ないのである。
しかし、2時間かけて行きつけの店に着いたとしても、全く油断はできない。
30分くらいの間、僕はじっとしていなくてはならないのである。
じっとしているのが苦というわけではない。どういうことか。
髪を切ってくれている人と、切られている人。
この二人の間に、いかなる沈黙が許されるであろうかいや許されるはずがない。
両者ともあたりさわりのない話を選びながら、沈黙を言葉で埋めていかなくてはならないのだ。
いつか書いたが、僕はどうも間が空くのが苦手だ。
店員さんが、いわば「ステーキについてるパセリ」のような話をコンスタントに提供できる方ならばだいぶ楽だ。
逆にそうでない店員さんの場合は、両者とも「もうほんと、ごめん!!」的な感情を秘め続ける30分となるであろう。
今回は前者の店員さんだった。
店員さんは
「リンスとコンディショナーの違い」
「化粧をするしないで、女性のお出かけ準備がどれほど変わるか」
「坊主の人は顔を洗う続きで頭も洗うのか」
という話題を提供し、
僕は
「男からリンスのにおいがしても、ちょっとドキドキする」
「僕の、おしゃれ男性タレント最先端情報はGray」
「男でもすね毛を剃るとけっこうスベスベ」
という話題を提供。
事なきを得た。

ナイスチョイス ネガティブエリア

「うんにょ味のカレー」と、「カレー味のうんにょ」
どっちがいい?。
?「うーん。うんにょ味のうんにょは、存在するのになぁ・・・。」
「空を飛ぶ能力を得たけど、全裸じゃないと飛べない」のと、
「空は飛べないけど、服は着ていられる」
どっちがいい?。
?「うーん。空飛べなくて全裸はできるんだけどなぁ。」
「すごい美人に拳銃突きつけられる」のと、
「すごい体毛の男性が家で裸エプロン」
どっちがいい?。
?「うーん。すごい体毛の男性に拳銃突きつけられるのは、古い映画の中盤あたりなんだけどなぁ・・・。」
「お母さんが泉ピン子」なのと、
「お父さんが角野卓造」
どっちがいい?。
?「うーん。どっちかを選んじゃうと、えなり君が生まれてこないことになっちゃうからなぁ・・・。」