【あらすじ】
台湾旅行。
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展望台もそれほど興味もなく、空港内をうろつくのにも飽きたので飛行機搭乗口に向かう。
パスポートを見せる必要性のある場面に遭遇するたびに、それが期限ぎりぎりである事を先に言ってしまいたい衝動に駆られる。
搭乗口付近も最近できた風で、免税店が等間隔で堂々と並ぶ。
うーん、あまり興味がない。
暇なので台湾での計画でもたてようかと思ったが、手元に情報はなく、誰かに聞き出そうかとすると、いきなり宿泊ホテルの心霊事情が手に入った。
出る事で有名らしいのだ。
本当なのだろうか。
どちらにせよ、実際に身の回りに起こるのは勘弁してほしい。
ともかく、一番長くいる事になるだろう宿泊施設の情報が手に入った。
他にはないだろうか。
どうやら他の人は結構プランを持っているらしく、いわば駅のホームで並んでいる状態。
僕は時刻表を見ている。
いや、時刻表を探している。
誰かがPSPのスパロボをやっている。
最近のスパロボは、ロボがよく動くので見ていて楽しい。
そうだ。
予定はないが、とにかく動きまくる事にしよう。
そうすれば何か面白い事になるかもしれない。
結構必死に探している帽子を見つけられるかも知れない。
もしかしたら、今回の台湾旅行はスパロボに助けられたことになったかも。
カテゴリー: 遠出系
なぜか台北 その2
【あらすじ】
台湾旅行。
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パスポート期限を指摘された僕はひとつおりこうになった状態で空港ロビー内をうろつく。
ここはやはり新しいところらしく、日本家屋調の店がこぎれいに並ぶ。
妙な形のお宮みたいなものもある。
高価であり、日本人であるから日本風お土産も必要ない。
お店のひやかしを終えた僕と知人は、少しそのこぎれいゾーンから逸脱した場所にあるところで「ミニ四駆のようなレースゲーム」を発見した。
レバーの微調整で加速できるおもちゃの車が、5×10m程度の空間でねじれているコースを走る。
200円らしい。
5人ほどが招集され、さっそくやってみると、すごく難しい。
少しの加速ですぐにコースから車が飛び出てしまう。
そしてその度に、このレースのためだけにスタンバッた店員さんが、長い棒を巧みに操り車をコース上に戻してくれる。
僕含め全員が、このレースが2人の店員さんを拘束するという事実に驚愕し、そして謝罪の念を持った。
5分程度。
我々は景気よく車をコースから飛び出させ、店員さんは長い棒で車を懸命に戻し続けてくれる。
ここは活きのいい車の競り会場か何かだろうか。
いえ、空港です。
なぜか台北 その1
空港の喫茶店は、値段は高いが確かにうまい。
よくわからないネーミングのコーヒーを飲みながら、まんまと集合場所を間違えていた。
いつものように全く予定を立てていない。
そんな旅行は、人に語るという点ではだめだが、自身としては楽しかった。
台湾への旅行である。
早朝からの電車で疲弊していた僕は、どうにか集合場所へ時間どおりに到着できた。
飛行機は嫌いだが、空港の広さは好きだ。
高価なのでひやかしくらいしかできないが、清潔さと人の高揚さは神社の祭りのような雰囲気を感じさせる。
そこは新しくできたところなのだろうか。
人が少ないのも手伝って、床の輝きが目立つ。
荷物を最小限にするのが僕の旅行における最重要ポイントだ。
別に亡命するでもなく、単に観光であるわけで、ちゃんと日本に帰る。
1日目に着用した衣類を2日目に寝かせておくと、3日目はマイルドになる。
そうは思っていないが衣類も少量にし、どうにか軽量化に成功。
なんとなく、チケットを見せる場所に到着した。
ここでチケットとパスポートを見せるらしい。
するとスタッフのお姉さんが驚きとともにこう切り出してきた。
「nimbusさんはパスポートの期限3ヶ月前が、あと3日で来るんですけど・・・」
僕は何を言っているのか分からなかった。
期限まで3ヶ月もあるやないか。
しかし周りの人に聞いてみると、どうやら「期限3ヶ月前はもちろんで、それぎりぎりの旅行というのは危険すぎる」ということらしい。
例えば旅行先で怪我をし、長期入院なんてしようものならパスポートの期限があやういではないか。
そういうことらしいのだ。
3ヶ月も期限が残っていると考えていたが、スタッフの人含めた周りがざわめくほど、ぎりぎりなんだ。
僕はこのとき、より「ちゃんと日本に帰る」ということを考えた。
ちょっとそこまで。41
熊本市の豪雨は、レンタカーへ給油するために寄ったガソリンスタンドの店員さんを翻弄した。
海の砂まみれだった車内の掃除を頼んだ僕も悪かった。
次々来るお客さんと雨粒を一人だけでやりくりする。
車内清掃は悪いことした。
レンタカーの貸し出し時間を少々オーバーしたものの、かろうじてレンタカーを返却。
熊本駅近くには路線電車があるのだが、結局その線路を車で横切っていいのか悪いのか、分からずじまいだった。
仕方ないので線路を踏まないルートを探しまわり、それが少々オーバーの一因ともなっている。
熊本駅からのことは、あまり良く覚えていない。
九州新幹線はきれいだっただろうかか。
駅弁はおいしかったろうか。
座席の隣はかわいい女子だっただろうか。
箸を持つのが右、茶碗を持つのが左、箸と茶碗を持つ人の急所が正中線だっただろうか。
僕はどうやって帰ってきたのだろうか。
帰るまで遠足というのは、もはや辞書にも載っているくらいのものだろうが、あれはうそだ。
帰るために、その方に向かった時点で終わり。
そのあとは何かというと、旅という、方向を変える力が失われた結果の惰性だけ。
そして住んでいるところが引っ張る力。次のことを考える時間。
どうもこれが合わさると、どうやって帰ってきたのかわからないが着いていました、ということになるのである。
僕は惰性のあいだ、エルミナージュばっかやってた。
ちょっとそこまで。40
阿蘇の産山地方から熊本駅へ向かうのに、阿蘇のおじさんがわかりやすいルートの入り口まで案内してくれた。
牧場なのだろうか。
広々とした高原に丘がいくつも積み重なっているようなところ。
この道を右にまっすぐ行き、突き当たりを右だそうだ。
おじさんに別れをつげてその道を進む。
周りの緑がなかなか気持ちいい道だ。
ところがいくつ目かの交差点に差し掛かったとき。
ナビが右に曲がれと指示してきた。
僕はこの日の朝、宿のおかみさんの忠告よりもナビを優先してしまったため、袋小路に入ってしまったことを思い出した。
ここはおじさんの言う通り、突き当たりまで直進するべきだ。
しかし考えてみると、結果的には右に行くのだからどこで曲がってもいいんじゃないか。
そんな気もしてきた。
信号待ちも終わり、なんとなく右折してみた。
これがいけなかった。
道に迷ったのではない。
続く限りの一本道だった。
とにかくすごい霧である。
阿蘇の霧はこんなことになってしまうのか。
「白い水に突入」という叫びを最後に、目の前の道を見失わないように徐行運転した。
のならいいのだが、地元の人は慣れているのようで、通常運転で霧を払っている。
仕方ないのでそれに続く。
いつ空中遊泳してしまうのか。
ハリーポッターの何作目かに出てきた魔法の車の挙動を、普通乗用車でしてしまうのか。
気が気でなかった。
もしかしたら雲だったのかもしれない。
その霧状態は30分ばかり続いた。
へとへとになりながらもその高原をやり過ごし、あと1時間くらいで熊本というところまで来ると、そこは大雨だった。
霧を洗い流してくれるのはいいが、今度は水しぶきと轟音で日光の猿2/3分の気持ちを感ずる。
この仕打ち、なんで?。
ちょっとそこまで。39
子供のころに阿蘇へ遊びにきたときの思い出というのは、今でも濃厚だ。
近くの高原に生えている木を蹴ればクワガタが落ちてくるし、そもそもおじさんの家から一歩出ると田んぼがあり、カエルが一斉に跳ねる。
近くの小川をさかのぼると水深1mくらいになったりして、僕はオオサンショウウオがいるんじゃないかとビビった。
おじさんの車をつけているにも関わらず、道に迷うというウルトラCをかましてしまったが、懐かしいおじさん家に着いた。
おばさんが出迎えてくれた。
家の裏の水路には、カエルがやっぱりいた。
と、円滑におじさんに会った感じだが、あと30分もいられない。
新幹線に間に合わなくなる。
よって田んぼをあさることはできないし、まあ木を蹴ることはできるがそこらにある木を蹴っても気が触れたようにしか見られない。
ざんねんだ。
30分間の再会はほとんど、「唐突過ぎるわこんにゃろ」といった感じで、僕も唐突に行った甲斐があったというものだ。
今度はちゃんと連絡をするようにという、ホウレンソウにおけるレンの部分を約束し、駅へ向かうとする。
途中の分かりやすい道まで、おじさんが案内してくれた。
それにしても、おじさんの顔をいまいち思い出せなかったというのは申し訳ない。
運転しながら思っていたが、そう言えばさっきおじさんが変なことを言っていたな。
「nimbusは暗い大人になると思っていた」
そ、そんなふうに思ってたんだ。
するとおばさん「そうそう」と相づち。
結果的には「思ったよりも明るそうで、よかったよかった」なのだが、なんだこの心に響くものは。
さらに何か言っていたな。
「nimbusはとにかくハンミョウという虫がミチオシエという別名を持っているということを教えてくれた子供だ」
なんだこの「ラッシーは生きることのすばらしさを教えてくれた犬だ」みたいな感じのは。
顔が思い出せない子供と、ハンミョウのくだりしか思い出せない大人。
いいんじゃないでしょうか。
ちょっとそこまで。38
産山の村役場で待つこと10分くらい。
顔も覚えていなかったが、なぜか目の前を通る車がおじさんのものだとわかった。
阿蘇のおじさんはかなり阿蘇のおじさんで、元気そうだ。
交わす言葉もそこそこに、お家にお邪魔することにし、車で後をつけていった。
ここ産山は村役場を中心にそこそこは住宅が多いが、少しはずれると、山の隙間いっぱいに田んぼを作りました、という感じの風景になる。
おじさんの家に電話するまでの20分くらい、歩行者がおじさんじゃないかというチェックと散策をかねてうろうろしてみたのだが、おしゃれそうなカフェなどもあり、なんだか昔と違うなという印象。
僕は初めて阿蘇のおじさんを訪ねたときのことを思い出した。
おじさん、おばさん、僕の誰一人思い出せなかったのだが、何らかの方法で僕はおじさんの家にやってきたのだ。
その理由はひとつ。
タガメがたくさんいるというおじさんの話を聞いたからだ。
タガメというのは先日も触れてしまったが水生昆虫の一種で、攻撃的なフォルムが子供ウケし、独特な香りがアジアンの食欲を促す。
水のきれいな所にしかいないという触れ込みもまんざら嘘ではなく、僕は見たことがなかった。
そ、それがたくさんいるの!!。
今でも覚えているが、阿蘇に行くまで、僕は昆虫図鑑にどの水生昆虫を何ペア捕まえるかというらくがきをしまくったのだった。
だから阿蘇のおじさんの家に着いたときの「タガメはいないね」という台詞は、おじさんに殺意を抱かせるに十分だった。
殺害に至らなかった理由は、僕が殺意というものを殺意と認識することができなかったからだろう。
「何かアツいものがこみ上げてくるが、それが何かわからないので、特に何もしない」
今考えると、けなげ(?)だ。
そして何より、帰るまでの2日間はすごく楽しかったんである。
ちょっとそこまで。37
上り下りのスパンが広くなってきた。
より上って、より下って。
周りにトラックの比率が多くなり、そして車両自体は少なくなり始める。
周りの風景が「このへん、山と山の間あたりになります」と告げたとき、ナビが漠然と示す「産山地方」に到着した。
地図は広大で、しるしに欠ける土地を表示しているが、ナビは自信満々に「目的地にたどり着きました」。
「阿蘇のおじさん」に対するサプライズ訪問がここに来た目的だが、その居場所が分からないとなると、それは一体何なのだろうか。
「サプライズ何か」
それは知らないところではいつも何かサプライズが起きているということであり、いわゆる日々だ。
そう考えると、日常はかなりうかうかしてはいけないことになる。
後日おじさんに「サプライズ何かがあったんだよ」を伝えるのもいいが、正直おじさんの顔すら思い出せないので、そりゃあ会うべきである。
極秘に入手した電話番号で問い合わせる。
阿蘇のおじさんのうちには、3回くらい来たことがある。
しかし子供の頃であったため、漫然としか思い出せない。
「田んぼが両サイドにある道の、突き当たり」
これだけなのだが、案外僕は、おじさん自宅周辺にたどり着いたらそれを見つけられる自信のようなものがあった。
しかしわからない。
周辺なのかもわからない。
電話に出てくれたおばさんは驚いていたものの、おじさんを迎えに出してくれるという。
阿蘇での出来事が「阿蘇を通りました」よりも上質になることが確定した瞬間である。
ちょっとそこまで。36
2時間ほどかけて、熊本駅周辺にたどりついた。
しかしそのまま突き進む。
ナビは阿蘇を指している。
昨日までとは変わり、なんだか冴えない天気。
しかも行く先は阿蘇の産山地方なのだが、ナビで見る限り、なんだか広い。
「阿蘇のおじさん」とnimbus家で通っているその人の、住所は分からない。
それを知ったとき、軽いカルチャーショックのようなものを感じた。
毎年お米送ってきてくれるじゃないか。
でも、分からない。
日本には、未だに住所がなくてもいい地域がある。
それはさておき、空に雨も混じりだした。
そして山が多くなってきた。
必然的に坂道が多くなり、より運転に集中する。
あ、パンくんがいるらしい変な牧場みたいなところを通りすぎた。
パンくんはこんなところから志村どうぶつ園に通っているのか。
あ、パンくんの名前って、チンパンジーのパンから取られているんだ。
パンくんはこんなところから志村どうぶつ園に通っているのか。
新幹線の時間から逆算すると、産山地方で奇跡的な「着いたら会えた」が実現できたとしても、30分くらいしかいられないようだ。
そして産山地方どころではなく、阿蘇は広い。
なんたって熊本駅から1時間くらいでもう「阿蘇」という名前が道路標識などで見られたが、それがさらに2時間ばかり進んでも「阿蘇」なんだもの。
これで住所が分からないのだから、「阿蘇のおじさん」に出会えるかは、完全におじさんが暇で迎えにきてくれるかにかかっていると言えよう。
そして「阿蘇のおじさん」という名称はちょっと大まか過ぎだと認識した。
およそ2万人くらいいる。
また、おじさんにとって「阿蘇のおじさん」と呼ばれることは、ちょっと阿蘇の代表過ぎる。
謙遜でなくても、阿蘇の代表は辞退したいに違いない。
これからは「Greeeenの、eeeの人」くらいに絞り込んでから、おじさんを呼ぶべきだ。
おじさん一人に、阿蘇は広い。
そんな阿蘇から、パンくんは本当に志村どうぶつ園に通っているのかねえ。
10時。
産山ぜんぜんつかね。
※正解
パンくんの撮影は阿蘇のここでのみ行われているとのことだとか。
ちょっとそこまで。35
海岸沿いを行きたかったけどそういう訳にも行かず、住宅街を縫っていく。
朝早いので対向車があまりいないのがうれしい。
10分くらいたつとまた海が見え始め、道も広くなった。
僕は運転しながら、宿周りを散歩したことを思い出していた。
宿は住宅地にあったけど、その住宅は田畑を持っているらしく、田んぼがあった。
水路を覗き込んでみると、おびただしい数の小魚がスクランブル交差点みたくなっていた。
水がきれいなのだろう。
これなら水生昆虫がいるかもしれない。
以前書いたかもしれないが、水生昆虫という虫がいる。
それが好きなのだ。
正直、へびいますといった感じの草むらに入る必要があるけど、もう少しよく田んぼを見たい。
そう思っていざ踏み込もうとしたとき、働いている人がいることに気づいた。
これはだめだ。
田んぼを荒らさず、働いている人に迷惑をかけず。
これが水生昆虫友の会(たぶんない)の掟である。
田んぼを横に、さらに道を進んでいくと上り坂になってきた。
小さい山を登っていくようだ。
このまま山を越えるのも面白そうだ。
興味を覚えたので、どんどん進んでみることにした。
目を向けると、要所要所に畑がある。
私道なのだろうか。
結局、山を下りようと脇へと続く道の先は全て畑で、ちょうど蟻の巣を逆さにしたような。
畑の袋小路ばかりの道だった。
道を戻り終えると、さっき働いていたおじさんがこちらを見ている。
行き止まりだったのなら、教えてくれればいいのに。
その足で海岸へ行くことにした。
地元の水着ギャルが恋人と戯れているゆえ、それに全然気づいていませんの体を出すのがめんどくさかったが、波打ち際にヘルメットが漂着しているのを見つけ写真を20枚くらい撮ってしまった。
夕陽とヘルメットがかなりよかった。
さらに散歩を強行していくと、海へ小川が流れ込んでいるところにやってきた。
小さいころに牛深市に来たとき。
図鑑で見た「汽水域 」というものらしきところがあって、とにかくそこに行きたかったことを覚えている。
なんかわからないが、淡水と海水が混じり合っているところで、生き物が多様だそうだ。
僕には「ここだ」とずっと思っている「下水道と海が混ざっているところ」があって、そこは遠目でもカニが見えた。
いつか行きたいと思っていたが、子供ではなかなか行けない場所。
遠目のカニで我慢しつつ、気づけばこの年だ。
しかし今、「汽水域 」的なことになっていそうな所に、はからずもたどり着いてしまった。
なんということでしょう。
すっごい空き缶いっぱい落ちてる。
駅へ、そして阿蘇へと続く道から、海はもう見えなくなってしまった。