ちょっとそこまで。35

海岸沿いを行きたかったけどそういう訳にも行かず、住宅街を縫っていく。
朝早いので対向車があまりいないのがうれしい。
10分くらいたつとまた海が見え始め、道も広くなった。
僕は運転しながら、宿周りを散歩したことを思い出していた。
宿は住宅地にあったけど、その住宅は田畑を持っているらしく、田んぼがあった。
水路を覗き込んでみると、おびただしい数の小魚がスクランブル交差点みたくなっていた。
水がきれいなのだろう。
これなら水生昆虫がいるかもしれない。
以前書いたかもしれないが、水生昆虫という虫がいる。
それが好きなのだ。
正直、へびいますといった感じの草むらに入る必要があるけど、もう少しよく田んぼを見たい。
そう思っていざ踏み込もうとしたとき、働いている人がいることに気づいた。
これはだめだ。
田んぼを荒らさず、働いている人に迷惑をかけず。
これが水生昆虫友の会(たぶんない)の掟である。
田んぼを横に、さらに道を進んでいくと上り坂になってきた。
小さい山を登っていくようだ。
このまま山を越えるのも面白そうだ。
興味を覚えたので、どんどん進んでみることにした。
目を向けると、要所要所に畑がある。
私道なのだろうか。
結局、山を下りようと脇へと続く道の先は全て畑で、ちょうど蟻の巣を逆さにしたような。
畑の袋小路ばかりの道だった。
道を戻り終えると、さっき働いていたおじさんがこちらを見ている。
行き止まりだったのなら、教えてくれればいいのに。
その足で海岸へ行くことにした。
地元の水着ギャルが恋人と戯れているゆえ、それに全然気づいていませんの体を出すのがめんどくさかったが、波打ち際にヘルメットが漂着しているのを見つけ写真を20枚くらい撮ってしまった。
夕陽とヘルメットがかなりよかった。
さらに散歩を強行していくと、海へ小川が流れ込んでいるところにやってきた。
小さいころに牛深市に来たとき。
図鑑で見た「汽水域 」というものらしきところがあって、とにかくそこに行きたかったことを覚えている。
なんかわからないが、淡水と海水が混じり合っているところで、生き物が多様だそうだ。
僕には「ここだ」とずっと思っている「下水道と海が混ざっているところ」があって、そこは遠目でもカニが見えた。
いつか行きたいと思っていたが、子供ではなかなか行けない場所。
遠目のカニで我慢しつつ、気づけばこの年だ。
しかし今、「汽水域 」的なことになっていそうな所に、はからずもたどり着いてしまった。
なんということでしょう。
すっごい空き缶いっぱい落ちてる。
駅へ、そして阿蘇へと続く道から、海はもう見えなくなってしまった。

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