その前

ある日の朝食。
僕がみそ汁をすすっていると、向かいでご飯を食べていた友人が僕の背後の窓を見て、「あ、鳥だ。」と言う。
僕は、どんな鳥が来たのかと、後ろを振り返ってみた。
すずめだ。
「なんだ、すずめじゃん。わざわざ鳥っていうから・・・。すずめだ、って言えばいいじゃん。」
でも、友人は間違ったことを言ったわけではない。
すずめは、鳥だ。
どうやら、僕は「すずめ/鳥」の関係を、こう考えていたようだ。
「すずめは鳥であるが、それよりもすずめであることの方が強い。」
感慨深い朝となった。
「すずめは、鳥である前に、すずめ。」
「母は、女である前に、母。」
今日は、母の日。

宣伝

某大型電気屋にて、スパイダーマンが「DVDが10%オフ!!」と言っていた。
ポップである。
たとえ、スパイダーマンがいいひとで、あなたの親愛なる隣人だとしても、言わせてはいけないものがあるはずだ。
冒頭のDVD云々は、少々イメージを損ねてしまう気がする。
イメージを損ねちゃあ、今後にも支障をきたすぞ。
だから、宣伝したいとしても、まぁDVD云々はあきらめようじゃないか。
「あのビルからビルまで、ひとっとびさ」
「おいおい。殺虫剤だけは、かんべんな!!」
「守ってみせる、アンナ・・・」
該当映画をあまり見ていないこと明白になりそうだが、こんなセリフなら、吹き出してもいいと思う。
これがいやなら、宣伝専用のオリジナルキャラに言わせればいいのだ。

ある病院の待合室にて。
初老の男性2人がこんな話をしていた。
「もしかして、インフルエンザじゃないですか?」
「いや、それだったら、もう少し熱が高いはずです」
人間の体とは不思議なもので「体温のインフルエンザボーダーライン」があるらしい。
このラインを体得するため、大きな犠牲をはらったであろう。
昔、ラインが無い時代。
上げまくったやつがいたに違いない。
そして彼は身をもって「上げすぎんなヨ」と教えてくれたのだ。
ありがとう。

姿勢

「志村どうぶつ園」という番組がある。
僕はだいぶ前からカワウソのかわいさには注目していたため、それにフォーカスを当ててくれたことに感謝している。
ところで、今回はカワウソではなく、この番組の観覧お客さんについてである。
ある出演者が何か食ったシーンがあった。
普通、このときは志村けん氏や幾人かのゲストが「おいしい?」と聞く感じになるだろう。
そして食った人は「いやー」とか「めちゃくちゃうまいですよ」とかになる。
しかし、僕がたまたまテレビでその光景を見ていたとき、お客さんの反応がすごかった。
「おいしいいいいぃぃぃ!?」
何かわからないけど、出演者の感想を聞く姿勢が、やたらアグレッシブであった。
ひとりふたりではない。
かなりの数の観覧お客さんがいち出演者に対して「おいしいいいいぃぃぃ!?」とたずねる、いや発していた。
やたらフレンドリーに。
番組前に、スタッフの人にほっかほかであることを強制されたのだろうか。
前座の人が面白く、かつ親しみやすい人だったのだろうか。
番組としては、出演者とお客さんがわきあいあいで進行、という感じでよさそう。
だが、ひとりに対して何十もの「おいしいいいいぃぃぃ!?」が向けられたそのシーンは、圧巻だった。
おそらく、出演者がひとりでみこしを担ごうとしたら、お客さんは大声で「おもいいいいぃぃぃ!?」というだろう。
熱湯コマーシャル中は「あついいいいぃぃぃ!?」だろうし、罰ゲームで坊主にされてしまったら「みじかいいいいぃぃぃ!?」だろう。
まとめ。
今回紹介したやり取りで面白いところは「いうまでもない」と「実はそれほど興味ない」が共存している点である。

ローカルあいさつ

人に会うと、だいたい「おはようございます」「こんにちは」と言い、そのあと「いい天気ですね」とかになります。
これが一般的な、普通のあいさつ。
ところで、誰でもそうだと思うのですが、気のおけない友人などに対しては「ローカルあいさつ」があるのではないでしょうか。
例えばいつもメガネをしている友人に会ったとき、「おはよう」ではなくいきなり「お、そのメガネ、ちょっと度が抜けてきてない?」とか言ってしまう。
それが「ローカルあいさつ」。
お笑い好きの友人には「最近のオススメは誰?」。
体型を気にしている友人には「やあ、今日は一段と、君のほうに地軸が傾いてるね」。
情報通の友人には「何か面白いネタはない?」。
これらも「ローカルあいさつ」。
普通のあいさつではないですが、彼ら、少なくともしている方にとっては、あいさつみたいなものとして使われます。
もし誰かに「お、今日も手つきが別の生き物みたいだね」とか言われたら、相手はあなたに対して少なからずの信頼を寄せているので、怒るな。
な?。
追記
僕はよく「最近面白い○○はないかねぇ?」というローカルあいさつを使います。
○○はほとんど、本か映画。
ある友人に対してこのローカルあいさつを使用すると、必ず「ショーシャンクの空に」と「モンスターズ・インク」が回答となります。
このあいさつで、僕は美しく変わらない返歌を聴いたような気持ちになり、それと同時に、この間会ったときから、彼の映画ベストが更新されることはなかったことを知ります。
無意味情報が手に入ったりするけど、少しだけ深みの増すあいさつとなるわけ。

その生き物は能動的に ?

昨日からのつづき。
【あらすじ】
昔の話に「いきなり多くの人を殺すことのできる動物」について触れたものがある。
どうやら、途方もなくでかいんだな、そいつ。
その動物は、その巨体で次々に人を踏み倒していったのである。
だが、ここでもう一つの可能性を示唆したい。
いったん、既知の動物について考えてみよう。
大型の魚類やヒゲクジラはおびただしい量のプランクトンを食ってそうだし、ツチブタはシロアリをバカスカ食べる。
実は、「いきなり多くの○○を殺す」ことは自然界ではいたって普遍的に行われているようだ。
そしてそれは「いきなり多くの○○を殺す」→「○○がごはんです」となる。
となると「いきなり多くの人を殺すことのできる動物」は「人間がごはんです」となっていた可能性がある。
その動物は人々を踏みまくったかもしれないし、謎の器官で集落を「ひとさらい」していたかもしれない。
まぁ、でかいことと、能動的に人を殺そうとしていることは、確かくさい。
ということで、昔の人、ナイス退治。
彼らのおかげで、「いきなり多くの人を殺すことのできる動物」は現在、1種のみとなっているのだった。

その生き物は能動的に ?

「その動物はいきなり、多くの人を殺したので」
まじめにUMA(なんかわかってない動物のこと)について書いた本「幻の動物たち」のどこかに、こんな感じの記載があったはず。
それはたしか、昔どこかの国で大きいヘビだかトカゲだかを退治する伝説について触れたところだったか。
ところで、ここで気になるのは、そのUMAについてでも、その信憑性どうこうでもなく、とにかく「いきなり多くの人を殺した」のところだ。
ど、どうやったんだ?、動物・・・。
今、人に危害を加える可能性のある生物を思い浮かべているが、「多くの人を殺す」ヤツは思い当たらない。
ワニ、アナコンダ、サメ・・・?、ハチは抜かすか・・・。
危険そうだが、彼らでは多くの人を殺すことは難しいだろう。
例えば1匹のワニに3人の人間をあてがったとしよう。
もし3人が、なんらかの理由でワニの口の中に投身自殺をしたい人たちだったとしても、1人が目標達成中には、残りの2人は順番待ちだ。
「いきなり」にはほど遠い。
ワニのほうも、3人に対して致命的なダメージを与える全体攻撃は持ち合わせていないのではないか。
口は1ワニにつき1口しかないわけで、そこには1人間の許容しかできないはす。
しっぽも強烈らしいが、それによりなぎはらいでもいきなり死にはしないだろう。
ワニがノルマを達成するには、口にくわえーの、しっぽではたきーの、乗っかったりしーのと、かなりの有酸素運動を要求されてしまうのだ。
さらに、ここまでの話は、基本的に人間側が負の符号のついた人たちであることが前提だが、冒頭の伝説で殺された人たちは、もちろん生きる気満々だったはず。
このような考察はサメ等でも同じだ。
ゾウは、殺意さえ湧けば、かなり近い「いきなり多くの人を殺した」ができるかもしれない。
しかし、そんなのは考えたくないし、やっぱり「いきなり」部分がネックとなる。
「いきなり多くの人を殺した」。
これは、出会い頭に複数人を踏み倒せるような、そんな巨体を持つものだけができるのだろう。
伝説の「その動物はいきなり、多くの人を殺したので」は結局、そいつはすげーでかかったよ、の強調でしかないのかもしれない。
次回、もう一つの可能性。

噂の無真相

所長「えー、今日は3つの噂が手に入った。」
所員「いつもより多いですね。」
所長「だからといって、大味ということもない。調べようのあるものばかりだ。」
所員「で、内容は?。」
所長「まず一つ目は、「途中下車の旅」に出演するとき、万が一に備えて保険書コピーの所持を求められるらしい。」
所員「あぁ、いいですね。どうでもいい感じが、いいですね。こういうのは噂の状態が一番、いいんですよね。」
所長「うん。そう思って断っておいた。」
所員「所長にしては、気が利いていますね。」
所長「じゃあ二つ目。Perfumeの「plastic smile」の歌詞にある「何か外れた」というのは、テレビのリモコンを振ると、何かが外れていてカチャカチャいう、その何かを指しているらしい。」
所員「あれ、僕は完成したガンダムのプラモデルを立たせるとき、ぽろっと何かが落ちる、その何かだと思ってましたよ。」
所長「なんだ、君の意見を聞いたら、噂が増えてしまうじゃないか。」
所員「それにしても、何が外れたのか、ちゃんと確認できてから、外れたことを報告してもらいたいものですね。」
所長「ここはひとつ、「ガンダムのプラモデルを振ると、何かが中で外れていてカチャカチャいう、その何か」にしておこうか。」
所長「三つ目だ。鼻が詰まっているときにちょっとした運動をすると、詰まっていた鼻がとおる。」
所員「しょ、所長!!。」
所長「なにかね?。最後のだけ、ひどく普通になってしまったのが不服かな?。」
所員「さっきの所長のセンテンスの最初と最後をつなぐと「三つ目がとおる」になります!!。」
所長「ホントダ!!。」

拍手、上級。

昨日からのつづき。
【あらすじ】
居酒屋などで、突然聞こえてくる拍手。
それの、クールなやり過ごし方について。
◆上級
:その拍手に続け!!。祝福発起テク!!。
1.拍手が聞こえてきたほうに、少しだけ目をやる。
2.大まかな「祝福内容」を把握する。
3.視線を戻す。
4.その場でびっくり発言を行う。
5.店内が拍手で包まれる。
※1.は初級、中級と同じです。
拍手が起こっていることも知っているアピールとなります。
今回、ポイントとなるのは2.と4.です。
上級では「どこかで拍手が起きたら、こちらの場でも拍手を起こしてしまおう。」という、現場祝福三昧確定となる荒業に挑戦します。
そのため4.にて、あなたが拍手に値する発表をしなければなりません。
しかしそのとき、最初に巻き起こった拍手が「さくらんぼの軸を口の中で結ぶ技」を褒めたもの、あなたの発表が「日本の少子化問題に、あらゆる手段で挑んでいく。」というものであった場合、どうでしょう。
なんとなく「釣り合わない」感じではないでしょうか。
これを避けるべく、2.にて大まかな「祝福内容」を把握します。
祝福内容がさくらんぼ系なら、あなたの発表は「道の真ん中にいたヒキガエルをつついて、追いやってあげた。」くらいのものでよいでしょう。
上級を完璧にこなすことができれば、店内は拍手に包まれます。
また、上級者が店内に複数いた場合、それはスタンディングオベーションとなり、ひとときの地球平和が訪れることに。
そして友達は、あなたをこう見るでしょう。
「あいつ、たいした拍手のマエストロだな。」
拍手、おわり。