アイキャッチのあゆみ

?アイキャッチのあけぼの?
アイキャッチ
番組前後や番組中のCM前後に5秒ほど挿入される番組のタイトルや象徴のこと
例)
ルパン三世:CM前後に挿入されるルパンが普通自動車に乗り込もうとしてハンドルが外れての「あり?」
推理サスペンス:CM前に挿入される最初1時間分のダイジェスト
=====
アイキャッチのはじまりは、多くの人が予想する「いきなり番組がはじまるのもなんだから、さあいまからはじまるよという感じのものを挿入しよう」という発想からではないことが知られている。
1964年、アメリカで放映されていた「おまえの内股でこの手をぬくめたい」は、生放送が売りの超人気ドラマだった。
この時代でも、既にCMに相当する時間がドラマ中でもうけられており、それはそのタイミングでスタッフがカメラ前に広告のボードをかざすという方式だった。
その日、順調にドラマは進行していた。
「ああさっぶい。さっぶいねえ」
「そうね」
「ねえほんと、さっぶいねえ。指先の感覚が全然戻らないよ」
「ええ」
「なあ見て、俺の内股。ほらもう手の跡の凍傷が」
「わあひどい」
「手が冷たすぎて。もう全然、自身の内股使えないのよ」
「ええ」
「使いたいわー。内股使いたいわー」
「で、わたしの内股にもその手形を残す気?」
本来、ここでCMの予定だった。
しかしこの日は計算外のことが起きたのである。
それは予定していた時間よりも、ずいぶんと早くドラマが進行してしまっていたこと。
スタッフがCMの準備としての広告ボードを全く用意していなかったのである。
一見、そのようなボードは既に用意されていると考えられると思うが、当時は広告主から、放送の寸前に内容を変更するよう求められる事が当たり前のように行われていた。
「ここの【あたり一面別世界】のところ。ここを【皮フをはさんで別世界】に直してくれ」
そのため、時間ぎりぎりまでスタッフは準備をしていなかった。
さて、ドラマの出演者がCMだと考えていたところで、スタッフには何も出す物がなかったのである。
CMが始まるものと動きを停止した出演者、状況を把握し青ざめる現場の人間が見たもの。
それは広告ボード担当のスタッフがカメラ前で「ひとりゆび相撲」をやるシーンだった。
誰もがアイデアを出せなかったなか、彼はひとりでゆび相撲をやった。
画面には両手だけが映し出されており、それがひとりでやる以上しかたがないのだが、親指が上下に向いた組み手だったという。
上下の親指が相手なくぱたぱた動いている間、別のスタッフが急遽広告ボードを用意、10秒ほどのち、CMが行われた。
CM後、何事もなくドラマが進むなか。
スタッフ全員は番組終了後のことを考えると滅入ってしかたがなかったという。
つづく。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です