理想犬

「理想の犬の育てる」みたいな本があった。
犬猫に興味がなく、彼らにそれほど理想を見ない私にとって、その本の内容は「お金の入ったポリ袋を咥えてこさせる」的なことが書いてあるように思えてならなかった。
しかしすぐに、私にも少なからず犬猫に要求する理想があることに気付いた。
まずはトイレ。
部屋を目的もなく歩きまわる彼らは自由奔放でかわいいが、トイレはそうであっては困る。
それにご飯。
あまりに贅沢なものしか食べない、なんてことも困るのだ。
いたずらもだ。
かまってやる時間がどれほどになるかはわからないが、家中をかき乱すようなことは、やってもらいたくない。
あと、愛玩性。
これは、言うまでもないだろう。
なんだ、私もずいぶん、理想が高いじゃないか。
これじゃ、飼えないな、犬猫なんて。
と、ふと思う。
他人の思う、理想の犬とは、何なのか。
少し、その本が気になりはじめた。
私は本を手に取り、「はじめに」と書かれたページを開いてみた。
こう、始まっていた。
「まず、飼わないためには」
私はレジに向かった。

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