ドリア三味、おかわり。

小さな洋食屋さんで、ドリアを注文する。
昼食どきでも、夕食どきでもない。
お客さんが自分しかいない。
そんなとき、厨房の方から「チーン」と聞こえたら。
名指しである。
彼はファミレスが嫌いだった。
厨房から店員さんが出てくるたびに、自分の注文した料理なんじゃないか、と見てしまう。
極度に腹が減っているわけでもないのに。
その行為はなんだか子供じみてる。
しかし、気付くとやってしまっている。
軽い自己嫌悪。
レンジの音に気付かないふりをしていると、くたびれたエプロンをした店主がドリアを持って、近づいてきた。
「あんた、チーン聞こえなんだか。」
「え?」
「あんた、チーン聞こえたら、それはあんたのドリアに決まってる。」
「なら、食べる準備をしとくもんだ。」
いやな想像をしてしまった。
そんな不躾な店主はいないだろうが。
そうこうしていると、くたびれたエプロンをした店主がドリアを持って、近づいてきた。
彼はあわててスプーンを手に取り、それでテーブルの木目をなぞり始めた。
店主はその行動を一瞥もせず、何事もないようにドリアをテーブルに置いて、愛想良く彼といくらかの言葉を交わしたあと、立ち去った。
軽い自己嫌悪。

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