旅行5

その国には「貸し本屋」があった。
上記の文章はなんとなく「天国の本屋」を思い出させるが、とにかくそこは貸し本屋だった。
嬉々として入店する。
あらゆるスペースに置かれた本棚に納められているのは、ほぼ漫画。
日本の漫画だらけなのだった。
見てみると、かなり最近のものから少女漫画、萌え系まで何でもござれ。
漢字の文化を色濃く残す国であるため、漫画の文字は全て漢字に置き換えられているが、それ以外はなんら日本の漫画コーナーなどと変わらなかった。
少女漫画コーナーには10歳くらいの少女。
カウンタには暇そうな店員さん。
そして店内を物珍しそうにうろつく日本人2人。
その時間、本屋はそんな構成だった。
異国の貸し本屋。
僕らはその味のある空間にほんわかしたか、そうでないか。
なんて書いてあるのかいまいちわからないタイトルから、漫画を当てるゲームに、迷惑で申し訳ないが興じていた。
その本の背表紙には確か「魔法少女」と書いてあった。
ドラゴンボールや鋼の錬金術師は難なく解答できていた僕らの快進撃は、そこの棚で停止した。
その、やたらたくさん該当しそうなタイトルを持つ本。
僕は、考えた。
その棚の雰囲気。
少し萌え系の集まった棚だ。
それに、何か日本の本屋の棚でも、同じような出版社の配置だったような気のする、棚だ。
別に僕は出版社の名前を全然知らないのだが、背表紙の上のマークが、見覚えのある配置だったのだ。
この貸し本屋の棚における本の配置が、日本の本屋における本の配置に近いとにらんだ僕が出した結論は「マジカノ」だった。
なんかわからないけど、見たことありげな本が並び、その配置でそこに「魔法少女」とくる、萌え系・・・。
読んだこともないのに、なんかわからないけど「マジカノ」だと思った。
しかしそのころの僕は「マジカノ」のことを「マジ(本気の)カノ(彼女)」のようなものと推測していた。
要は、マジカノに興味が無かった。
だから「魔法少女」が「マジカノ」なのだと思っていても、それらが符合しているのはせいぜい「少女」のところしかないと感じられたのだ。
それから2?3秒後、僕はすさまじい快感を得る。
「あっ!!、マジカノのマジって、マジックのマジだ!!。」
異国で、僕は興奮した。
友人に「これ、マジカノだよ!!。マジカノのマジはマジックのマジなんだよ!!」と何度も言う。
「それに、この本のならび!!。日本の本屋のならびと似ていて、そうだとしたらこのポジションはマジカノなんだよ!!」
友人が手にしていた「魔法少女」を奪い取り、奥付を見る。
「マジカノ」だった。
異国にて、
ならびより本を見極める。
マジカノのマジの意味を知る。
店員さんやお客さんがいるのに、マジカノを連呼する。
去年、一番うれしかった瞬間は貸し本屋で訪れることになる。
「僕は異国の地で、本の配置をたよりにマジカノを当て、マジの意味も知ったぞ!!」
たった一度きりの
しあわせがくるのだった。
追記
まだ、マジカノのマジの意味を確認していないので、もしかしたらマジックのマジではないかもしれません。マジカルとかかもしれませんが、まぁいいか。

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