車種の特定に至る経緯

僕は、マーガリンは食パンの全面にまんべんなく塗られている方がおいしいと思っているが、その人は「マーガリンはまばらな方がいい」と言った。
そのようにしてみると、確かにマーガリンがあるところとないところが不規則に口に入ってきて、飽きない気がする。
むしろおいしい。
こうして僕は、マーガリンをまんべんなく塗るおいしさとまばらに塗るおいしさ。
両方を楽しめる人間になった。
今朝は昨日降っていた雪がすこし残っていて、水浸しだ。
かすかに残った轍の残りが、ちょうどまばらに塗ったマーガリンのようだった。
本気の轍は危険だが、水を含んでいるものはやわらかい。
僕は、この水を含んだ轍の残りを強く踏むのが好きで、そうすると雪がはじける。
このとき、轍は地面の全面にまんべんなくあった方がいい。
踏むとおもしろい箇所がたくさんできるからだ。
しかしその人は「轍はまばらな方がいい」と言った。
追跡しやすいからだそうだ。

あだ名9

くそう。
こんなあだ名だったら、指差すだけで雲を消す事ができたのにのコーナー。
◆ドトール
用法:
「ドトールの椅子の座り方、きもい」
由来として考えられるもの:
コーヒーが好き
異常に背が高い
なんか分からないが、顔が異国の人っぽい
◆グリル
用法:
「グリルなのにしょうゆ顔だね」
由来として考えられるもの:
洋食屋さんの子供
昼食の時、弁当箱の中にレシピだけが入っていたのを見られた
体質で、脂汗がすごい
◆ムシューダ
用法:
「ムシューダの答案用紙だけ貼り出されてたよ」
由来として考えられるもの:
自分を臭いと思っているのか、ロッカーと机の中にムシューダを入れている
先生にすぐムシューダを仕掛けられてしまう
無垢すぎ
◆チャット
用法:
「チャットのうわばきだけ、先が赤いやつだ」
由来として考えられるもの:
喋り続けないと死ぬ
喋っている時、手がタイピングの動きをしてしまう
対話している時、最初に「>」と言う。
◆トリプルビーフケーキ
用法:
「え、俺とビーフケーキの誕生日、同じじゃん」
由来として考えられるもの:
恰幅が良い
ビックマックを前に、物足りなさそうにする
バイオリン、ビオラ、チェロを弾ける

標語

少々軽卒かもしれないが「お・か・し」の話だ。
「お・か・し」はいわゆる緊急時に気をつけなければならないことを覚えるための標語で、その詳細は「押さない、かけない、しゃべらない」という非危険三原則、逆読み書きそろばん、ともいうべきものだ。
様々な場所で様々な亜流があるらしいが、今回はその亜流を考えてみようということ。
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「い・た・こ」
「意識があるか、助けを呼ぶ、呼吸の確認」という、救命処置の順番を表す標語。
「す・み・そ」
「すべらない、みすぼらしくない、そうでもない」という、中堅芸人を表す標語。
「て・じ・な」
「テレパシーを送らない、神通力を使わない、NASAに過剰に反応しない」という、宇宙人であることがばれないようにするための標語。
「ト・キ・オ」
「東京、TOKIO、沢田研二」という、何らかの御三家を表す標語。
「じゃ・あ・ね」
「国生さゆり、河合その子、ゆうゆ」という、何らかの御三家を表す標語。
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楽しましたが、ラストのはかなり悩んだ。
じゃあね。

ごめんね田村くん。

前代既聞!!
お手抜き企画
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わかってる。
わかってるけど、まずは「事件事故の両面から捜査」してほしいな、の案件集。
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①あなた!! 何このワイシャツの口紅のあとは!!
②田村のそで、真っ赤だけど聞く。誰だ給食前に大おかずのナポリタンを盗み食いした奴は!!
③和子!!、お前今日の昼に知らない男と腕組んで二子玉川の商店街歩いてただろ!!
④田村の羽振り、妙によくなったけど聞く。誰だ給食費を盗んだのは!!
⑤たーちゃん、まさかお母さんの乳液を豆乳に入れ替えたりなんか、しないわよね?
ちなみに、登場人物全員が田村姓を想定した、戯曲となっております。

ねじれるほどにこがれ

僕は自々ともに認める「きな粉」好きであったが、駄菓子にある「きなこ棒」というものには魅力を感じなかった。
やはりきな粉は餅についてなんぼのものである。
きなこ棒を一度も食べた事がなかった。
しかしこのあいだ。
スーパーで買い物、レジで並んでいると、そう遠くないお菓子コーナーにてねじれた感じの駄菓子を発見。
何かと確認してみると、きなこ棒とある。
250円と、なんか駄菓子じゃないなという気もしたが、興味本位で購入する事にした。
家に帰ってさっそくパッケージを開けてみると、この「ねじれきなこ棒」は半生タイプなのか。
妙にやわらかい。
駄菓子屋のほうのがどういうものなのか分からない以上、これが半生であるのか普通の状態であるのかは分からないが、一つ言えるのは、これを食べた事で歯の詰め物が取れてしまうことだけは避けなければならないということだ。
試しに一本をしゃぶってみると、すばらしくおいしい。
うちではきなこ餅を食べる時、焼いた餅を一度湯にくぐらせる。
これはきな粉をたくさんつける目論みなのだが、そのときにできる副産物。
ちょうど水を含んで凝固したきな粉そのものに非常に良く似た味がする。
こんなにおいしいのなら、昔から食っておけば良かったと思ったが、どうなのだろうか。
これはあくまで250円の方のきなこ棒であって、駄菓子屋の方のはこれと同じ味かどうかは疑わしい。
そう。
今回の件で、少なくともきなこ棒メーカーは2社あることに気づかされた。
もちろん同じメーカーかも知れない。
だが、片方は駄菓子というくらいだから相応の値段。
一方、今目の前にあるねじれた感じのきなこ棒は250円。
駄菓子と高級志向の駄菓子。
高級志向の駄菓子は、いつか菓子になれるのだろうか。

足らない証 その2

昨日からの続き。
【あらすじ】
タクシーの運転手さんが「ソースのつけないたこ焼き」を知っているかと尋ねてきた。
明石焼がちらついたが、そのことを知らない体で話を聞くという人道はずれたいたずらを敢行。
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「ソースをつけないたこ焼きって知ってます?」
そう運転手は言ってきた。
「いや何言ってんですか。たこ焼きにソースつけないなんてありえないじゃないですか」と僕。
事実、たこ焼きの3割はソースだと思う。
5割は生地、2割は揚げ玉だ。
「それがあるんですよ。僕も驚いちゃってね」
「実はそのたこ焼き、ダシをつけるんですよ」
着陸地点の明石焼が近づいてきた。
「ええーっ。だってせっかくカリカリに焼いてあるのに?」
「そうなのよ」
「ソースなんかはどうなっちゃうんですか?」
「いやだからソースのかわりなのよ、そのダシが」
「ダシって何です?」
「なんかスープみたいの」
「いやあそんなたこ焼きは知らないな。そのダシっていうのもイメージ湧かないですし」
「そうでしょ?」
悪い奴だ。
僕は悪い奴だ。
しかし話はよく転がり、その点は悪くない。
「実はね、そのたこ焼き、卵で焼いてんのよ」
かなり近づいてきた。
今、明石焼が対向車線をさっと通り過ぎなかっただろうか。
「えっ?。どういうことですか?。たまご?」
「そう、卵。卵焼きみたいになってんの」
「卵焼きですか?。だって、たこ焼きって生地に卵も入っ」
「あんな感じじゃないのよ。もうほんと卵ばっかりって感じで」
楽しそうだ。
食い気味で卵のことを話してくれた。
一方で僕も、悪いと思いつつも楽しくなってきた。
こんなに楽しそうに明石焼のことを話す人を、僕は見た事がない。
そして話は、ついに最終局面となる。
「実はそれ、明石焼って言うんだけどね」
「え、そんな名前なんですか?」
「確かに明石ってタコが有名だったりしましたっけ」
「そうなのよ、ダシで食べるんだよ。もう俺はびっくりしちゃってね!!」
タクシーは一筋の光となって、16号線をなぞっていた。

足らない証 その1

このあいだ、久しぶりにタクシーに乗った。
電車代金のことを考えると、毛ガニの甲羅に焼酎を入れて一杯やりたくなるような値段だが、荷物が多かったんである。
多くの人が気づいているように、タクシーの運転手は喋る人か喋らない人か。
だいたい2通りに分かれる。
喋らないのはごもっとも。
運転中でそれが仕事なのである。
それに集中してもらいたい。
喋るのもごもっとも。
お客さんを楽しませられそうな話を引き出しに持っているわけで、それで束の間の休息を過ごしてもらいたいということなのだろう。
僕はどちらも全然気にならない。
その運転手は喋るタイプで、昔旅行したことを話してくれた。
そんな車中。
僕が先日大阪に行ってきたことを話すと、意味ありげな笑みをバックミラーに浮かべて、こう切り出してきた。
「ソースをつけないたこ焼きって知ってます?」
知っていた。
おそらく明石焼のことであろう。
僕はたこ焼きが大好きだから、結果的に明石焼も大好きだ。
見た目くらいしか類似点はないが、たこ焼きの積極的な味と明石焼の優しい味。
どちらも甲乙付けがたい。
しかし、ここでちょっといじわるな気持ちが芽生えてきた。
彼には申し訳ないが、ここは「明石焼知らない」で通してみたくなった。
この手のいじわるは、人が思っているよりもかなりたちが悪い、ひどいことである。
だからまずやらないのだが運転手があまりに楽しそうに、しかも人なつこくていい人っぽいので、いじめたくなったのだ。
ここであやまる、「こないだのたこ焼き明石焼の件」、ごめん。
ついでに続きは明日にして、ごめん。

水のかおり その2

昨日からの続き。
【あらすじ】
水が貴重になったら、どうなるのだろうか。
おちゃらけ方面。
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・飲尿療法という言葉が廃れる
・干物、ドライヤーも廃れる
・マラソンの給水所にある飲み物が、全てコーラになる
・蒸発を防ぐため、プールがきんきんに冷えている
・キスの意味が変わる
・流しそうめん文化がなくなり、そのニッチに投げそうめん文化が入ってくる
・雨男、雨女のリストが国で管理される
・川岸30メートルおきに警備員が配置される
・かき氷の氷が、ブイヤベースを凍らせたものになる
・AneCanに雨乞いファッションの特集
・化粧水に煮こごりが添加される
・水を貯えた樹木の切断に必要なため、なたの所持が許可される
まあ、こうやってすぐ終わるのです。