(あまり楽できていませんが、10月21日からの続きなんで、先にそちらを)
「そりゃ、いやなものですよ」
「俺がガキのころもそんなものがあったが、何とも思わなかったがな」
「昔はケムシが腐るほどいたから慣れているんでしょう?」
「そういうことじゃない。人間、これからはいやなもの、怖いものがさらに増えていくんだ」
「どういうことですか?」
「お前、死ぬのは怖いか?」
「もちろん」
「戦争は?」
「やですね」
「お化けは?」
「経験ないからかもしれませんけど、そんなには」
「人の話題についていけなくなることは?」
「怖いですね・・・」
「いつもは静かなのに焼肉とかになるといきなり元気になる人は?」
「焼肉が好きなんだなぁと思います」
「ドラマとかで主人公が仲間から疑われるシーンは?」
「耐えられないですね」
「ずっと喋りながらトイレしている人とかは?」
「確かに怖いです」
「熊出没ステッカーをファッションとして貼っている車は?」
「それも怖いですね・・・」
「ほれみろ、たくさんあるじゃねえか。俺の時代にはそんなになかったぞ」
「うーん。何かうまいことやられてる気も・・・。でも、なんでこんなにあるんでしょうかねぇ・・・」
「んなこた簡単だ。塔の上から下を覗き込むとき、高い塔の方が怖いに決まっている。」
「うまいこといいますね」
「偶発的に起きるものに対する恐怖もあるだろうが、結局自分の足元でくすぶってる方のが重要なのよ、そういうとこのが。」
「・・・あなた、誰ですか?」
「・・・知れば、君が怖がるものをもう二つ増やしてしまうだろうな。知らない方なら、一つで済む」
「ははっ、何言ってんですか」
「まぁ、後者だろうな?」と言い、男性はかき消えた。
カテゴリー: 物語
バベQの塔
公園を犬と散歩していると、一箇所だけ地面が黒ずんでいる場所があることに気付いた。
そして、近づき目を凝らした瞬間、小さく嗚咽した。
「ケムシが山盛りだ・・・」
灰色をした体長3cmくらいのケムシが何故か地面に2匹どころじゃなく集合し、春でもないのにうごめいていた。
何か、冬眠か何かの準備なのだろうか、僕は去年にも似たようなものを夜に見ていて寒気がしたのを思い出した。
その日は2箇所でそんなことが起きていた。
このことで僕をさらに滅入らせるのは、何故か彼らが人に踏まれやすいところに集合している点である。
一箇所は散歩する人がよく通る開けた道、もう一箇所は木でできた跳び箱遊具の着地点だ。
そういえば去年見たのはコンクリートで舗装された歩道だったっけ。
「何だお前、そんなのが怖いのか?」
しゃがんでケムシをじっと見ていた僕に話しかけたのは、初老の男性だった。
(楽したいのがバレバレだが、10月22日へ続く)
フェアリーテイルその2
(10月17日からの続きなんで。)
「おーい、久しぶりー!」
「何だ、お前か。」
「買っちゃったよ。」
「何を?。」
「完全音声入力を再現したパソコンだよ。」
「そんなんあるのか。」
「どんな場合でも、どんなエラーが出ても音声で対応できるんだ。」
「ふーん」
「でも、腑に落ちないところがあって。いまいち効率がよくないんだよなー。」
「何の?」
「文字とかを打ち込むスピードだよ。確実にキーボードよりも早く喋るし、機械も正しく判断してくれてるんだけど。」
「・・・そのパソコン、キーボードついてなかったか?」
「それが、ついてるんだよ。音声で全部フォローできるのに。」
「・・・お前、妖精の話、知ってるか?」
「・・・?」
「妖精がある家に住み着いて、夜中に色々な仕事をしてくれる。そのおかげで住人は大助かりっていう話。ヨーロッパなんかでよくあるおとぎ話だ。」
「うーん、聞いたことあるかも。」
「お前、いつかキーボードと人間の指の大きさの相関性について話してたよな?」
「うん。」
「ひとつ教えてやる。」
「・・・」
「人間の指の大きさと妖精の足のサイズは、ほとんど同じらしいぜ?。」
フェアリーテイルその1
「パソコンのキーボードって、何でこんなに打ちにくい配置なんだろ?」
「日本人だからじゃね?」
「でも、アルファベット順ってわけでもないよ?」
「それな。何か昔、まだコンピュータの性能が低かった時代、わざと打ちにくいようなキー配置にして、人間の打ち込むスピードがコンピュータに勝らないようにしたっていううわさがあるぜ?」
「きみ、それ知ってて日本人どうこう言ったんだ・・・。」
「その配置が結局残ってしまったらしいんだ。」
「ところで今、パソコンって小型化されてるよね?。ノートパソコンとか。」
「何だ?。いきなり。」
「あれって、実はこれ以上小さくならないらしいよ?」
「何で?」
「コンピュータなわけだから、どうしても入力が必要だよね?。そうなると、キーボードの場合がほとんどだから、ボタンもそこそこの大きさじゃないとダメでしょ?。人間の指の大きさが律速になるんだよ。」
「ふーん。」
「モニタは角膜に直接投影とかでコンパクトに、記憶装置はどんどん小さくなるかもしれないけど、当分の間はキーボードのせいでこれ以上小さくならないんじゃないかな?」
「でも、脳に電極差すとかは無理だろうけど、音声入力の実用性を考えるだけでも小さくなりそうだけど?。家庭で使うような用途のパソコンだったら、十分だと思うけど。」
「そっかー。それじゃ大きさはさらに小さくできるね。」
「まぁね。でも、小さければいいってもんでもないぜ?。」
抑揚のないまま、10月18日へ続く。
石の運命と、耐えない盾
「ちょっと、ここにいさせてもらっても構わないですか?。」
目の前に現れた、いかにも天使っぽい天使が僕に言った。
「君、天使でしょ?。何しに来たの?」
「・・・」
「別に僕の部屋で休まなくてもいいでしょ?」
「いや、ここにいさせてください。たった一日ですから。」
・・・
「君は明らかに見てくれが天使だから、細かいことは言わないよ。僕は、死ぬんだね?。」
「はい。一日後、この場所で死にます。突然建物が倒壊するんです。」
「正確には、どのくらい?」
「あと、23時間4分です。」
ロケット打ち上げ残り時間みたいだ。
けど、僕に届くのは打ち上げ成功のニュースではなくて死なのだ。
朝、天使のような寝顔に別れをつげ、いつもの通勤が始まる。
「明日、世界が破滅します」というニュースが4月1日以外に流れたとしても、自分はその一日を何事もなく、普段どおりに過ごせるだろう。
僕はよく、そんなことを考えていた。
世間も、おそらく映画などで見られるようなパニックなんか起こさないんじゃないかな?。
人間、どんな場面でも色々考えるから、そうそう自分をさらけ出したりはできないもんね。
だから、僕は天使から聞かされた事を十分に理解していても、その日を普段と変わりなく過ごすだろう。
だから、僕は普段どおりに帰路につくだろう。
だから、僕はその瞬間でも安らかな気持ちだろう。
僕にとって今、生命よりも最優先されるのは、もう一度天使の寝顔が見られるかどうかなのかもしれない。
石の運命と、その矛先
「ちょっと、ここにいさせてもらっても構わないですか?。」
目の前に現れた、いかにも死神っぽい死神が僕に言った。
「君、死神でしょ?。何しに来たの?」
「・・・」
「別に僕の部屋で休まなくてもいいでしょ?」
「いや、ここにいさせてください。たった一日ですから。」
・・・
「君は明らかに見てくれが死神だから、細かいことは言わないよ。僕は、死ぬんだね?。」
「はい。一日後、この場所で死にます。直径30cmの隕石が命中するんです。」
「正確には、どのくらい?」
「あと、23時間4分です。」
ヤフオクの残り時間みたいだ。
けど、僕に届くのは落札を知らせるメールではなくて死なのだ。
朝、死んだような寝顔に別れをつげ、いつもの通勤が始まる。
「明日、地球に火星人が挨拶にきます」というニュースが4月1日以外に流れたとしても、自分はその一日を何事もなく、普段どおりに過ごせるだろう。
僕はよく、そんなことを考えていた。
世間も、おそらく映画などで見られるようなパニックなんか起こさないんじゃないかな?。
人間、どんな場面でも色々考えるから、そうそう自分をさらけ出したりはできないもんね。
だから、僕は死神から聞かされた事を十分に理解していても、その日を普段と変わりなく過ごすだろう。
だから、僕は普段どおりに帰路につくだろう。
だから、僕はその瞬間でも安らかな気持ちだろう。
僕にとって今、生命よりも最優先されるのは、この前僕のソーセージを奪った米山を、どのようにして部屋に呼び、愛用の椅子に座らせるか、ということだろう。
適材適所
乾季の続く中、今年も魃(ひでりがみ)へ供物をささげることとなった。
雨が降らなければ、村が全滅してしまうためである。
村長である私は、いけにえとして若い娘を村の中から選び出さねばならない。
つらいことだが、背に腹はかえられない。
村長「いけにえとして、君たちの中から一人だけ選ばねばならない。」
きく「そ、そんな・・・。」
まさ「しかたのないことです。」
みよ「覚悟しております。」
村長「私には、君たちからいけにえを選ぶ権利があるようだが、同時に君たちの話をいくらでも聞く義務もある。何か、これだけは言っておきたいということはあるかな?。」
まさ「選ばれても構いませんが、家族のことだけが心配です・・・。」
みよ「選ばれたなら、きっと魃さまの怒りを鎮めてみせます。」
きく「もっと、村共通のラー油の容器は清潔にするべきです。」
村長「けってーーーーーい!!」
静けさに気付く
最近、滅入る事件ばかりだ。
子供が傷つけられる。
大の大人が子供じみた行動をとる。
または天変地異。
物が全てを制す社会。
こんな事件が起きる前兆が無かったわけではない。
教育のあり方や、環境問題に取り組んできた人たちの中には、こんな未来を予想し、危惧していたものもいるのだ。
しかし、その声は朝もやのように薄く、はかない。
私は、ある場所に向かって歩きだす。
確認を、するため。
そこは、木がまばらに生えた小高い丘。
草もひざ程度までしかない。
近くに大きな湖があり、悪くない。
ちょっとした自然公園のような場所だ。
だがあまり人はいない。
守られているのだ。気付かれない程度にではあるが、かなり厳重に。
月夜の晩、私は丘から湖を見ていた。
正確な時間は分からないが(この場所に貴金属を身につけて来てはいけないのだ)、たぶん2時頃だろう。
呼吸を整え、ゆっくりと丘を降りる。
すると、目的地が見えてきた。
ぼろぼろの百葉箱だ。
ペンキなどで塗られたりはしていないが、ずいぶんと長い間、あるものを守り続けてきたのだ。
私は一礼して扉を開けた。
そしてため息。
「思ったとおりだ。」
「誰だ。警鐘にコンクリートを詰めたヤツは。」
20%の反逆者
「人間そこそこ忙しくないと、アイデアなんて生まれないものだって、何かの本で読んだことがありますよ。」
-「私にも思い当たる節があります。いきなり時間を与えられて、何か考えろなんていうのは、特に年配の日本人は恐怖すら覚えるんじゃないでしょうか。」
「なんで、私は何かをしながら、一方では違うことを考えるようにしているんですよ。」
-「なるほど。」
「最初は効率が良くありませんが、慣れてくるとメモ帳が手放せなくなります。」
-「同時に複数のことができて、しかも納得いくものが両方で生まれるとは、いいですな。」
「近頃なんかは、ほぼ何も考えずに、体が勝手に2つのことをやってしまっていたりもしますよ。それができると、さらにもう1つ考え事を増やしたりね。」
-「すごいですね。」
「いやな仕事に関する考え事なんかがあると、もう一方の考えに意識を飛ばします。すると、いつの間にか終わってるんですよ。これも、うまくいけば同時に5個くらい、いけますね。」
-「でも、何か病気っぽくないですか?」
「うそ!?(うそ!?)(うそ!?)(・・・。)(うそ!?)。」
誤差への自動調節
友達「俺、すげーこと知っちゃったよ。」
7942「えっ、なに?。」
友達「高速道路にETCっていう、お金を自動で払ってくれる装置あるじゃん?。あれ、安全に通過できる確率、五分らしいぜ?。」
7942「まじ?!?。」
友達「ウルトラマンセブンっているじゃん?。あいつの必殺技、アイスラッガーって、アイ・スラッガーじゃなくてアイス・ラッガーなんだって!!。」
7942「じょうだん?!!。」
友達「野球選手に伊淵っているじゃん?。あいつの球種って、カーブとフォークとシュールなんだって!!。」
7942「うそ?!?。」
翌日、地球の新聞には高速道路にあふれたオープンカーが載せられた。料金所付近は鉄片と血にあふれていた。
「白昼の惨劇。なぜ?、ETCのバーが上がる確率が五分!?」
同じく地球のスポーツ新聞では伊淵がノーヒットノーランを達成したことが載せられた。
監督「今日の伊淵はシュールのキレが違った。よく落ちていたよ。」