石の運命と、その矛先

「ちょっと、ここにいさせてもらっても構わないですか?。」
目の前に現れた、いかにも死神っぽい死神が僕に言った。
「君、死神でしょ?。何しに来たの?」
「・・・」
「別に僕の部屋で休まなくてもいいでしょ?」
「いや、ここにいさせてください。たった一日ですから。」
・・・
「君は明らかに見てくれが死神だから、細かいことは言わないよ。僕は、死ぬんだね?。」
「はい。一日後、この場所で死にます。直径30cmの隕石が命中するんです。」
「正確には、どのくらい?」
「あと、23時間4分です。」
ヤフオクの残り時間みたいだ。
けど、僕に届くのは落札を知らせるメールではなくて死なのだ。
朝、死んだような寝顔に別れをつげ、いつもの通勤が始まる。
「明日、地球に火星人が挨拶にきます」というニュースが4月1日以外に流れたとしても、自分はその一日を何事もなく、普段どおりに過ごせるだろう。
僕はよく、そんなことを考えていた。
世間も、おそらく映画などで見られるようなパニックなんか起こさないんじゃないかな?。
人間、どんな場面でも色々考えるから、そうそう自分をさらけ出したりはできないもんね。
だから、僕は死神から聞かされた事を十分に理解していても、その日を普段と変わりなく過ごすだろう。
だから、僕は普段どおりに帰路につくだろう。
だから、僕はその瞬間でも安らかな気持ちだろう。
僕にとって今、生命よりも最優先されるのは、この前僕のソーセージを奪った米山を、どのようにして部屋に呼び、愛用の椅子に座らせるか、ということだろう。

「石の運命と、その矛先」への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    すばらしい。
    食べ物の恨みは、けっこう・・・

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ソーセージって、むちゃくちゃおいしい部類の食べ物だしな。

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