僕らが旅に出る理由・1

人に尋ねられたとき、知人はこう言った。
「京都の旅行で、一番面白かったことはなんですか?」
「朝、ホテルで鬼太郎を見ていたんですが、その中で猫娘がキャミソールを着ていたところですかね」
また、その知人とともに旅行した人は、こんなだった。
「なんか写真撮りました?」
「ええ。知らない人んちにいた、コウガイビルを何枚か」
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知人とその同行者、そして彼らに質問した人は残念ながら全て僕なわけですが、旅行というのは、ちゃんと予定を立てねばならない。
少なくとも当日にるるぶを購入すべき。
さもないと、上記のように清水寺がコウガイビル扱いだ。
とはいえ、個人的ではあるが、興味深いものを探し出している自分は偉い。
時代のニーズに従順する猫娘は面白いし、コウガイビルはどうポジティブに見ても宇宙生物だ。
そして僕には、予定はないが理由はあった。
京都には以前、2回だけ来たことがある。
それに起因する、理由。
明日。

玉虫厨子

こないだ、うまいこと言ったらしく、その場が盛り上がった。
夢の中の話なので、恐縮なのですが。
夢の中の僕は、誰かにこう言っていた。
「お前、玉虫厨子かよ!!」
なんかウケていた。
でも、そのほかの事は思い出せない。
ここで気になるのが、僕が「玉虫厨子」ツッコミを、どんなボケもしくは事象に対して放ったかという点である。
まっさきに思いつくのは二世タレント的なことに対してだが、どうも違う気がする。
実際、夢の中の誰かが、玉虫の羽を体に付けるといったことをやったのだろうか。
どんなボケだ、それは。
それとも、レアなトレーディングカードに対してか。
・・・うーん、わからなくなり、眠たくなってきた。
なんでも「玉虫厨子」でツッコめる気がしてきた。
蚊にたくさん刺された様子を「玉虫厨子」と表現したかも。
ウェディングケーキのことかも。
DVDか?。
「今朝、目覚ましがどうやっても止まらなくてさぁ」
「お前それ、聴覚的な玉虫厨子かよ!!」
・・・解決しない。
しかし、違う観点から考えてみるといいかも、というのがひらめいた。
僕らが「玉虫厨子」をどう思っているのか、を探るのだ。
たぶん、そこへんをうまく拾ったはず。
夢の僕。
例えば、教科書で紹介された「玉虫厨子」を、僕らは単にスルーしたか。
「よく出来てる」くらいで済ませたか。
違うはず。
美麗、虫の羽、何千匹・・・。
奇妙な感覚を持ったに違いないのだ。
明日。
昔の人、玉虫厨子つくっちゃったか?って感じに。

若大将

「加山雄三、ついにパチンコデビュー」
最近、情報番組でやってました。
ここで気になるのは「ついに」部分だ。
なんだその高み。
「とにかくパチンコデビューがしたくて、これまで頑張ってきました。」
加山雄三がそんな人だったなら、我々も手放しに喜ぶのだが。
だが、あくまで憶測だが、彼にそのような目標はなかったのではないか。
なぜなら、それが目標なら、アプローチの仕方が変すぎるからである。
試しに、パチンコ機種の名前を考えてみよう。
パチンコデビューが目標で、それを目指しまくったなら、念願がかなったときのパチンコ機種名は
「CR加山雄三?777でワハハのハ?」
とかなっただろう。
ちなみに「ワハハのハ」は、出演したパチンコ列伝Vシネマのタイトルである。
だが、実際のパチンコ機種名は、こんなだ。
「CR加山雄三?海とエレキと若大将?」
変である。
言い換えると、基本的にパチンコデビューを目指した人生ではない。
どちらかというと、海の男を目指し、若大将を目指した人生だ。
そんな人生を、どうにかしてパチンコに結び付けようとすると、こうして変になる。
海とエレキと若大将。
伝導率高すぎである。
こうして邪推してしまうと、冒頭の「ついに」。
どうやら「高み」の意味の方ではない、「人気低迷してんで脱ぎました」的な「ついに」であるとも取れる。
どうにも「ついに」の含蓄っぷりには、困るね。
ただ、テレビで若大将は「しあわせだなぁ」と言っていた。
じゃあ、特に問題はないですな。

抜け殻と紅葉

アニメ映画「マインド・ゲーム」のラスト近くで「Viva!」という曲が流れる。
サウンドトラックで聞くまで気付かなかったのだが、この曲にはところどころにセミの鳴き声が入っている。
やはり、セミの鳴き声なんだな。
セミの鳴き声は、単に虫のなすこと、というだけではなく、何かしら人間、特に日本人とセミを食す文化圏の人、素数年齢の人あたりに訴えかけるものがある。
ごめん後半うそ。
夏。
空気と同じくらい密に周囲に存在している、セミの鳴き声。
そのときは火で腐海を焼き払いたくなるくらい腹が立っていたとしても、その声が少なくなってきて、夜に一声だけ聞こえたりして、カラスに追われているセミがビービー言ったりして、セミが道に転がっていたりして、つぶれてたりして。
腹が立っていたことも忘れ、なんだか心に重く来るものがあるだろう?。
また、セミの鳴き声はもはやデフォルトで、むしろそればかりしか聞こえないことは静かだ、とはよく言われるところ。
セミの鳴き声は、我々の中にかなり刷り込まれているに違いない。
そのためか、童謡「虫のこえ」でも、その感慨は見事にとらえられている。
*****
あれ松虫が 鳴いている
ちんちろ ちんちろ ちんちろりん
あれ鈴虫も 鳴き出した
りんりんりんりん りいんりん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえ
*****
かかったな。
セミいねーよ!!。
2番の歌詞にも、いねーよ!!。
そして虫のこえ。
特におもしろくねーよ!!。
セミが秋の虫でなくて、ざんねんだったな!!。

待合室

駅の待合室近くを、親子連れが歩く。
連れとはいっても、親は子供を自由に歩かせていた。
ふと、その子が待合室に入りそうなそぶりを見せる。
それを見た母親が言う。
「たっくん。そこ入ったらばいばいだよ。」
たっくんは、これからどのような人生を送り、どのように待合室と接していくのであろうか。
ともあれ、地獄待合室の誕生である。

教育

スリッパホルダーからスリッパを手に取る。
そのスリッパを床にほうる。
片方がひっくり返ってしまった。
もう片方を履き、そのついでにひっくり返った方を小突く。
ひっくり返ったままだ。
少し強めに小突く。
ひっくり返ったままだ。
足先を引っ掛けて、元に戻そうとする。
スリッパは1mくらい先に行ってしまって、やはりひっくり返ったまま。
こつんと、蹴る。
ひっくり返ったまま。
さらに、蹴る。
まだひっくり返ったまま。
そうして、僕は廊下の終点まで来てしまった。
結局、スリッパはひっくり返ったままだった。
かがんでスリッパを拾い上げ、上下を直して履く。
「・・・教育ってのは、むずかしいものだな。」

裏目ドリブン

運転手が、事件に関わりのある話をする。
主人公が、助手席からそれを注意深そうに聞く。
そんなシーンのあるサスペンスがありました。
でも、
窓の外を流れる風景は、普通乗用車の車高ではない。
助手席から運転席を見るシーンでは、その車を追い越していく、いくつもの乗用車が見える。
すごく、追い抜かれている。
これでは、視聴者としては事件の真相などよりも「あー、トラックの荷台とかに乗せた車での撮影だなー」ということが気になってしまい、事件は迷宮入りである。
「極力リアルな映像にしようと。よかれと思ってやったのに・・・。」
トラックの荷台での撮影をとがめているわけではない。
しかし、本来表ざたにはならないはずのそれが、より意識されてしまうことになった。
裏目に、出てしまった。
電車にて。
開いてる席の向かいの席に、ミニスカートの女性がいました。
なんとなくそこに座ることがはずかしいので、違う場所に移動することに。
結果、誰かに上着を思いっきり下に引っ張られてしまったんじゃないかと思わせるような服装の女性の後ろで、身動きできないことになりました。
やったね!!
いや。裏目に、出てしまった。
なぜ、裏目に出てしまうのか。
何か、物事を裏目にしてしまう何かが、裏で動いているのだろうか。
とここで、今の「やったね!!」ではないが、周りから「あー、裏目に出ちゃったね」と思われることに対して、当の本人の考えや意図は、全くそれとは別のものである、ということに気付かされる。
電車の僕にしろ、周囲は「あいつ、結局すごい背中の人の前に行っちゃったじゃないか」と思っていたとしても、その人たちには僕の考えを確定することはできない。
心の中でよだれを垂らしながら「やったぜ背中。露出。げへへ」となっていないとは、誰も言えないのだ。
冒頭のドラマスタッフだって、実は視聴者に「ぎりぎりトラック荷台の件を気付かせるような映像」を目指していたかもしれない。
監督「見ろ。撮影中で速度が遅いから、後続車にばんばん追い越されている感じに撮れてるぞ」
スタッフ「やりましたね」
そうなると、こちらの「あらあら、裏目ね」という感想が、彼らにとっては最高の賛辞ということになる。
となると、そんな簡単にスタッフを喜ばせたくはないため視聴者としては、気軽に「裏目だね」と言えないことになる。
裏目に、出てしまった。
発言をするときは、よーく考えるべきだ。
こういうときによーく考えて行動しないと、それは相手の思うつぼになりがち、ということであり、これからの人生、軽犯罪に巻き込まれる可能性が高い、とも言える。
ところで今回、電車の話以降はいらなかった。ちょっと短いから、無理に入れたのだが、面白くないね。
・・・、・・・・・・。

無弦乃奏器

今、思ったんですけど。
自動ドアって、ありますやん。
あれな、上のセンサーから光が出て、その光の反射具合の変化で人がきたかを判断して、開く仕掛けのヤツもあるらしいで。
そんな装置をずらりと横だか円状に並べて、変化したら音が出るようにすると、楽器になりそうじゃない?。
また、ある波長の送信装置と受信装置を対にして、やっぱり並べて。
遮って受信装置が波を受けられなかったら音が出る、とかも面白そうじゃない?。
弦のない弦楽器みたいで。
もうあるかも。
だけど「もうあるかもしれない楽器を探す」って、難しいし。
テルミンっぽいかもだけど、そんなこと言っても、困るし。
何が困るかって。
テルミンがどんなものか、いまいちわからないとこだし。

引き分け言い分 はらたつやつ

神「お互い考えた、腹立つやつを発表してもらいます。」
A
「オセロをしている。相手のターンですさまじく自分のコマがひっくり返されてしまうことが確定していて、それでも自分の番で取ったコマをひっくり返すとき。」
「これ、どうせすぐ変わるに決まってんだけど」とぼそぼそ言いながらコマをひっくり返すやつ。
B
「将棋をしている。ほぼ自分の勝利が決まっていて、ここで最後の一押しのとき。」
「その決定打となるコマをさすとき、そのさすべき場所より少し前に、音を立ててコマを叩き置く。」
そのあと、にやりとして、相手を見ながら、ゆっくりと盤上を滑らせて、所定の位置にコマを移動させてくるやつ。
神「お前ら何言ってんだかわかんね。even!!。」