おいしいコーヒーのいれかけかた

「入れたばかりのコーヒーすらあった」
こういう文章に出会ったのはいつ頃だっただろうか。
恐がりのくせして「世界のミステリー大百科」みたいなやつを見たときか。
あるいは怪奇小説か、ジョジョか。
いわゆる「急に人がいなくなりました」を表現しているこれは、どれほどに当初の僕をビビらせただろうか。
なんせ「入れたばかりのコーヒーすらあった」わけで、それは「いなくなる」要素が少なくとも本人には全くないことをすばらしく端的に表している。
故の、意識せざるを得ない、よくわからんものの介入。
なんなんだ介入。
コーヒーも飲ませてもらえないくらいの、急の介入。
そのスイッチを知らぬ間に押してしまって、自分も近いうち急にいなくなるんじゃないか。
そう思うと、せめて自分のいた形跡でも残そうかとコーヒーをばんばん入れてしまうわけである。
「たくさんの入れたばかりのコーヒーすらあった」
最初のほうのはもはや「入れたばかり」とは言えないし、「すら」じゃないだろう、「すら」じゃ。
次回
「急に人がいなくなりました」を違う表現でやってみよう。

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