始原発音

ターザンが「アーアアー」と言いながら楽しそうにしているところからもわかるように、「ア」は極めて始原的な音(言葉)である。
よって、ヒトがはじめて発した言葉は「ア」であることは間違いないだろう。
「ア」
ヒトは、何かのタイミングをトリガーとして、始めて「言葉」を発することができたのである。
考えるに、言葉を発することのない、要はしゃべることのない昔のヒトというのは「しゃべられないために何かを伝えるのは苦手だが、それも特に問題ないので、とりあえずそのままにしていた」のではないだろうか。
いびきや咳などの音は出るが、まさかそれを情報伝達の手段に利用するなんて、考えてもいなかったのだ。
そんな当時の人達に「ア」を言わせるトリガーとなったのは、やはり少しの驚き事象だろう。
故意に生まれたものではないのだ。
枝の先にどんぐりをつけて、たき火であぶる一家。
※なんと!!
ヒトはしゃべることよりも火を使うことのほうが早かったのである。
なんでか。
一番年下の子がはしゃいだので、枝の先のどんぐりが火中へと。
そのとき、はじめてヒトは言葉を手に入れたのである。
家族は、確かに聴いた。
「あ」と。
家族は大騒ぎだ。
なんだ、今この子から聞こえたものは。
なんだか、今起きたことがすばらしくわかるぞ。
家族はこぞってどんぐりを火に入れただろう。
「ア」を手に入れた者もいただろうし、心の中にぽつんと生まれたが、それが口から出てこない、そんなもやもやした気分の者もいただろう。
だが、とにかく「ア」は誕生した。
そうしてヒトは、いままで胸をどんどこ叩く日々から、ウホウホ言う日々になったのである。
ということで、ちょっとした驚きなどで「ア」と発せられるのは、ヒトの成り行き上、至極当然なのであり、そこで「おっと」や「オゥ」と発するのは、ちょっと違う。
斜に構えているのである。
「おっと」という日本人も、「オゥ」という外人も、おそらく斜に構えている。
「一歩、すすんで、オ」
そんな考えを、無意識に持っているはずだ。
彼等を、本当にちょっと驚かせれば、「あ」というに違いない。

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