なぜか台北 その26

【あらすじ】
台湾旅行。
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松山駅で行く先を決め、心落ち着けたのまではよかったのだが、結局切符の買い方が分からない。
字が読めないというよりは、なんかボタンの数が多いのだ、日本のより。
確かに、それらはカテゴリ分けされているらしく、さらに上部のカテゴリを選択すると次のカテゴリ部分がひかり、ここを選んでねという優れたIFを示してくれる。
しかし困るのが「自強」というボタンが象徴的なカテゴリのところで、ここが何を示すものなのかが分からない。
何なんだ「自強」。
僕は小声で「なんなんだじきょう」と何度も口にしたがもちろんそれで何かがわかるわけでもなく、ただこのカテゴリで一番読みやすいのがこれだという理由のみで、自強の樹林行き切符を購入してみた。
切符は日本のそれと同じような大きさで、内容もしかり、のよう。
ともあれ切符を手に入れた僕は電車乗り場に向かい、また困る事になる。
どこのホームに「樹林」行きの電車は来るのだろうか。
松山駅には4つほどのホームがあり、その見てくれはきれい。
しかし松山駅初心者の僕としては4つもホームはあってほしくない。
行き先看板を見ても矢印などの分かりやすい表記は見つからず、僕はホームを行き来するメッセンジャーにようになってしまっていた。
もちろん、ホーム間の誰に対してもメッセージを告げ合うことのない、白紙のメッセンジャーである。
彼は、思いあまって駅員さんに切符を見せる。
白紙に「あっちのホームだよ」と初めて文字が入る。

なぜか台北 その25

【あらすじ】
台湾旅行。
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松山駅にて、切符を買うのが分からない。
混んでいないのが幸いなのだが、それでも長い間、券売機の前で固まるのもいやだ。
あまり観光客、ジャパニーズ風を出すのもいやだ。
できたばかりらしい松山駅のぴかぴかな壁面に、狼狽した僕の顔が映る。
腰に手を当てるふりをして、脇を乾かす。
一旦券売機から離れ、まずどんな路線があり、どういう駅が点在するのかを確認する事にした。
ここ、松山の次は台北らしい。
どうやら一駅分くらい、2時間弱かけて歩いていたようだ。
なんとなくそれが目についたので、ここは松山駅から台北方向に行くことにする。
その先をみると「板橋駅」。
今の状況ではもう声すらかけたくなるくらいの親しみのある漢字もあったりする。
しかしわざわざ台湾の板橋に行く事もなかろう。
そこからまた少し進むと「樹林」という駅があるようだ。
これは何だか良さそうだ。
僕は生き物系が好きなので、何となく自然の豊かそうな、田んぼのありそうな。
そんなこの駅に親しみを覚えた。
「樹林」に行ってみる事にする。
田んぼがあれば、水生昆虫を探せるかも知れない。
ただ、樹林は路線図を見る限り、数駅程度しか離れていない。
我ながら保守的、冒険心がないなと思うが、一方でパスポート期限が切迫している、らしいこともある。
電車で3ヶ月と3日かかる場所へは行けないだろうが、とにかくすぐ戻って来れること。
そして自然を優先した形なのだ。
もし、電車で3ヶ月と3日かかる場所なのだというのなら、僕はここにパスポートを置いていくね。

なぜか台北 その24

【あらすじ】
台湾旅行。
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朝の台北付近を歩いている。
子供の手を引く紳士の標識を見たり、体中央に向かう放射状のオレンジ色が目立つ蝶を目で追ったりする。
消防局という建物がある。
消防署だろうか。
まだまだ歩く。
暑い。
バイクの二段階右折らしき標識を見つける。
小学校を見つける。
つまり、あまり日本と差異がない。
ならばつまらないのかというとそうでもなく、新しめのものに押されるようにいる建物や妙に達筆な漢字の看板。
単に初めての場所ということもあり、案外楽しい。
街路樹や民家で見かける植物はやや南国性を帯びており、ここでの南国性とは以下の通り。
・つるっぽいものが絡まっている
・葉がしゃっとしていて、細い
・幹からねじれている
「台北道場」というでかい建物のそばで、ついに駅を見つけた。
松山駅らしい。
とにかく駅でよくわからない場所へ行ってみようという魂胆だった僕の、本日の目的のひとつである。
それがかなった。
なるほど、台湾で駅は「立へんに占」と書くようで、迷ったらこの字を目指せばいい。
駅は最近できたのか、きれいでとんがっている。
さて駅を見つけたからには何か食べようかとうろついてみる。
ここにも夜市があるようだが、今は朝。
昨夜の余韻のせいもあるのだろうか。
早朝とは思えぬねばっこい空気が路地に流れる。
もちろん店はひとつもなく、目立つ大きいゴミは落ちていないが、見えない何かが例のねばっこさを出しているような雰囲気。
食べ物が無い。
その夜市の入り口付近にはお寺らしき絢爛な建物があり、地元の人がお勤めしている。
食べ物が無い。
いやあるかも知れないが、それは供物だろう。
駅から少し離れた路地を沿う形でさらに進んでみると、また学校があり、その対岸に何件か飲食店を見つけた。
しかし店員がいない。
あるいはけだるそう。
あるいは店員ではなさそうなおじさんがけだるそう。
以上の点により、なんとなく注文しづらい。
空腹を胸に、駅へ。

なぜか台北 その23

【あらすじ】
台湾旅行。
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午前6時。
今日は台北は休日らしいのだが、あんがい人がいる。
バイク達の向く方をたどれば都市、上手く行けば駅も見えてくるのではないだろうか。
あまりにも「台湾の駅のイメージよくわからない」という不安があることから、なんとなく朝食を逃し続けていた僕は、駅を発見したら、その周辺で何か食おうと予定変更。
ホテル付近での朝食は明日にでも行おうか。
飲食店ゾーンを抜けると、きれいに舗装されたビジネスゾーンのような場所に出てきた。
もしかしたら一駅分くらいは歩いてしまったのだろうか。
日差しが強くなってきた。
日焼け止めを塗る。
ふと、公園に見慣れないポスト状のものを発見する。
どうやら「衣類回収」を目的としたものであるらしく、なんだユニクロか何かかと思ったがそうでもなく、一体何なのだろうとその前で箒を操る婦人に聞いてみたいところだが彼女は懸命に箒を操り、話しかける余地どころか写真を撮る余地すらも一日本人には与えない。
それが衣類回収ポストの全容である。
衣類回収ポストのくだりから、どのくらい歩いただろうか。
道路案内に「市民大道6段」という、すごく強そうな何かが頻繁に登場するようになってきた。
夢見勝ちでなく、目的無きまま歩き過ぎていた僕は、それ以上「強そう」イメージにとらわれる事なく道を進む。
それが功を奏したのか。
子役を大々的に広告した劇団の看板を見つける。
お前、誰だ。

なぜか台北 その22

【あらすじ】
台湾旅行。
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僕は、お酒を飲んだ次の日は非常に早起きで、ちょっと老人じみてていやだ。
しかしたいがい、お酒の次の日は休みなので、休みを少しでも活用したいと思っている点ではすてきである。
台北2日目は5時くらいに目が覚め、しかも地震があったものだからより目覚め、さて本日はどうしようかとシャワーを浴び、特に何も思いつかない。
ガイドブックも、ひとつも見ていない。
何が何やら、ひとつも分からない。
ただ、朝食はホテル周辺のどこかの屋台で取ろうかと画策していた。
そして、そのまま駅へ向かい、知らない駅で降りてやろうと思った。
まずは朝食である。
散歩や夜市で観察した限りでは、このホテルは片やブランド店、片や庶民的なお店の狭間に存在しており、これまたすてきである。
そのうち、早朝からやっていそうな店をさらっていこうという魂胆。
何のくもりもなく、狙撃しやすそうなシャワー室でシャワったのち、空腹のままホテルを出る。
当たり前なのだろうが、こんな早朝から働いているホテルスタッフは大したもので、市街にはランニングをしている人もいて、大している。
朝は大した人が多い。
昨日見たごみか幽霊かはなくなっていた。
ホテルを出て左側へ向かうとそうかかる事もなく飲食店がずらりと並ぶゾーンに突入する。
道路は、少しコールタールに戻ってしまったんじゃないかと心配になるくらいの粘度、湿気をはなち、靴底を離さない。
開いているのかどうかも分からないが、地元の人らしき人が外に座っている屋台。
まだ下ごしらえの準備中らしいおばさん。
隙間のあるのが罪なのかと思うくらいに、一定区間を埋め尽くす外出し看板と、何かおいしそうな雰囲気を持ってしまう要素がてんこもりである。
とはいえ、浮かれてばかりも行かない。
この時点でどこにどういう駅があるのかも分からないので、歩きながらそれも探さねばならないのである。

なぜか台北 その21

【あらすじ】
台湾旅行。
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夜市は非常に楽しかったが目的の帽子はなく、豆腐ようも食べずじまい。
ホテルの場所に自信がなかったのでみんなが帰るタイミングで切り上げとなった。
奇妙な果実という、ジャズ的あるいはMP上限増えそうな食べ物以外を夜市で食べなかったため、何となくお腹がすいている23時30分。
周辺にはコンビニが数件あり、その点はどうにでもなる。
一旦部屋に戻った後、一人で外を出歩いた時、空港で話題になった「このホテルが幽霊ホテル」という話を思い出した。
なぜ思い出したかというと、ホテル前の広場ベンチに何かが置いてあったからだ。
一見、ゴミを入れた袋みたいなのだが、見ようによっては首のない人にも見え、少し驚いたのだ。
確か、昼間ここでは掃除をしている人がいた。
そのゴミのような気もするが、ゴミをベンチの上に置いていくだろうか。
そもそも人にも見えるくらいだから、かなりの大きさなのである。
何よりも、夜とはいえメガネをかけてよーく目をこらしているのに、それが何なのかがわからないのである。
だが、お菓子を見繕うとしている人間にとって、それはあまり関係がない。
興味がない。
こちらに仇をなさぬのであれば、ゴミとて幽霊とて一向にいてくれてかまわぬ。
お菓子が欲しいのだ。
お菓子を買ったり、人の部屋に行ったりして、再度部屋に戻る頃にはもう午前2時頃。
相部屋の、ビルマの竪琴の日本に帰らない方の人はもう寝ており、僕もスライムつむりのレベル上げを早々に引き上げ、それに習う事にする。
明日はいよいよ、予定の全くない1日だ。
全てを帽子と適当な行動で占めてみようと思う。
ベッドは思いのほか広くて間隔も開いており、僕なら両手を広げても誰にも迷惑かけない。
両手を伸ばして目を閉じる。
これで明日の朝を迎えられたら、「空を飛ぶ時、両手を広げて飛ぶタイプの人間」と名乗っても良さそうである。

なぜか台北 その20

【あらすじ】
台湾旅行。
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その夜市は台湾で中くらいの規模であるらしいのだが、そんなことは感じさせない人口密度。
2車線ほどの幅の道路両脇に店。
中央に店と、人が店にサンドイッチされた状態で歩いていく。
そんなに混んでいるのに、売っているものはアクセサリや衣類そして食べ物と、弁償フラグが大いにふるっているがおかまいなし。
お客さんは思い思いにジュースや食べ物を口にしながら夜市内の不快指数を上げている。
僕はカリスマに遅れないように付いていく。
あるところでは、よくわからないジュースを飲んだり、あるところではアクセサリを見たりしている。
僕は正直変な帽子を探すため、衣類店のマネキン上部ばかりを見ていた。
ハンバーグの生地のように濃密な空間を一通り抜け出した。
僕は要所にあった「豆腐よう」の店が気になっていて、それを食べたい気もしたが今日は暑い。
さっきジュースを買わなかった僕は、何か冷たいものを食べようと思いながら来た通りの逆側をさかのぼる。
するとフルーツを売っているおばあさんの店があった。
パイナップルやマンゴーが適当な大きさに切られて氷上に置いてある。
僕はこの手の店を、この夜市でいくつか見出していた。
そして気になっていた。
よくわからない果物の事を。
なぜか他の果実よりも幾分か高い金額を請求され、これは地元の人間ではない事がばれてしまったか。
変な帽子をかぶっているからかと残念に思いながらも購入。
そのよくわからない果実は、ちょうど小さいりんごのように見える。
購入の際、ノリのいい地元の人が僕に「タイペイアップル、ベリベリナイス」と言っていたところをみると、やはりりんごに近いものであるらしいこと。
そして地元の人間ではないことがばれてしまっていることがわかった。
程よい大きさに切られたそれを口に入れてみると、冷えたりんごのようでおいしい。
いや、むしろナシに似ているだろうか。
ほらこれ、変な果実だけどおいしいよと勧めてみると、周りの人は少し不安そうな表情。
そうだ、一応生水的なものの注意がなかったわけではなかったのだ。
これで他の人に迷惑をかけては悪いと、勧めるのも程々にしたのと同時に、期限切れを気にされる程度のパスポートのことを思い出す。
これで中毒なんかになったら大変だ。
いやしかし、普通にみんな食べてるじゃないか。
そんな考えが混ざった結果、僕はとにかく少ない時間でそれを食べ尽くしてしまった。
3秒ルールというのはどこから3秒なのかを考える必要もあるが、まずは心持ちが重要なのだから。

なぜか台北 その19

【あらすじ】
台湾旅行。
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ホテルで一息ついたのち、表でカリスマある人と合流。
夜市へ徒歩で向かう事になった。
それにしても、もう23時くらいだというのに、ホテル周辺含めて人が多い。
観光地というのもあるだろうし、誤った感覚かも知れないが、妙に安心する。
十数分ほど歩く。
すれ違う人は多いが周りに開いている店はコンビニくらいしかない。
人が多い事を除けば日本のどこかの都市と変わるところはなく、しかし暑い。
人ごみは、夜市が近いせいだろう。
夜市はこう、臆面もなく書いているが僕も台湾到着日に初めて知ったもので、話によるとさまざまなものや屋台が混在した、腸内フローラのような一角であるらしい。
夕食から時間がたっているため、少し満腹感があるが関係ない。
何か食べてみたい。
歩いていると、ふと横の路地が騒がしい。
そこが夜市であった。
周りとは一線を画す明かりの容赦なさと人ごみの多さ。
そんなフェスティバルが、歩いていて直前まで気づかない。
そのくらいの路地で行われているのである。
頭上からそのさまを見れば「血液ドロドロのイメージ映像」そして遜色ないものであろうし、前の人が進めば進まざるを得ない、そんな受動的移動がやはり液体を想像させる。
要はごった返している。
僕はここで変な帽子を探す魂胆であるが、それよりもまず人とはぐれない事を優先しなくてはならない。
もしはぐれたら、ホテルまでの道順なんて覚えていない。
ひとりこの流れをはずれ、致命的な夜を迎えることになる。
この人ごみなら、入り口ですぐ迷子にすらなれるだろう。
脳内出血である。

なぜか台北 その18

【あらすじ】
台湾旅行。
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通じないはずのケータイを覗いてみると、何やらショートメールが届いている。
お使いの地区どうこう、料金どうこうの内容。
どうやら、さきほどローミング設定をやってみようといじっていたのが影響しているようだ。
あとでちゃんと内容を見てみよう。
夕食を終え、バスでまたホテルへ戻る。
満腹感、疲労と暑さで、車内は片栗粉でとろみをつけたようだ。
バスガイドの黄さんが、これからマッサージへ行けるけどどうするか問うてきた。
このバスは男性のみである。
わざわざ黄さんは、いかがわしい系ではないことを念押す。
少し、日本人として恥ずかしい気持ちになる。
マッサージに興味がないわけではない。
首をぐねったとき、整骨院でマッサージをしてもらったことがあり、これは気持ちよかった。
だが、ただ疲れているからマッサージしてみたという体験は、日本でもない。
「疲れてはいるが、もまれるほどではない」
体は何も言ってはくれないので、あくまでその感じを捕らえようとすると、上記のような答えになる。
僕はまだ、もまれる域に達していない。
数人が下車するのを見届け僕は、彼らがもみしだかれるところを想像。
注文が多くないとよいのだが。
ホテルに到着したら、カリスマない僕は誰かについていって夜市を見に行く予定。

なぜか台北 その17

【あらすじ】
台湾旅行。
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正直なところ、台北での夕ご飯はそれほどのことは覚えていない。
どことなく観光客向けの食事どころだったそこでは、おいしいがバーミヤンとどこが違うかが分からなかった。
それはどちらを卑下するものでもなく、日本でおいしい料理を出すバーミヤンはすごいし、観光客用においしいものを出してくれたその台北の店も大したもの。
ただ、この「おいしい夕ご飯」で問題があったのだとしたら、僕が日本での「なんかアジアの屋台おいしそう」ダンガンロンパ。
違ったプロパガンダであろう。
夕ご飯の時、既に「屋台、何食べようか」という考えが胃を占拠していた訳である。
これでは100パーセントおいしさを感じる事はできない。
しかもここで僕は、慣れないお酒くばりをやってみて、お酒を誰かのズボンにしたたかこぼしてしまったのである。
紹興酒なので臭う。
僕はそのことですっかり落胆し、これまた食事どころではなくなってしまった。
本当に、慣れない事はしないものである。
でもそうなると、慣れない事はどこでやればいいのか。
少なくとも「お酒くばり」はこういう飲み会のところでしか練習できない。
自宅のテーブルにじゃがいもを置き、それ相手にアクアビットを振る舞っても意味ないわけで、今初めてじゃがいもでできてるお酒のことを調べた。