先入先出法

機会があって、ある絵本を読んでみた。
いやな癖なのだが、僕は本を読む時、最初に何刷のものであるかを確認する。
それで、これから読む本に対して態度が変わる訳ではない。
ただ、どれほど売れているのかによっては詰んだときの話題に一つにでもしようかという、ささやかな消費者気質である。
絵本も例外ではない。
裏表紙をめくってみると、気になる文言が。
「乱丁、落丁はお取り返します」
裏表紙をめくると、たいがいの本でお見かけする言葉。
しかし絵本である。
絵本の本編をめくってみると、やはり小さい子向け。
ちょっと本編と呼ぶには難しい。
脈絡の捉えづらいコンテンツが、1ページあたり1つ。
時間をかけて箸で切った卵の白身のように、そのつながりが見えない。
もし、この絵本に乱丁落丁があったなら、それに読者あるいは読者の親は気づく事ができるのだろうか。
それが気になったのである。
ページ数もふられていない。
そんな中、「1ページ目:もじゃもじゃ」「2ページ目:ぴかぴか」「3ページ目:えーんえーん」の「ぴかぴか」の順序が違っていたら。
なかったら。
その差異を見つけ出す事ができるのだろうか。
「もじゃもじゃよりも前にぴかぴかが来ているのはおかしい」
「もじゃもじゃのあとにえーんえーんはおかしい」
もちろん、おまえがおかしい。

枕音

寒いときに、人は「しーっ」っと音を出す。
そう言ったら、一体どれほどの共感を得られるだろうか。
しかし僕が見たところ、男性の多くが何か喋る直前に「しーっ」と音を出している。
例:
「しーっさぶっ!!。耳さぶっ」
言葉というよりは、息を吸うときに空気道(憶測)を舌で70パーセント(憶測)塞ぐことで発する音のようだ。
あれは一体何なんだ。
一方、この音は「許諾しがたいが、仕方なく認める」というときにも発せられることが、なんとなくわかった。
例:
「しーっそう、です、か・・・。では奥様は教会、旦那様は神社で式を衛星中継で同時進行、ということにいたしましょう」
このとき、「しーっ」と次の「そ」は交じった感じにすると、苦渋の選択感を出す。
この「しーっ」は、国語としては何詞になるのだろうか。
もしかしたらカテゴリがないかもしれないが、僕が思うにこの「しーっ」は「いきなり喋るのがためらわれるときに、最初に置かれるもの」であるような気がする。
いきなり「さぶっ」というと、空気道が寒さでやられてしまうのである。
すぐに「そうですか」というと快諾感を相手に与えてしまうのである。
「しーっさぶっ!!、しーっじゃああつあつのおでんを、後ろにいる手探りの人にとってもらいましょうか」
この場合、帳消しにできないだろうか。
「しーっ、しーっ」
この場合、彼が安心できる場所に連れて行くことはできないだろうか。

シー

ふと、「今だからこそ、未知の水棲生物に○○ッシーって付けまくろう」と思い立ったが、あいにく未知の水棲生物をあまり知らない。
例えば遠目でイルカが泳いでいることがわかったとき。
ぎりぎりイルカかどうかわかるわけだが、確信が持てない点では未知と言えよう。
そうなると「イルカッシー」になるわけだが、これはほぼイルカである。
あの「○○ッシー」のぞんざいさ。
あの甘美な雰囲気がない。
「ああイルカなんだね」
そう思われてしまう。
違うんだ。
「イルカッシー」なんだ。
考え方を変えて、場所狙いでいってみようか。
イルカを見たのが相模湾だったら「サッシー」になるわけで、一見イルカ臭はしない。
ただ、気になるのは昔有名になった「タマちゃん」の存在だ。
あれは、場所名でありながら「ちゃん付け」とかわいらしい存在。
なぜ「タッシー」じゃないんだ。
あまりにアザラシが目に見えたからだろうか。
ああもうあの役で石黒賢ってのがあやしいんじゃないのか、反町よ。
ごめんこっちの話。
ともかく、「○○ッシー」なんだ。
今度、知らない人に勝手にこれであだ名でも付けてみようか思う。

殺しのライセンス

おしゃれデカ、たかしの口説き文句ランキング
=====
1位
ガイシャの血液は、春の新色でしたか?
2位
あなたはアイウェアがないのに、逃げた人物が彼だと言いましたね?
3位
あっあなたがやったんですね。そうですね。では、この自白証明書の方にサインをお願いします、はい。
4位
張り込みのときには、君にもらったストールが役に立つのさ。
5位
きみはとてもガーリーだね、ガーリー。あ、電話出るからちょっと待って。はい、殺し、2丁目、行きます。

つながらない件

ソニーのタブレットを、ずっとwifiで使っていた。
確か購入時に3G回線もつなげていたのだが、特に使用するシーンはなかったのである。
しかしこないだ、外出時に使おうとすると、3Gががんばってくれていそうなアイコン表示にはなるものの、ネットワークに接続できない。
なぜなんだ。
とそれほど困らないのでそのままにしておいた。
本日暇だったのでドコモショップで聞いてみると、どうやら初期設定が「SPモード」であるべきところが「なんとかモード」になっていたかららしく、なんか調べればわかったんじゃないかと後悔。
僕は最近あたたかくなってきたので、一枚薄着をする事にした。
せっかくなのでショップの辺りをうろうろしてみると、お茶屋さんがある。
僕は花粉症に効くのだとドクダミ茶を飲んでいた時期がある。
それがよかったのか、今はそれほど重度ではないのだが、それはさておきドクダミ茶はあまりおいしくない。
まずいの部類に入る。
それでも、このお茶屋さんで試飲されていたドクダミを含むお茶。
その味は懐かしく、また飲んでみてもいいかなという気分がした。
僕はもう一枚、薄着をする事にした。
駅前では初老の男性がギターを弾きながら歌っている。
昼時だからだろうか。
立ち止まる人はおらず、彼の周りには普段通りに買い物へ向かう人の流れしかない。
ロッテリアからハンバーガーのいい香りがしてくる。
僕は一枚、上に羽織る事にした。

思い出話

アトランティス大陸で夫婦だった女性と出会った風の話
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男「で、腐臭のする23人の給食当番があなたにビンタするところまではわかりました」
男「だからどうだと言うんでしょうか」
女「ビンタじゃありません。バンダースナッチです」
男「バンダースナッチってそういうものなのか、よくわからないんですが」
女「あなたは忘れているだけなんです」
男「アトランティスの事を?」
女「そう。そしてあそこで、私たちは夫婦だったんです」
男「うーん。で、あなたの言葉を信じるとすると、そのあと「金色の破裂音」がするんでしたっけ」
女「そうです。それで私たちは別れ離れになってしまったんです」
男「そして今」
男「僕のシャツにうっすらと白い粉がふいていたことから、アトランティスでの夫であると?」
女「塩ですね」
男「すなわち、給食当番と破裂音と白い粉を足すと、夫になるわけだ」
女「結果的には」
男「僕とあなたは今ここで、出会うべきではなかった」
男「もちろん、アトランティスでもね」

終わりました。

ものまね王座的なものを、昔は結構観ていたのに今はあまり観ない。
面白さどうこうよりも、時間がなくなってしまったためのような気がする。
それでもこの間観ていると、気に入ったものがあった。
それは正直、全然ものまねする気のない人の場面。
彼は、ものまね対象者を扱ったネタを披露、面白い。
そしてネタをやり終えた。
このとき、バックバンドが「チャー!!」と鳴らしたのだ。
あれは面白かった。
本来、ものまねの多くは歌手を模したもので、歌を歌う。
そして歌い終えた時、よくこの「チャー」が鳴る。
音楽が終わったよ、を示す意味での「チャー」なのだろう。
そう考えると、一見ネタ披露型ものまねでの「チャー」はよくわからない。
「ネタが終わって、なんかチャーって鳴ったよ」
これが面白かったのだ。
そして分かった。
やはり、ネタが終わった事を示すのだろう。
ネタが終わったかどうかは、少なくとも歌よりも分かりにくいから。
以前「暗転」について触れた事があるのだが、それと似ているのだろう「チャー」。
僕も、すべったときに誰か「チャー」と言ってくれないだろうか。

悪だくみ

最近何かおもしろいゲームはないかと考えているのだが、いまいち思いつかない。
モンハンの3DSのやつはなかなか進まない。
くにおくんも進まない。
PSPのスパロボは封を開けていない。
そこで僕は「中世ヨーロッパのかつらのロール部分に爪楊枝を投げて刺す」ゲームを考えた。
ちょうど前に、あの16世がいる。
もう彼に21本、気づかれないように刺している。
実は、このゲームの楽しさは、その刺した本数ではない。
今彼の頭には1本も残っていない。
爪楊枝はどこに言ったかって?。
彼は食事の後、物を探すかのように頭をなでる癖がついたようだよ。

恋のできない体にしてやる

今年1月にシベリア少女鉄道を観てきた。
おもしろかった。
話は変わるが、僕は推理小説や長い文章が苦手だ。
物語のポイントとなるところを覚えられないので、そのまま進んでいっても理解できないのである。
それが悔しいので、いろんな箇所に細心の注意を払いながら読むのだが、結局は理解できない。
しかも、読むのに疲れる。
その「細心の注意を払いながら」を、シベリア少女鉄道の劇は強制する。
今、正直なところ3月の25日で、センターのオブのジのアースがやっている。
ときどき100度を越えるらしい場所に、生態系がばっちり形成されているようなのだ。
なんとなく、これの序盤中盤はあまり「細心の注意を払いながら」見なくていいような気がしてきた。
ショーンがふんわーなったところで話は戻るが、その強制がけっこう心地よい。
何が心地よいかというと、注意を促すわりには、それが物語のポイントというわけではないからだ。
というか、物語はない。
ああ、なんかショーンがあらすじを教えはじめた。
「細心の注意を払いながら」観ていなかったので、ちゃんと聞くことにする。
話を戻すと、何気なく人に聞かれて僕が口にした「ストーリーは、ないね」。
案外的を得ている。
ストーリーはないが、「細心の注意を払いながら」観なくてはならない。
「細心の注意を払いながら」というのは、言い換えると「あらゆるものに疑惑を持って」ということでもある。
シベリア少女鉄道の劇を見ていると、これに慣れてしまう。
よくない。
こんな体になってしまって、という気分。
ああ、主人公トレバーが普通に「人食い植物だな」って言ってる。
なかなか面白いじゃないか「センターオブジアース」。
2もやるよ!!。
せっかくなので番宣しといた。

落としてきた歴史

駅に向かって歩いていると、ふとカイロが落ちていることに気づいた。
最近は寒さかぶり返してきて、僕もカイロを手放せない。
落とした人はさぞかし、身を震わせながら電車へ急いでいることだろう。
まあ特に気にも留めずに歩いていくと、すぐにまた何か落ちている。
小さい緑のメモ帳だ。
メモ帳を落とすかね。
けっこう人通りは多い。
雑踏の中、奇跡的に踏まれていないそれを見て、気づいた。
僕の持っているメモ帳と同じやつだ。
どちらにせよ、こうも落としていく人はどんな人なんだろう。
もちろん先ほどのカイロとこのメモ帳を落とした人が同一人物である証拠は一つもないのだが。
電車の時間が迫っている。
落とし物のことを考えつつも歩き出すと、また何か落ちている。
今度は使い捨てマスクだ。
耳に当てるゴムが一部、真っ赤になっている事以外は、いたって普通のマスク。
そう、もう花粉症の季節なのだ。
例年よりも少ない花粉量らしく、しかも寒いのだが、それでも花粉に苦しむ人がいる。
実は僕がそうで、僕もちょうど今、マスクをしてきているのだ。
寒い日なんかは顔を暖める効果もあって、重宝している。
そんなことを考えながら顔に手をやると、どうしたことかマスクがない。
僕がマスクをしていない。
今日は確か身に付けたはずなのだが。
マスクを触ろうとした手は行き場を失い、顔をなでるしかない。
少々腑に落ちない気分になりながらも、冷えはじめた手を温めようとカイロを探ろうとしたところ、ポケットにそれがない。
あれ、カイロもない。
奇妙だ。
何か不安になった僕は、内ポケットに入れてあるメモ帳を探す。
ない。
そういえば、あのメモ帳はちょっと珍しい。
コンビニなどでは売ってない種類のものだ。
さきほどから目にしてきた落とし物は、ことごとく自分の持ち物だったのか。
自分はここに、何を落としてきていたのだろうか。
落ちているマスクの先をゆっくりと見てみると、何も落ちていない。
しかし、駅にむかっての直線上に、さまざまな円が書かれていた。
遠くなるほどにその円は大きくなっていく。
チョークで書かれた円。
手前の、一番小さめの円を見た時、頬をつたう生暖かい液体に気づいた。
僕は、改札まで無事にたどり着けるのだろうか。