暮れのぶんぶん その1

父親がどこからか持ってきたカブトムシの幼虫が、羽化した。
というかしていたらしい。
僕はもう、カブトムシの幼虫的なものにはがぜん弱くなってしまった。
特にあの形状は抜けて恐ろしく、視力検査ではスプーンで両目を塞ぎたいと常々思っている。
だからそれの入ったケースには、いっさい近づかなかった。
一方で父親もそれほど興味がなかったらしく、まさに「気づいたらカブトムシになっていた」ということらしい。
そんなに大きくないが、りっぱなオスだ。
泥白ソーセージだった幼虫時代からみると、成虫はなかなかだ。
やらしいもので、やたら興味がわいてくる。
以前触れたが、カブトムシのオスは取っ手のような、持つところがある点で人類に優しい。
そんな優しいカブトムシのオスを、父親が金魚鉢みたいなやつに入れて持ってきた。
ふたもない。
この状態は、猫にとっては小皿でお通しを出されたようなもので、なにやってんだ父親のやろうという感じである。
ケースを買いにいくことにした。

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