ひとつ

一つ目小僧はいたらしいのに、一つ鼻の穴小僧がいなかったらしいのはなぜだろうか。
「実はいたが、目立たなかった」
もっともな意見である。
ヤツメウナギなどの円口類に属するぬめぬめたちは鼻の穴に相当するものが一つだそうだ。
そして、そもそも生物が鼻みたいなものを持ったときに、それが穴ひとつだったかふたつだったかも、よく分からないらしい。
一つで悪いことはない。
ひとつなら、唇と鼻の間に存在する謎の溝がちょうと鼻息の通り道となるため、都合がいい。
片方だけ詰まって気分が悪いこともない。
一つ穴は死ぬか生きるか、だ。
でも、やはり人間、いままで二つ穴で慣れ親しんできたため、一つは見た目怖い気もする。
一つ穴を見たとき、それは二つの穴を隔てる壁を手術で取っ払ってしまったんじゃないかと思うだろう。
それにしても、なんかいろいろ気になってきた。
1妖怪は「なんとか小僧」が多い。
2ヤツメウナギの鼻の穴が一つとかって、それ以前にヤツメを気にするべきだ。
3「一つなんとか小僧」のような妖怪は他にいたのか。
次回、1。

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