ボルボックス

今ではさすがにそう思ってなんかいないが、小学高学年くらいまでは、「自分はボルボックスが見える」と思っていた。
※ボルボックス
植物プランクトンの一種で、丸く小さい。
プールの時間、みずたまりに反射した光を、焦点がずれた感じで眺めると丸くきらきらしたものに見える。
それを僕はずっとボルボックスだと思っていたのだ。
「そこのみずたまり、ボルボックスたくさんいるから近づかない方がいいよ」
今となってはわからないが、そんなことを言ったりしていなかったか、心配だ。
ボルボックスがたくさんいることを示唆している点も怖いが、何よりも「ボルボックス」という名前のものは、なんだか毒素をいっぱい出しそうだ。
その点も怖い。
そう考えると、例え本当にボルボックスが見えていたとしても、それを公言することは得策ではない気がする。
ボルボックスに罪はないが、いかんせん濁点が気に障る。
少なくとも日常生活においては、ボルボックスにも、ボルボックスを話題にするやつにも、近づかない方がいいのである。

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