手形その1

不謹慎であり、あくまで表層としてのイメージとして考えてもらいたいのだが、やはり「血の付いた手形」は争った相手の衣類であったり、ダイイングメッセージを書くための床であったり、違った観点としては心霊スポットのトンネルを抜けた後の白い車のボディであったり、まあそういったところに付いているべきものである。
たとえばゲーム機のリモコンにそれが付いていたとしたら、それ自体が何かしらのメッセージと考えるのが普通だ。
なぜなら、一般的に血が出ているということは緊急事態であり、そんな状態でゲームのセーブをこまめにとることは、気持ちが動転しているようでなければ、まず考えないことだろうから。
「は、犯人は、この俺のセーブデータを、勝手に進めたヤツだ・・・」
対して、特にメッセージもないのに、そこに手形があったとしたら。
それを知った人は憤りすら感じるかも知れない。
「血が出ているのにゲームを優先するとは何事だ」
「こいつ、そこまでして2面をクリアしたかったのか・・・」
などと言いつつ、selectボタンについた血の跡から、ゲームを2playerで開始していたことが判明、現場にはもう一人いたことがわかったりするのかも知れないが。
一方、類似したものとして「ホワイトボードにかかれた血のダイイングメッセージ」を考える。
これも相当に何か意味を考えさせるものだ。
なぜ床でないのか。
現場が、見渡す限りホワイトボードが隣立する草原か何かであれば、このメッセージは妥当かもしれない。
土は血を吸うし、指でなぞったとしても風で消されてしまうかもしれないからだ。
しかしこういった環境はそう多くない。
ダイイングメッセージは基本的に、みんなに見てもらいたいけど、犯人にだけはあんまし見られたくないという、なんとなくセクシーアイドルのような葛藤を持つ。
あとで確認にくるだろう犯人の裏をかくため、ホワイトボードへのメッセージ記載、そしてそれを裏返しにして見えないようにしておくとかは有効かも知れない。
最後になんとなくだが、僕はダイニングキッチンで殺害されたくなく、もちろんメッセージも残したくない。
まあ、殺害はされたくないし、したくもないが。
次回、不謹慎を恥じつつ、つづく。

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