僕のガムシ その3

昨日からのつづき。
【あらすじ】
水生昆虫界の逆イアン・ソープ、ガムシと出会う。
図鑑には「ガムシは泳ぐのがへた」と記載されている。
記載されてしまうくらいなのだ。
どれだけへたなんだ・・・。
僕はさっそく、洗面器に水を入れてきた。
そこにガムシを入れる魂胆だ。
ふと、周りの大人たちは不思議な顔をしているのに気づいた。
前述したように、ガムシはコガネムシ型なのだ。
どうやら、大人たちはコガネムシを水につけてどうすんだ、と思ったらしいのだ。
僕は言う。
「コイツはガムシといって、水生昆虫なんだ。泳ぎがへたらしいけど。だから、水に入れてみる」
今思うと、この説明では、余計に不思議に思ってしまいそうだ。
反省している。
とにかく、準備はできた。
後は、ガムシを泳がせてみるだけだ。
虫かごからガムシを取り出し、水面に置いた。
・・・・・・
浮いた。
そのとき、ガムシが、浮いた。
マンタが、飛んだ。
ガムシは、「泳ぎがへた」とか、そういう予想に反して、水に浮いたのである。
泳ぐどうこう、以前の問題。
浮いたまま、微動だにしない。
指で水中に押しやっても、なんら反応をしない。
指を離すと、ぷかーと浮いてくる。
ガムシは、腹部分に空気を溜め込み、水中での呼吸に役立てることが知られている。
また、今回のガムシはそもそも水中への準備ができていなかっただろう。
浮くのは、別に不思議ではない。
しかし、このときの僕はショックだった。
「泳ぐ泳がない以前に、浮いてるよ・・・」。
水面でぷかぷか浮き、動かないガムシを見て、なんだかコイツはガムシではなく、普通の陸上生活をするコガネムシなんじゃないかと思えてきた。
洗面器を囲んで、そんな風な雰囲気が僕らを取り囲む。
僕はガムシを摘み、ティッシュにつかまらせた後、逃がしたのだった。
あのときのガムシは、本当にガムシだったのだろうか。
ともかく、僕にとってのガムシとは、水生どうこう以前に、浮く、というものなのだ。
追記
なんだか「水生昆虫」の変換が「彗星昆虫」となってばかりいる。
なぜなんだ。
とりあえず、「閃光少女」みたいなもんか・・・。

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