昨日からのつづき。
【あらすじ】
水生昆虫界の逆イアン・ソープ、ガムシと出会う。
図鑑には「ガムシは泳ぐのがへた」と記載されている。
記載されてしまうくらいなのだ。
どれだけへたなんだ・・・。
僕はさっそく、洗面器に水を入れてきた。
そこにガムシを入れる魂胆だ。
ふと、周りの大人たちは不思議な顔をしているのに気づいた。
前述したように、ガムシはコガネムシ型なのだ。
どうやら、大人たちはコガネムシを水につけてどうすんだ、と思ったらしいのだ。
僕は言う。
「コイツはガムシといって、水生昆虫なんだ。泳ぎがへたらしいけど。だから、水に入れてみる」
今思うと、この説明では、余計に不思議に思ってしまいそうだ。
反省している。
とにかく、準備はできた。
後は、ガムシを泳がせてみるだけだ。
虫かごからガムシを取り出し、水面に置いた。
・・・・・・
浮いた。
そのとき、ガムシが、浮いた。
マンタが、飛んだ。
ガムシは、「泳ぎがへた」とか、そういう予想に反して、水に浮いたのである。
泳ぐどうこう、以前の問題。
浮いたまま、微動だにしない。
指で水中に押しやっても、なんら反応をしない。
指を離すと、ぷかーと浮いてくる。
ガムシは、腹部分に空気を溜め込み、水中での呼吸に役立てることが知られている。
また、今回のガムシはそもそも水中への準備ができていなかっただろう。
浮くのは、別に不思議ではない。
しかし、このときの僕はショックだった。
「泳ぐ泳がない以前に、浮いてるよ・・・」。
水面でぷかぷか浮き、動かないガムシを見て、なんだかコイツはガムシではなく、普通の陸上生活をするコガネムシなんじゃないかと思えてきた。
洗面器を囲んで、そんな風な雰囲気が僕らを取り囲む。
僕はガムシを摘み、ティッシュにつかまらせた後、逃がしたのだった。
あのときのガムシは、本当にガムシだったのだろうか。
ともかく、僕にとってのガムシとは、水生どうこう以前に、浮く、というものなのだ。
追記
なんだか「水生昆虫」の変換が「彗星昆虫」となってばかりいる。
なぜなんだ。
とりあえず、「閃光少女」みたいなもんか・・・。