ちょっといきなりじゃねえか

このブログでも、ときたま触れる、妖怪話。
どうやら僕は、人よりも少し妖怪に詳しいと言えるようで、すでにこの文を書いただけで僕の人生の何割かが失われたような気がして、悲しい。
でも、仕方がない。
事実、ちかごろ水木しげるの漫画の文庫にハマってしまっているのである。
故ありて、あまり紹介などをしないブログだが、今回はちょっと理に反してみようと思う。
「鬼太郎の地獄めぐり」という文庫。
だいたい一話完結。
そんな文庫に収録されているある話は、こんな鬼太郎のセリフから始まっている。
「ねずみ男、地獄へ行ってみようじゃねえか」
いきなりである。
最初のひとコマの、右上かどの吹き出しから、このセリフである。
今まで、こんなにも読者の心を掴む出だし、見たことがない。
どんな名作と呼ばれたものを思い出しても、これに勝てない。
こんなの、国語のテストに取り上げられても、なんら遜色ないと思う。
1.次の書き出しから始まる作品名と作者を答えよ。
「ねずみ男、地獄へ行ってみようじゃねえか」
サービス問題の感ありだが、いい作品なのである。
問題ない。
ところでこの、ちょっと無骨なプロポーズともとれる発言の鬼太郎に対し、当のねずみ男も「そりゃあいいや」と意気投合。
ラストにはそのねずみ男が「善の心」について、らしからぬコメントをぽつり、終わる。
僕は何度も「ねずみ男、地獄へ行ってみようじゃねえか」と繰り返した。
いいなぁー。
この人間界、さすがにおいそれと「ねずみ男、地獄へ行ってみようじゃねえか」、言えるものではない。
「なぁ、二人で東南アジアに住むとされる巨大グワッパを見つけにいこうじゃねえか」
グワッパというものがどういう生き物なのか、巨大と銘打っているということは普通のもいるのかなどの謎は残るが、このくらいのセリフであれば、代替されているだろうか。
ところが、いいなぁと思っていた僕は、その次の話で、ひっくり返った。
お話の一番最初に出てくる人物が放つセリフ。
「なんだありゃあUFOじゃねえか」
どうやらこの世界では、UFOは少々認知されすぎのようである。
夢や希望、未知なものへの恐怖心などを付加しろとは言わないが・・・。
ちょっと、空を飛びすぎているのでないだろうか。
このセリフを見るかぎり。
「なんだありゃあ三高の米倉じゃねえか」
街を歩く高校生と同じ扱いである。
「こうして、ふたりで歩いているだけでも、たのしいね。」
「なんだありゃあUFOじゃねえか」
こ、このセリフなら、いつか言えるのだろうか・・・。
ところが、このセリフを言えるシチュを考えていた僕は、その次の話で、もっとひっくり返った。
最初のひとコマ目の右上かどの吹き出しは、このセリフで埋められている。
「あっ小学生の自殺だ」
お前は井上陽水か何かか。
と、このように3話、しかも最初のセリフだけで、ゆるい小説なんかを吹き飛ばす感が得られたのである。
また、「妖怪」「UFO」「井上陽水」と、当ブログの半年に一回くらい出てくるワードが。
この本、おもろいな。
ちなみに、僕はこの文庫シリーズのおかげで「一反もめんは月に行くことができるらしい」という知識も得た。
どこかでぽつりと言うので、よろしく。

「ちょっといきなりじゃねえか」への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    地獄、UFO、小学生の自殺…すごいですな。
    オレは梅図先生ので子供が生まれる時、お父さんが「男女どっちだ?」と聞くとドクターが「猫です!」と言うのでハッとしました。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    それいいですなー。
    お父さんも、猫については心の準備ができていなかったでしょう。

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