女は褒めろ 硝子は見つけろ

このあいだ、通販の番組を見た。
テレビで商品を紹介する。
気に入ったものがあれば、画面に絶えず表示されている電話番号をかければよい。
商品を実際に手に取れないことが、難点といえば難点だが、それを販売員がフォローする。
紹介のうまい販売員なら、店頭で商品を売るよりも、売り上げを上げることができたりするかもしれない。
僕が見たとき、紹介している商品はガラスのコップだ。
「ガラスのコップ」。
その人は、コップを紹介しているのだった。
素人ながら、コップの紹介が難しそうなのは、分かる。
コップは液体を飲むのを楽にしてくれる道具。
それだけであるからだ。
だから販売員も、その紹介内容はデザインのことに終始している。
「ここのラインが、とても素敵ですよね。」
「一味違ったコップ・ライフをご提案します。」
もちろん後者はでっち上げだが、2つの例も出せぬくらい、デザインのことばかり言うのだ。
※懺悔すると「一味違った」というのも、カケた気がしてしまっている。
ただ、一回だけ、言った。
「ガラス製でして、水などを入れてみますと、口当たりもよくて。」
この一言は、いけない。
かなり、連想ゲーム風になってしまうからである。
視聴者は、コップのことを知っている。
だからこそ、その紹介には、かなりすごい機能でもない限り、デザインの有効性だけを謳っていればいいのだ。
と、僕の心配は無用のよう。
「あぁ、残りわずかになってきてしまいました。」
売れたようだ。
僕はなんとなく「光の屈折がなければ、透明な水の入った透明なガラスのコップを、私たちは探しだして持つことができない。」という、何かの本の話を思い出していた。
僕が販売員なら「このように透明な水を入れても、見失いません。」ということを、
「とても飲みやすい形状となっており、」
「今なら、かなりのお値打ちです。!!」
の間に音量を抑えて言い、その後さりげなくスタジオの雰囲気を探る。

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