なぜか台北 その44

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
ホテルに戻ってきた僕はシャワーのありがたさをさらに高めるため、わざと入らずに食事を取る事にした。
ホテル付近には屋台街みたいなものがある。
そこに繰り出す事にしたのだ。
長時間の徒歩と日照りまみれの体は言う事をきかず、もうここは横になるのが最善ではないかとベッドへと向かおうとするがそれを抑え、外に出る。
早朝に見た屋台街は、午後4時と中途はんぱげな時間にも関わらず小物を売ってくれており、そのどれもがおいしそうだ。
多いのが小さい肉まんのようなもので、何が入っているかはよくわからないがマズイはずはない。
1個でよかったのになぜか5個入っていたそれとシャーピンを購入した。
シャーピンというのは肉まんをひしゃげさせて焼いた。
そんな感じの食べ物で、非常にうまい。
実は近所にこれを売るところがあり、なじみがある。
台湾のそれは日本のと比べてどうだろう。
そんな興味も生じさせる。
ただ、僕の知っているシャーピンよりも台湾のここのは薄くて大きく、具材もネギくらいのようだ。
そして辛い何かを付けるらしい。
お店の人は、僕がシャーピンに何を付けるのかと問われたときの「特に何の付けなくていいよ」に驚き、もしかしてあなた日本人?と聞く。
そうだというと、これはたいがい何か付けて食べるものだからと教えてくれ、控えめに辛い何かを勧めてくれた。
それは見るからに辛そうで、いやちょっと辛いものは苦手で、と身振りそぶりでどうにか分かってもらえた。
そうなの。
苦手なら仕方ないわよね。
あはは。
うふふ。
4分割されたシャーピンを挟んでの、心あたたまるワンシーンである。
僕は辛いものを付けてもらわなくても、心あたたまったよ。
これ、どう?。
それにしてもこの段階でだいぶ買った。
肉まん、結果的には青菜のみが入っていて肉がないまんだったのだが、それをひとつほおばりながらも、ついつい鶏肉入りのラーメンを提供するチェーン店に入ってしまった。
なんか麺を食べたかった。
肉まんもどきとシャーピンでほかほかする鞄をさげて、僕はそこで排骨ラーメンを食べる事になる。
接客のおばさんは僕がつたなくヌードルだとかなんだとかを言うのをちゃんと聞いてくれた。
僕が麺とからっからに揚がった鳥の唐揚げが別々に出てきた事に驚くのをみて満足そうだった。
麺はスープもそれもおいしく、唐揚げも揚げたてでうまかった。
しかし、鞄の中のことを思い出し、憂鬱にもなった。
確実に食いきれる量ではない。
おばさんにほかほかの鞄を触らせたらどうなっていただろう。
ちゃんと店から追い出してくれただろうか。

なぜか台北 その43

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
台北駅に到着した僕は、もう適当なところでの食事とスライムつむりのレベル上げ。
最たるシャワー。
あとはベッドへ決死のダイブをすることくらいしか考えられないほどに疲労困憊。
そして腹は減っている。
早朝から今、午後3時まではもう、ファンタもどきしか食べていない。
台北駅付近はチェーン店的な飲食店しかなく、もちろんそこで用を足そうかと思うのだが、一方で観光客っぽく、地元のがいい、なんてこともよぎる。
台北の地元のもんは、チェーンのやつだよ。
そう思いつつも観光客負けし、ホテル付近にみとめられた屋台街へくりだそうとタクシーを捕える。
日本のそれよりも幾分落ち着きのない外装、内装。
タクシー毎に新品だったりかなりぼろかったりと差異がたくさんあるタクシー。
テントウムシのようだ。
運転手さんにホテルをつげると、さらなる疲労と空腹がどこに隠れていたの?と思うくらいに流れ出てきた。
ああ、僕はさっき北竹のどこかを歩いていたなあ。
そんなことをふくらはぎの痛さとともに感じていると、なんとなくまだ僕が北竹のどこかを歩き続けているような気がしてきた。
ここは僕の家じゃない。
台湾だ。
ずいぶん遠くに来てしまった。
ほらごらん。
タクシーでやりとりされている無線が、スターウォーズの戦闘機のそれに聞こえてくるよ。

なぜか台北 その41

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
慣れとは恐ろしいもので、ついさっきまで戦々恐々としていた切符購入にも、特に何の感情も生じずに行えるようになった。
北竹駅を出発する決意をした僕には、腹は減っていたがこの遠出の意味が見出せない事の方が切実だった。
まだ午後を少し回ったくらいということもあって、台北のホテルへ直接向かうのではなくてどこか寄り道をしようと考えた。
仏教の六道の地獄方向のひとつは「北竹ホーム道」ではなかったかと勘違いしてしまいそうな灼熱のなか、電車を待つ。
僕の買った切符は「桃園」駅という、台北よりの時点で通過する駅。
当初の目的であった「樹林」駅も捨てがたかったが、午前中に見た限りでは樹林ではなく、ならばそれに執着する事もないかと、日本人的にはかなり俗っぽい印象を持ちやすい「桃園」にしてみた。
おそらく新橋とか五反田にもあったはずだ、「桃園」。
電車は結構混んでおり、ドアのところに段差があったり、ドア横の安心ゾーンはよくわからない手すりなどで浸食されている。
いまいち居場所を確保できないまでも、乗客はなぜか女の子が多くうれしい。
それが誰にでも感じてしまい、その感情が旅行中ということに起因する何かなのかはわからない。
ともかく、AKB48換算を行うとこの国の女の子は皆「TAIWAN∞(ムゲンダイ)」に属しているようなもので、さきほどの六道といいこのムゲンダイといい、どうもアシュラマンがちらほらする。
いや、今ブログの到着地点はアシュラマンではない。
桃園だ。

なぜか台北 その40

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
台湾の「北竹」駅から次の駅への歩行大作戦が、歩行者にやさしくない台湾政府の政策により失敗。
しかたなく、もと来た道を戻る事にする。
この1時間半はいったい何だったのだろうか。
結果的には「北竹」あたりで1時間半、座っていました。
「北竹」あたりで1時間半、考え事をしていました。
「北竹」あたりで1時間半、コンクリートブロックの中から化石を探していました。
そういうこととあまりかわりはなく、いやずっと歩いていたじゃないというにしても、そこで目の当たりにしたのはアイスを食べながら接客するコンビニ店員、仄暗いトンネル、蛍光色の何かの卵、川辺の畑。
これらは「そうでもない」。
多少道を間違えながらも駅付近に到着する。
作戦前には開いていなかった店も開業しているようだが、もはやそこにどうこうする力もなく、ただホテルでシャワー浴びてスライムつむりのレベルを上げたい。
そのくらいの要望しか、僕の頭の中には残っていなかった。
あとは蒸発してしまった。
ただ、これは結果的には「北竹」におけるイベントの最たるもののひとつになったのだが、駅の駐輪場。
とは言っても駅付近に大量に自転車が止まっているという箇所なのだが、そこでおもむろにねずみを見た。
ねずみは白昼現れるにはあまりに大きく、一瞬ねずみじゃない、何か別のほ乳類なのではないかと勘違いしてしまったほどで、いわゆるラットの類い。
焦げ茶色したそれは、それほど悪びれる様子もなく堂々とコンクリートに開いている大きな亀裂に入っていく。
日本でも繁殖力と悪知恵を持つでかいねずみで住民が困る、というニュースがやっていたが、台湾でもそういうねずみがいるのかもしれない。
あれは、猫の手には負えない。
そのくらい大きく、関わり合いを持ちたくない風貌だった。
おそらく僕があれをはたいたら、僕はレベルアップできる。
しあわせのくつを履いて歩くのよりかは効率がいい。

なぜか台北 その39

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
川辺で謎の畑作業を営むおじさんを横目に、僕はまだまだ歩いていく。
すると、橋が見えてきた。
対岸には田んぼが見えており、何か台湾固有種が見つかったりしたら面白そうだ。
橋を渡る事にした。
しかしどうしたことか。
今まで苦労してきた台湾特有、かどうかは分からないがとにかく苦労してきたシステム。
歩道がないという問題がここでも現れた。
すなわち、橋に明確な歩道はなく、ほぼ車専用の扱い。
駅から1時間以上は歩いてきただろうか。
進むのに困っている訳だが、もちろん戻るにも面倒くさい。
どうにか活路を見出そうとしていると、歩道ではないにしても「ここ車侵入しちゃだめ」という感じの車線エリアが道路の端に描かれている。
そこを歩く分には問題なさそうで、しかも対岸へ渡ることができる。
さっそく安全地帯らしき箇所を渡り、対岸へ赴く。
どうやら対岸とは言っても本当に「川辺の端」までしか行けず、橋を渡りきってそちらを歩いていくというのはできなさそうだが、仕方ない。
とりあえず今は田んぼだ。
橋の横に設置された、緊急時用に用意されたような細い階段を下りると、橋げた付近に出る。
正直雑草やらごみやらが散在していて、「美しい場所だからここに住みます」とは決して口にはできない場所だったが、なぜか一人寝ているものがおり、僕の血をたぎらせた。
蛇もいそうでその点びびりつつもどうにか田んぼゾーンに出る。
ここまでは日本のそれと変わりはなく、いわゆる田んぼだ。
しかし日本では見られない生き物がいたりするんじゃないだろうか。
見たところ、ここにいる生き物は稲だった。
そして結果的には、稲しか見つからなかった。
それは積極的に生き物を探す事をしなかったから、というのが主な原因。
本当はどこかに何か、いただろう。
しかし自身が発火しそうな暑さの中、人のうちの田畑を探索するというのは何か面倒なことになりそう。
そう思ったら、もう歩くのはいいかと憑き物が離れたかのような気分になった。
対岸には来ているものの田んぼゾーンからどこか出られるような道も見つからず、結局「北竹」駅に戻る事にする。
遠い。
しかし仕方あるまい。
戻ろう。
ともかく僕の人生において、「台湾の北竹駅から一駅分歩こうとしたが戻る」という項目にはチェックがついたので、次誰かに「あれお前、台湾の北竹駅から一駅分歩こうとしたが戻るっていう項目はどう?」と聞かれたら「チェック済みなのでもうやる必要はありません」と答えられることになった。
橋げたの影では、まだ誰かが寝ている。
お前が憑き物だったのか。

なぜか台北 その38

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
台湾のよくわからない場所の川沿いを歩いていく。
そこはコンクリートで盛られた土手のようになっており、当たり前のようにそこにあがる階段は見当たらない。
大型車が敵意むき出しに走る幅広道路を永世中立の精神を持って渡り、コトなきを得る。
土手にあがると、そこは道路と土手、川と高架が遠くの都市的な方へ続いていく。
そんな風景で、まとめると日本だった。
ただ、土手から川をのぞこうとするとき、その間にある雑草地帯。
その雑草はやや南国風。
そのくらいだった。
僕は川の生き物に日本でない何かを見出すべく川面を凝視したが、特に何もおらずただ濁った水が流れるばかりであるあと暑い。
おもしろくない。
日本より南国なのに、その感じがない。
ここは日本の幹線道路付近とあまりに変わらず、灰色だ。
新品のえのぐセットを叩き潰したような色彩の生き物はどうした。
置いておくだけでガラス瓶が割れてしまうような音量のジャングルはどうした。
チームで行動し、毒矢で眉間を狙ってくる原住民はどうした。
と、台湾を責めてみてもどうにもならず、そもそも台湾はそれらを約束してくれていない。
偏見も甚だしいところがある。
そして場所がいけないこともあるだろう。
ともかく川沿いを歩く。
「ああ、あそこに自転車が停まっている。あそこまで歩くのはしんどいな」とつねづね思っていた自転車停車地点に到達しかけた頃、土手を下って川まで到達するまでの空間に畑があるのが見えた。
何か水を大きい桶にためていたり、畑の様子をみるかぎりは今でも絶賛栽培中のようす。
太陽の暴力下の土手の上に座り、畑を眺めているとおじさんが何か作業していることに気づいた。
この自転車の持ち主だろう。
おじさんはラフな姿で畑作業を行う。
こんな場所だ。
毒蛇もいたりするんじゃないかと心配になったりもするが、どうもおじさんは畑仕事の最中にて、別の心配をしているようだ。
僕である。
ちらちらこちらを見ている。
どうも台湾ではこんな時間に、ただ人の畑仕事を見ていることはおかしいらしい。
いや、台湾に限った事ではないか。
ともかくおじさん、大丈夫。
僕は毒蛇じゃない。

なぜか台北 その37

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
天井からキノコバエの幼虫ぶらさがっていそうなトンネル。
トンネルとは言っても全長10mではあるが、そんなところを抜けて歩く。
午前11時くらいだろうか。
台湾の11時はすこぶる暑く、台湾製のオーブントースター温度設定は初期表示11時となっているだろう。
民家の密集したところをひたすら歩く。
本来は、次の駅へ向かっているはずなのだが線路は高架の上を走っていてその高架はもう見失い、目立つ建物もなく、ただ帰りの道だけは菓子パンをちぎって落としてきているから見失わない。
ごめん童話混じった。
ともかく目的もそうなく、何か産み出されるとは到底思えない歩きである。
文字通り右往左往しながら歩いていると、下水が横を流れる大きな道に出る。
その先を眺めると見失って久しい高架が見える。
どうにか「次の駅へ向かう」「その途中で田んぼでもないか」といういくつかの希望を思い出し、そちらへ向かう。
それにしても、このときも歩いているところには、4人用テーブルに7人座っていて、さらにそこに昼ご飯を持って座る。
そのくらいのスペースの歩道しかない。
そして歩道と下水に隔たりはなく、下水の壁面には恐ろしく蛍光色を放つ謎のたまご様の付着物。
通りは車がすごいスピードで走っており、一体今日の台湾はどれほどの家族に危篤者が出たのかと心配になるほど。
気の休まる事がない。
先ほど買ったファンタもどきは既にぬるま湯を越えようとしており、突き当たりの大通りはそれまでの申し訳程度の日陰をとっぱらった様相。
高架の影はうまいこと並走する川に落ちている。
台湾から2時間程度離れたところを一駅分歩くことを、少し侮っていた。
しかし川は少し楽しい。
高架と川を沿って、まだ歩く。

なぜか台北 その36

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
アイスを食っている店員さんのコンビニからファンタきどりを購入した僕は、それを片手にさらに歩いていく。
暑いのだが、気分的には一駅分を歩いていき、途中の田んぼやよくわからないものを見ていく所存である。
ところがコンビニを出てすぐのところは高架を形成しており、そのくぐる方には歩道がない。
くぐる方を選んだ場合、僕が反射板を背負ってでもいれば歩けたのだろうが、そうでない今では事故ってしまう。
そして事故るとめんどうくさいうえ、パスポートの期限が切れたりしてさらにめんどうくさい。
そして命の保証。
以上を踏まえ、僕はくぐらない方を選んだ。
と、ここでくぐるだのくぐらないだのをどうこう言っていることには理由がある。
普通はくぐらない方を行きました、でいいのに。
その理由は「くぐらない方」の、妙な気味悪さである。
日差しは強く、目に入る風景全てが、少し白色を多めに入れた配色を示している状態なのにも関わらず、その「くぐらない方」のちょっとしたトンネル。
数mしかないそのトンネルが妙に暗い。
暗いだけならいいのだが、さらに謎のソファーが置いてある。
ソファーが朽ちている。
そのさまが気味悪い。
ここで台湾の不良にカツアゲでもされたらどうしよう。
そんなことを考えさせる禍々しさなのである。
僕は足早にそこを攻略する。
ぼろぼろのソファーがとにかく気持ち悪い。
早くトンネル出口の白色に飛び込みたい気分にすらなる。
当たり前だが特に何も起こらないまま元の風景に飛び込む。
数秒目が効かなくなるが、日差しの強さが心地よい。
目が少しずつ慣れてくると、それまで道の真ん中で子猫と戯れてのんびりしていただろう老夫婦が、僕の事を怪訝な顔をして見ている。
僕の帽子のせいだろうか。
この帽子は寝癖が直るから非常に助かるんだよと言いたくなる。
いや、どこからか漂う僕の異国民の雰囲気のせいだろうか。
確かにここにはあまり観光客が来ないかも知れないが、特に悪さをしにきた訳ではないんだよと言いたくなる。
まさか、あの禍々しいトンネルを抜けてきたのかとでも思っているのだろうか。
すごいでしょ?、と言いたくなる。

なぜか台北 その35

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
「北竹」駅は簡素ではあるがちゃんとした駅があり、改札を抜けるとまさに駅前といった感じで細かく建物、店が並んでいる。
駅を出てまっすぐ歩いていくと十字路があり、左右を眺めてみると企業所有のビルもあるようだ。
しかし所々に古い感じの家があるため、一概に「いやあ何もかんも都市だね」とは言えない。
そんなところである。
お腹が減っていた僕は何か食おうと、3時間ほど前の台北から思っていたのだが、なぜだろうか。
お店のほとんどはまだ開いておらず、たまたま開いていても準備中らしい。
休日だからだろうか。
ともかく食べ物が全ておいしそうな台湾において、まさかの朝食難民となってしまった僕は、それでも適当に決めた方向へ歩いていく事にする。
町並みには「これ、台湾っぽい」という感じの建物はなく、ともかく日本のどこかローカル線駅の雰囲気。
では「これ、台湾っぽい」建物とはどういうものなのかは僕の中にもないが、ともかく変哲の無い風景である。
駅前の十字路を左に曲がって、どんどん進む。
暑い。
しかしお店が、コンビニもない。
しかし交通量は多く、車とバイクが風を作る。
それをだらだら歩きながらも、ひとつ気づいた事があった。
歩道というか、歩行者専用の領域が、僕の歩いている道にないみたいなのだ。
僕は当然道の端を歩くのだが、そもそもそこと自動車の走る領域のへだたりには白線ひとつ存在せず、前後の自動車事情を確認してから僕は行動する、というシーンばかりなのだ。
まあそんなものかねと歩いていくと、コンビニを見つけた。
これ幸いと飛びつく。
店内はすこぶる涼しく、僕は何か食べ物をと思った。
しかし、ここであまりにご当地っぽくないお菓子なぞを食べても、何か負けた気がする。
それくらいならここは我慢をして、ホテル周辺の屋台で食べるべきだ。
そう考え、僕は「ファンタを目指しました」という感じの飲料のみをレジに持っていく。
若い女性の店員さんは、なぜかアイスクリームを食べながら会計をしてくれる。
現在、北竹で一番良かったイベントは「コンビニの店員さんがアイスを食っている」である。

なぜか台北 その34

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
「北竹」駅へ向かうために乗った電車内は特急電車「自強」とは異なる作りで、特に座席は日本の中央線のようなサイドにある座席と新幹線のような進行方向に対して向かって座れる、2パターンの座席が1両に交互に混じるような配置。
奇妙だ、と思う。
なぜこのような配置にしたのだろうか。
僕は開閉ドア最寄りの「中央線タイプ」の座席に陣取り、周りを観察する事にした。
先ほどの急行で通り過ぎた「北竹」のことを思い出すと、およそ5分くらいはこの電車と、運命と進行方向をともにする。
そう考えると、運命というと何か決定的な、厳かな雰囲気を出すものであるが、その実際はただの進行方向だけなのかもしれない。
そんなことをまず異国の電車の中でなんか考える余地なぞなく、さらにはドア付近の観察により、余地はマイナス値となった。
なんか、「open-close」的なスイッチがついているのである。
これは普通、駅到着時に開閉の手順があることを示していると考えてよい。
事実、僕はそう考えた。
操作方法がわからないのである。
台湾で日々、数多く開催されているという、地元住民の「電車降りるパフォーマンス」を見る機会があれば良いのだが、何せ僕の降りようとしている駅はおそらく次の駅。
ここで唐突に誰かが電車の降り方の説明を日本語でやり始めるということでも起きない限り、どうにもならない。
僕のつたない英語能力からすると、どうも「スイッチの上にあるレバーがONのときのみ、このスイッチ使って」と開閉スイッチの説明にあり、そのレバーは今、OFFだ。
しかしこの解釈が合っているかどうかは分からず、そうだとしても例えば次の駅から乗客側が「レバーをONにしてスイッチで降りる」などというイリーガルな方法を取るかも知れず、とにかく分からない。
確かに、「open-close」は良心的だ。
日本で時々見られる、「開、閉」の記載がなく「←→」「→←」のみのもの。
あれは結構、迷ってしまう。
どの矢印の動きが、開閉を示しているのだろうかと。
電車が制動しはじめ、意味の分からない車内放送が流れる。
「北竹駅」が近いのだろう。
運良く、この車両では僕の他に降りる乗客がおり、自信満々に彼の後ろに並ぶ。
結局、乗車してからの5分間全てをつぎ込んだ「open-close」的なスイッチは使われる事なく、「あつっ」と手を引っ込めたくなるような暑さのホームへ僕は降りる事ができた。
「北竹駅」に到着である。