いいやつ。

A「おーい。TVで和田アキ子のものまねやってるよ。」
B「うーん。和田アキ子のものまねができるっていうのは、数字で言うところの0だからなぁ。」
A「え、どういうこと?」
B「はっきり言って、和田アキ子のものまねができない人はいないと思うよ。」
A「まぁ、確かによくやられるよね」
B「だから、和田アキ子のものまねをしました、ということは、何もしませんでした、とも言えるんだ。」
A「なんだか飛躍したなー。」
B「でも、かなり基礎的なものまねだよね。そう思わない?。」
A「でも、だからこそウマいヘタはあると思うな。素人に対して、TVとかでやる人なんかはやっぱり手練だよね。」
B「んなこたないよ。もうやりつくされて、みんな一緒。芸とすら言えないよ。」
A「はのころは!!」
B「うわっ、いきなり和田アキ子が目の前に来たかと思っちゃうじゃないか!!。」
A「アッコに?!!」
B「うわっ、似すぎて、思わずおまかせ?って言っちゃうよ!!」
A「ね?。ウマいヘタあるでしょ?」
B「うわっ、アキ子のAかと思っちゃったよ?!!」

汚染

あいつの言うことは、よく分からない。
「だから、相手の名前が思い出せないときは、むしろ「メリッサ」とか呼べば、むしろ好転するんだよ!!。」
なぜ。
なぜ好転するのだ?。
おおかた、相手は日本人ではないのか?。
名前を聞くことができないのなら、相槌などでうまくやりぬこうとした方がいいのではないか?。
「わっかんないかなー!?。とにかく、メリッサの方向でね。僕のほうはアンジェラを主に押していくから。」
とりあえず、メリッサの方を任されてしまった。
「それで、次。「押し花」の花言葉は「圧死」だから。わかる?。」
なぜ。
なぜ圧死なのだ?。
まだ、さっきのよりは分かるが、腑に落ちない。
そもそも、花それぞれに、既に花言葉があるではないか?。
・・・どんな花でも、押し花になると「圧死」なのですか?。
「わっかんないかなー!?。例えばガーベラは「希望の圧死」ってなるんだよ。パンジー「思慮深い圧死」、シロツメグサは「復讐の圧死」。」
混ざるんだ花言葉!!。
ちょっと、花に申し訳ないな・・・。
「最後だけど。宮沢賢治の「注文の多い料理店」は、つまるところの「がんこおやじの店」だってこと。わかる?。」
あ、あれ。
なんかこれは、腑に落ちたぞ・・・?。

蒼天のアミュレット

店長「ネクタイというと、今では背広のお供みたいなものですが、実際は防寒目的の毛皮であった、という説があります。」
そう言うと、店長は俺の青いネクタイをつまんだ。
店長「君、寒くはないかい?。」
?「えぇ、ネクタイのおかげで。」
人々が興味のまなざしをこちらに向けてきた。いい感じだ。
店長「また、ハンカチの役割も果たしておりまして。このようにナポリタンを食べたときに便利です。」
店長が俺の口にケチャップを塗りたくり、それをネクタイで拭いて見せた。
店長「君、不快感は無いかい?。」
?「えぇ、口の周りのケチャップだけ拭き取れたので、口の中のあと味は、まだサイコーです。」
店長「このように、拭いた部分は紫色になりましたが、昔から紫は高貴な色として知られておりまして・・・。」
誰一人として客は帰ろうとはしない。
店長「古代ギリシャなどでは、魔よけとしてネクタイが使われていたという話もあります。」
店長が紫色の部分を避けつつ、ネクタイをなでた。
店長「君、最近霊的な悩みは無いかい?。」
?「えぇ、6歳から続いていた自室でのポルターガイストがぴたっと止まりました。」
客の幾人かは、既に財布を出していた。
店長「では、最後の機能です。」
なでていたネクタイを掴んだ店長は、それを力いっぱいに引っ張った。
店長「ネクタイは怪我をしたときなどに用いると、包帯よりも止血効果があります。ほら、このように。」
さらに店長。
店長「このように、縛られた部分は紫色になりましたが、昔から紫は高貴な色として知られておりまして・・・。」
この回は大盛況で終わるようだ。
俺は、薄れゆく意識の中。
「解説書に、場所のことも書かなくちゃな・・・」

防人のコンパス

男「持ってきました。」
質屋「電話でおっしゃっていたものですね。」
男「防人はご存知で?。」
質屋「社会か何かで習いました。徴収された人たちを歌った、防人歌が有名ですね。」
男「なら、大丈夫でしょう。東日本から九州までの旅などもあり、過酷な制度だったようです。」
質屋「して、品物は?。」
男「まぁ、そうあせらず。今日持ってきたものは、その過酷さを証明するもので、歴史的価値があるものですよ。」
質屋「面白い。見ましょう。」
男「これです!!。見てください。木製ですが、2本の足とも原型が残っています。もちろん、それを留める部分もしっかりしています。」
質屋「・・・・・・。」
男「でも、見ていて下さい。ここにこうセットして・・・。こう・・・と。ほら、あまりに過酷な状態にあったためか、ちゃんと円が描けないのです!!。
円の描けないコンパス!!、徴兵制度!!、過酷!!、互いの名を呼び合う恋人達!!。泣ける!!。」
質屋「よりによって、そっちのコンパスかよ・・・。」

ペンと剣と司会業

「うわぁ!!。今回の怪獣は手ごわい!!」
「然しものヒトシくんも、今回は危ないかも知れない・・・。」
「ああっ!!。やっぱり不利みたいだ!!。やられてしまう!!。」
「おい、あれを見ろ!!。」
「か、輝いている・・・!!。」
「あ、あれが、伝説のスーパーヒトシくんなのか・・・。」
「いけー!!。スーパーヒトシくん!!。気持ち3倍だ!!。」
「待て。怪獣の方も仲間を呼んだぞ!!。」
「いかにスーパーヒトシくんでも、この数では・・・。」
「おい、あれを見ろ!!。」
「今度は、超スーパーヒトシくんが来てくれた!!。」
「待て。怪獣の方もじゃんじゃん来てるぞ!!。」
「ヒトシくんも負けてない!!。今度はメカヒトシくんだ!!。」
「超合金ロボヒトシくん!!」
「続いて新世紀ヒトシくん!!」
「ヒトシくんV3!!」
「ヒトシくんマン!!」
「ネーデルヒトシくんは掃いて捨てるほどだ!!」
「ヒトシマン!!」
「ヒトデマン!!」
「海辺のヒトシ!!」
「不思議の国のヒトシ!!」
「ヒトシ狩り!!」
「でも、怪獣もてんこもりだ!!」
「あっ、最後に輝くあのいぶし銀は!?。」
「クサノヒトシだ!!」
長官「ヒトシくんたちのボス、クサノヒトシが来てくれたのだね?。」
部下「はい。むやみな筋肉で、勝てるかと。」
長官「では彼に、「どこか別の星にでも行ってから続きをするように」と、双方を説得するように伝えてくれ。」

天と地の認識合わせ

タカユキ。
その者、平民の出でありながら才能に恵まれ、若くして関西一手を引き受けるまでにのぼりつめる。
概してこのような者は傲慢であるのが常だが、タカユキに至っては例外。
特にその謙虚さは府に留まらず、州にまで及んだ。
ゆえに天分を得た。
輝くティアラと緋の衣をまとい、袖には大福。
ニシキヘビのズボンを身につけ、片足ずつにセグウェイが許される。
左手にはニンテンドーDS。右手にはニンテンドーDSのペン。
左につくは、美人秘書。
右につくは、自動販売機。
それでいて、あれこれ考えていればよいというものだった。
記者
「で、今、どのような気分ですか、タカユキさん!!。」
タカユキ
「うーん。よくそんなことを考えるんですけど。
たぶん、こんな気分って、虫除けスプレーかけられた、蚊の気分っスよ。」

4すくみ創世記

「そのまんま東が当選したことが、いい思い出になる日が来るのかしら?。」
そんな鼻歌を歌っていた君の部屋は、18時のニュースの特集で組まれそうなくらい散らかっていたね。
いつか僕が
「ほしいDVDがあるんだけど、どこの店にもないんだよね」と言ったら、
「私もテレビのリモコン探してるんだけど、どこの隅にもないんだよね」
って言っていた。
規模。
規模が違うよ。
そう、あの日。
僕は、あんまり君がぽろぽろスナック菓子をこぼすから、こんなことを言ったね。
「ここでこぼれたスナック菓子は、無くなったりしない。分解されないんだよ。土とかだったら、まだ分解者と呼ばれる微生物が分解してくれるけどね。」
この話を聞いて、君はこの部屋には分解者はいないけど、創始者はいるって言ったね。
怖い。
すごく怖いよ。
「消費者の間違いじゃない?」って聞き返したけど、すごいいきおいで首振ったね。
何を否定されるのが怖かったの?。
何を肯定されるのが怖かったの?。
もしかして僕との会話、創始者に聞かれているの?。
えっ、そこの万年床に隠れているの?。
ときどき、布団の下に何かがいることがわかるの?。
ま、まじなの?。
・・・
男は僕しかいないから、僕が布団を一気にめくって確認するから。
でも、君もそばにいて。
だって、創始者かどうか見てもらわなくちゃ。
じゃあ、いくよ・・・。
えい!!。
!!!!!!!!!!!!!!
・・・
これが、そのとき見つかった、リモコンだよ。
まだちょっと、カールのチーズ臭がするね。

あんこうの季節

石持「そういえば、ナイフと短剣の違いは、片刃か両刃かの違いらしいぜ?。」
どうも僕は石持のことが好きになれない。
別にひどいヤツじゃあないけれど、ちょっと場違いな雑学を披露することがあるのが、困るところなのだ。
今日の僕は、ちょっと虫の居所が悪い。
意地悪してみるか・・・。
「じゃあ、ナイフと短剣で、同じ点って何だろ?」
石持「そりゃあ、攻撃力が上がる点だよ。」
バカにした質問なのに、普通に答えられてはなぁ。
適当にごまかすか・・・。
「じゃあ、ナイフと日本刀の違いは何かな?。」
石持「リンゴの皮のむきやすさだな。」
「短剣と探検で同じところは?。」
石持「読み方だな。」
「じゃあ、違うところは?。」
石持「読み方以外だな。」
「ナイフとワイフで違うところは?。」
石持「ナとワかな?。」
「じゃあ、同じところは?。」
石持「錆びるところかな?。」
「あー。ひどいこと言うんだー。言ってやろ。」
石持「俺は、嫁にとって空気のように必須の存在でありたいと思っているんだけど?。」
「そう・・・。それ、冠婚葬祭とかの本には載せられないね。」
石持「そうね・・・。」

恋のシュルレアリスム?続き

昨日からの続きなんで、そちらから。
あまりの人に、絵を見るのもそこそこ。
早めに会場を出て、外で彼を待つことにしたの。
すると、1時間くらい前に森脇君からのメールが入ってることに気付いた。
待ち合わせ時間くらいのときだわ。
「突然のメール、申し訳ございません。森脇の母でございます。今日、森脇は風邪を患いまして。行けなくなってごめんネ、とのことです。」
ど、どういうこと?。
お、お母さん?。
落ち着いて、私。
とりあえず箇条書きにしてみると、
・母親から息子のケータイ使ってのメール(息子が頼んだ?)
・「ごめんネ」を母親が変換した
・メールだから、ある意味いつだって突然
・森脇じゃなくて、息子でいいやん
となるわね。
不思議カルテットだわ。
でも、そんな点より。
何よりも、さっきまでいた森脇君は、一体何なの?。
不思議にも、ほどがあるわ!!。
さすがにドキドキしている私に、またメールが来た。
「今日は行けなくてごめん。それで、僕と付き合ってくれない?。」
何このタイミング!!。
接続詞の使い方おかしくない!?。
私が男心を知らないだけ!?。
あまりの不思議さに、私の心が揺らいだ。
なに?。
さっきのびっくり現象でのドキドキが今、恋のドキドキに勘違いされようとしているの?・・・。
・・・
だめ。
私はこんな不思議さには、まだ、心揺らめくような人間じゃない。
・・・森脇君のラブバレット、マトリックス並みの反りっぷりで避けてみせるわ!!。
背伸びをするふりをして、自分がどのくらいマトリックスに近づけるかを試してみた。
いける。
精神的にも、物理的にも。
でも、反りながらケータイを見たら、メールに続きがあることに気付いたの。
「君の不思議さが好きなんだ。ごほっ、ごほっ」
メールでも咳!!。
・・・
マトリックスばりに弾丸を避けた私の目に映ったのは、ヘリから垂直に私を狙う彼の姿だった。
・・・
その角度、的確だわ・・・。
追記
この間、上野でやっているダリ展に行ってきました。
いつかここにも書こうと思いましたが、時間がたったらこんなのになりました。

恋のシュルレアリスム

私、森脇君に「ダリ展に行かない?」って言われたとき、正直うれしかった。
森脇君って、不思議なところがあって気になってたんだけど、ほとんど話したことがない私にダリデートを申し込むなんて、不思議さが増しちゃった。
待ち合わせは国立科学博物館。
なぜ美術館前じゃないのか分からないけど、そこもまた不思議。
そういえば、国立科学博物館のHPには、お客様へのお願いとして「ペット(昆虫類含む)を連れての入館はご遠慮下さい」って書いたあったわ。
昔、トンボに糸つけてきたヤツがいるみたい。
たぶん、そんな出来事を踏まえたうえでの待ち合わせ国立科学博物館。
期待通りの不思議っぷりだわ。
当日、彼は一時間前に来ていたのに、私には「今ついたところ」って言った。
なぜ、私がいなかった50分を隠す必要があるの?。
ミステリアスボーイだわ・・・。
看板を頼りにたどり着いた美術館は、休日とあって大混雑。
館内も、人ばかり。
ダリも遠いわ。
でも、私は森脇君を見てるだけで満足だった。
彼、絵の前にたどり着いたはいいけど、あんまり人の流れがあるので、その場でくるくる回ってたわ。
人を流れさせるシステムみたいになってた。
不思議な人・・・。
でも、そんな幸福を見る時間は、長く続かなかった。
システムが流されてしまって。
わたしも人に押されて、彼を見失った。
館内の暗さも手伝って、見つけられなかったの・・・。
「どうしてここで「続く」なの?、不思議だわ・・・。」
年末なので、明日に続く。