書き途中で飽きてきた男

「女」とか「男」という言葉で言うと、独特の雰囲気が出るものだ。
例えば「科捜研の女」。
本当は「科捜研所属の誰々さん」と特定できるところを、わざと「女」。
よくわからないけど、対象の幅を曖昧に広げているところが、
「なにかこの女、すごいことを暴くのでは?」
「この女の人は、科捜研の代名詞とも言える活躍を見せるのでは?」
と思わせ、サスペンス的にはしっくりくる。
また、男女関わらず「正確無比に、冷静に事を進める」イメージもありそうだ。
これら雰囲気はかなり一般的なものらしく、様々なシーンで活用されている。
特に上のサスペンス系は、その効果がよく感じられる例。
はぐれ刑事のタイトルにもよく見られた気がする。
ただ、あまりに固有のイメージに強いものがあると、その効果を受けられないだろう。
例えば「桜吹雪の男」。
金さんである。
「遠山の男」。
やはり金さんである。
いくら謎を暴く過程があるからといって、金さんをこんな風に言ってしまうと「何気取ってんだ。」となってしまう。
注意しよう。
さて、「科捜研の女」は、そのように書くことで難事件を見事解決しそうだが、下のはどうだろうか。
「乗り遅れた男」
その実態は早朝のホームでの出来事かもしれないが、これが何かのタイトルになっていたりすると、なにやらハードボイルドな雰囲気が出る。
「知り過ぎた女」
その実態はおばちゃんかもしれないが、こう来たらもう2人は殺されるドラマしか思い浮かばない。
「声のでかい男」
このように、付加される情報によっては「恋のから騒ぎ」風になってしまうようだ、男、女。
ところで、どうも固有名詞でいきなり指摘するより、一旦その人を「男女」で表現してから指摘すると、その深みが増すような気がする。
「知り過ぎた杉本さん」
なんとなくだが、町内のスーパー事情にやたら詳しい。そのくらいの感じだ。
「知り過ぎた女。杉本」
明らかに、防衛庁か何かとつながりを持ち、殺し屋に追われている。
防衛庁はないとしても、どのみち殺し屋には追われている。
「男」「女」への置き換えは、そのセンテンスが持つ意味合いを、正負どちらかにぐぐっとシフトするのだった。
次回
「男女」以外で使ってみる。

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