うちにいるザリガニが、半身水面上に出ているような状態で浮かんでいても、さほど驚かなくなった。
最初は死んでしまったのかと思ったが、水槽を揺らすと慌てて沈み、身を隠そうとする。
えさを与えていないわけではない。
隠れ家用のプラスチック管が少ない訳でもない。
彼らは水中の酸素を取り入れるはずだから、それが足らないのだろうか。
それにしても共食いしたり、そもそも弱っていたりで死んでしまう彼らを知っているから、ぷかりと水に身を任せる彼らに正直「油断し過ぎだ」と思ってしまう。
しかし、ここにひとつ気づく事がある。
彼らが油断して浮いているのだとしたら、それは「ザリガニは浮くのがデフォルト」ということであり、僕らのイメージする「水底で徘徊するザリガニ」はザリガニが意識して沈んでいるということだ。
沈んでいるザリガニはがんばっている。
ならば少し浮くことくらい、許してやろうか。
ザリガニを、許すことにした。