「お天気雨」というのはこう、昔から人の心をとらえて話さなかったフシがある。
日本では「狐の嫁入り」とされ、太陽が出ているのに雨が降っているのを特異としていたし、調べてみると他の国でも動物は違えど似たような発想で、同様に特異。
お天気雨はとにかく、変なことだと思われていたようす。
確かに変だ。
太陽が出ているのに、雨が降っている。
それは皆既日食などのビッグ変に比べたら頻度も高く、より親しまれやすい変だったろう。
僕は昔からお天気雨が好きで、夏の豪雨の後などにはそれを期待に外に出てみたりする。
実家の近くには林があって、日に照らされる雨だれが葉にたくさんついているのがすごくきれいだった事を思い出す。
先日お天気雨が発生したので、雨の中を自転車でうろつくことにした。
季節柄新緑が辺りを覆っていることもあり、辺りは輝く緑色で目も開けられないほど。
ことわることはないがそれはうそで、そこそこだ。
そこそこの緑だ。
どちらにせよきれいなことに変わりはなく、坂を自転車で下っていく。
下りきったところで、虹が出ているのに気づく。
お天気雨はその性質上、虹も出やすい気がする。
しかもその虹は2重で、外側に薄くもうひとつ認められる。
雨なものだからカメラなんて持ってきていない。
僕はポケットから携帯電話を取り出すと、その光度の低い画面を凝視した。
パターンパスワードと「緊急通報ボタン」。
どうなんだろう。
緊急通報ボタンは、ちゃんとこういうときの緊急通報先へとつないでくれるのだろうか。
「おまわりさん、大変です」
「どうしました?」
「虹です。虹が2重に出てるんです」
「えーと、あー、ちょっとまず、場所をー」
「逆探知しようとしてる!!」
なんか台無しにしたくなったので記載。