クイナ、鳴かないのか?

「鳴かぬのは」
こう問われたのは夢の話で、朝方の半分目覚めているようなときだった。
それは、なぜかヤンバルクイナを捕獲しようとしている夢。
僕が「ヤンバルクイナだ!!」と興奮しながら指差した先には、確かに小型のすばしっこい鳥類がいたが、あの赤い足が特徴的なヤンバルクイナではなさそう。
冴えない茶褐色をしている鳥だった。
しかし、なんだかヤンバルクイナじゃないなと残念がる僕を制し、班長らしき人が「たぶんメスだろう」といい、捕獲作業は継続したのだった。
その途中に問われたのだ。
「鳴かぬのは」
僕はそのとき、夢の中ながらに「このクイナのくだりの前に見た夢が、例の「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」の関係であったことを思い出した。
詳細はわからないが、とにかく「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」というフレーズが出たのだろう。
クイナの夢からも覚めた僕は、なんとなく気になっていた。
「なんだ、鳴かない理由があるはずじゃないか」
どうにも「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」の残虐な感じばかりがクローズアップされがちなのだが、確かにホトトギスにも鳴かない理由があるはずだ。
今にも絞め殺そうと、手をふるわせている男がいる。
どうにかして鳴かせようと、口笛を吹く男がいる。
こんな男がカゴの前にいては、むしろ鳴くもんかと意固地になってしまうだろう。
ひなたぼっこしている男がいる。
これはもちろん、鳴く理由がない。

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