マッカチンというのはアメリカザリガニのことらしいのだが、そう言うとは全然知らなかった。
赤いからだろうか。
それはさておき、アメリカザリガニにはそれほど思い入れはない。
あいつらは持とうとすると威嚇するし、しっぽでびん!!とやるからびっくりする。
「モノレールねこ」という文庫本にはザリガニの話があったが、それが僕のザリガニ更新履歴の最新だ。
ただ、ザリガニ釣りに興じたことがある。
そこは家から車で1時間ほどの場所。
池というにはあまりに汚い。
大量のゴミとヘドロを含有した水たまりのようなもので、「悪い霊がいます」と言われれば霊など信じていなくてもそうなんだと納得できる、そんなところだった。
そこにザリガニが生息していることを父親が見いだし、僕と釣り竿とさきいかを連れてきたのである。
僕は結構幼かったが、その頃はもう「どんな小さい水たまりでも必ず観察する」くらいの水生昆虫ファンであったから、その池には心が躍った。
たとえ臭くて水生昆虫はいないことがわかっていたとしても、だ。
そこではさほど苦労することもなく、ザリガニが釣れた。
雑食で動かない物を摂食することが多いのだろうが、今食べようとしたエサが動き出すことに、彼らはなんら不信感を得ないようだ。
掴んださきいかが動き、水中を抜けて宙を舞っているにもかかわらず、そのはさみを離さないのである。
もちろんこれは、さきいかが宙を舞う不思議さ、ありえなさなどよりもこの池の摂食事情が根底にあるわけで、なんらザリガニの無能さを示すものでは決してない。
そして、さきいかと共にぶらぶらしている彼らを見て僕が思っていたのは、そのどん欲さでも赤さでもなく、ただ大きいかどうかだけだった。
ザリガニをほどほどに釣り上げ帰ろうとしたとき、何やら立て札があることに気づいた。
内容を見てみると市が用意したこの池の歴史のようなもので、昔カッパがいて尻子玉を抜きに抜きまくっていたということが書かれていた。
霊じゃなくてカッパがいた。