降心の雪 その3

昨日からのつづき
【あらすじ】
福島へ墓参りに行く。
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どうにか墓守も終え、墓地を去ることになった。
あとは飯を食って帰るだけである。
何せ帰りは、また吹雪いた峠を越えなくてはいけないから、多少なりとも早めにチャレンジする必要があるのだ。
全身ずぶぬれだから、もう雪は気にならなくなった。
悠々と車に乗り込む。
さて飯の場所へ行こうかと墓地を離れようとしたとき、ひとりがトイレを所望した。
雪の中に取り残されていた詰め所に言ってみると「うさぎの横にトイレあります」の貼り紙。
干支にちなんだ石像が並んでいるが、そのなかの「うさぎの石像」近くにトイレがあるらしいことがわかった。
「右から3番目の石像の横に隠し扉のスイッチがあります」
なんかRPGみたいだなと思っていたら、車内から悲痛な叫びがあがった。
「雪でどの石像がうさぎなのか、わからない!!」
一体一体雪をどかしながらというのは、外の天候を見てもやりたくない。
仕方がないから詰め所はじめまでもどり、「ねーうしとらうー」と口にしながら石像を数えたのである。
トイレはうさぎ
うさぎはトイレ
そう頭の中で繰り返していた気もする。
あのときほど「うさぎの石像を探す」ことはそうなかっただろう。
童謡「ふるさと」を思い出した。

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