ちょっとそこまで。27

昔ヘビのたくさんいた道は、見てくれはそのままだったが肝心のそれはいなかった。
丘を横切るその道を抜けて、このまま牛深市街へ行ってみることにした。
僕にとって牛深市街は、4つほど思い出がある。
初めての一人旅で熊本へ。
そこからバスとフェリーを駆使して牛深港に着いたとき。
港の浅瀬に小さいフグがいた。
今でこそミドリフグという名で売られている小さいフグがいるが、そのときはそんな小さいフグがいるなんて知らなかった。
子供だったのかもしれないが、その愛嬌っぷりのせいで覚えているのだ。
同じ牛深港近くにあった定食屋で食べたちゃんぽんとかき氷。
異常にうまかった。
特にかき氷は、でかい氷を専用のシャリシャリ機で削ったもので、たぶん削り目が細かいのだろう。
あれを食ったせいでその後一度もかき氷を食べなくなってしまったくらいだ。
サムライスピリッツというゲームの橘右京というキャラクターが細雪という、剣をしゃしゃしゃやる技を持っていたが、彼が氷をしゃしゃしゃやったら、このかき氷ができると思う。
キン肉マンという漫画でブロッケンJrというキャラクターがベルリンの赤い雨という、それだけじゃ何だか全然わからない技を持っていたが、彼がプリズマンをしゃしゃしゃやったら、カピラリア七光線を跳ね返せると思う。
谷崎潤一郎という作家が細雪という、筆をしゃしゃしゃやる技を持っていたが、彼が原稿をしゃしゃしゃやったら、この傑作ができると思う。
もういいか。
そして潤一郎、このメンツに遅れをとるか。
もうこの店はなく、とにかくうまかったことしかわからない店になってしまった。
牛深市街には、スーパーの寿屋があった。
ずいぶん昔だが、当時はおそらく牛深市民の生活を一手に担っていただろう。
そんな迫力を覚えていたのだが、いつの間にかなくなってしまったようだ。
なんと、その閉店のことがらはウィキペディアにも載っている。
やはりその影響は大きかったのだろう。
そしてそれと前後してか。
港近くにいつの間にかできていた「巨大お土産屋さん」がつぶれたという噂。
これは思い出とは少し違うが、え、あの市営っぽいお土産屋さんがつぶれた!?と驚いた。
牛深市街へ向かうのは、以上の確認なのである。

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