ちょっとそこまで。6

熊本駅で帽子を購入することになったお店のおばちゃんが言うには、そこは田舎でかつ道が1本しかないから、とても混むということだった。
確かに、結果的には牛深市はすこぶる遠かった。
皮の長さを競っているときの、りんごのてっぺんから底の部分くらい遠かった。
とりあえず熊本駅と天草あたりを結ぶ真ん中あたりに宿を取っていた僕は、恐る恐るレンタカーを走らせて、そこへ向かうことにした。
それにしても最近の車は「おそるおそる」を表現するのが難しい。
ほんの少しアクセルを踏み込むだけで、ぶりりと進む。
宿に着くまでに慣れるだろうか。
すると間もなく。
のんびり走らせていると、何となくアクセルの具合がわかってきた。
「やっとアクセルがわかってきました」
そんな状態で車を走らせるなという気もするが、なんせ車がないと不便そうな風景が広がっている。
そりゃ走らせるよ。
と、そんなことを思ったような、思わなかったようなというあたりで、見覚えのある場所を通り始めたことに気づいた。
線路だ。
ここはずっとまっすぐに続く線路と道路が平行しているところで、以前来たときもなかなか感慨深い思いをしたんだったか。
まっすぐに続く線路。
夏、夕暮れ。
麦わら帽子、白いワンピース、線香花火、ユースホステル。
ごめんラスト行、よかれと思って。
二度目の場所は、黄昏どきには行かないほうがいい。
このシチュエーションで、何かに触れることのない人なんているのだろうか。
いるとしたら、ほぼ間違いなく脱獄のへたな巌窟王なので、今後に期待したい。
ipodからJUDY AND MARYの「夕暮れ」が流れてきた。
宿までまだかかるというのに。
あわててヒャダインの「カカカタ☆カタオモイ-C」に変える。
なんだ。
なかなかいい歌じゃないか。

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