北海道旅行4

手渡された紙袋に「きのこ」の付箋。
出来上がった手作りオルゴールを乾燥、包んでもらうためには数十分かかるという。
小樽の観光街で暇をつぶして、再度オルゴール店に来たのだ。
そこにはきちんと包まれた4つの紙袋。
自分の自作オルゴールがどれかは、一見わからない。
そこで付箋である。
お店の人がその袋の中身を表すための付箋を貼っていてくれたのだ。
僕は「きのこ」。
非常に端的で、かつ美しく僕のオルゴールを表現してくれた店員さんのセンスに、僕は感動した。
そう僕のオルゴールのデコレーションコンセプトは「きのこ」。
1つ150円くらいする「きのこ」のガラス細工を密にちりばめたのだった。
赤を多めに、要所要所に青、黄を配置。
オルゴール上に20個くらいの群生ができた。
手痛い出費。
病的なきのこの閉密さ。小雨、尖閣問題。
しかしいい物ができた。
やはり「きのこ」は群生しているさまがいい。
小さい頃からけっこうきのこには興味があった。
けれどそれはそこらに生えているのを分別して食べようという考えからではなく、例えば図鑑を見ていて、あるきのこ欄の「赤どくろマーク、赤字の猛毒」に興味があった。
その詳細な症状を見ながら、これを猛毒であると示した人はどんな人なんだろうと考える。
鮮明なきのこの写真。
そして「幻覚」の二文字。
よく見ていた図鑑には、実際の幻覚症状も書かれていたりして、子供ながらにそのあやしい世界を想像するのが楽しかった。
さらにきのこはたくさんの種類がある。
猛毒のきのこに似ている、食用きのこというのもあった。
似ていたのに食べた人はどんな人なんだろう。
おいしいきのこ、まずいきのこ。
食された例がないきのこ、環境によって全然見た目が違うようになるきのこ。
一夜のうちに突然現れるきのこ、光るきのこ、ガスを出すきのこ。
そのほとんどに毒性と食用に向くかどうかがあって、きのこ図鑑を見ているだけで昆虫採集コンプリートな気分を味わえたものだ。
しかしきのこの「ひだ」に虫がいっぱいいるのを見たことがあり、また素人目での野きのこハンティングはたいそう難しいそうなので、僕のきのこ摂取はもっぱら干し椎茸であり、僕自身もそれでよしとしている。
150円のきのこたちは見た目、鮮やかすぎて毒きのこだ。
しかし安心。
こいつらは食される事なく、ゆっくりと回転しながら曲を奏でることが存在意義だから。
曲は「となりのトトロ」。
きのこコンセプトが先だったので「きのこ」に合う曲を探すのが大変だったが、トトロなら安心だ。

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