オナガについて。

本当はいけないことなのかもしれないのだが、家で野鳥を保護していたことがある。
オナガというその鳥は、尾が鋭く長いという、見た目の優雅さに対して、かなり怪獣じみた鳴き声を放つやつである。
この鳥が家にいたおかげで、僕はオナガの鳴き声をまねることができる、気がする。
それを林でまねれば、オナガが返事をしてくれる、気がするくらいだ。
その道端に落ちていたオナガの雛に、僕は「オナガマニア」と名づけた。
オナガが好きで、ついにはオナガになってしまった。
そんなドラマをもって、命名したのだ。
そんなオナガは計3回、脱走した。
脱走といえども鳥なので、飛んでいってしまったことになる。
今でもよく戻ってきたなと思う。
何せそいつは揺れる木の枝にすら餌がもらえると思って、ピーピーねだるのだ。
ちょっと自然に戻してもだめなんじゃないか。
本来はすぐにでもそうすべきなのだが、まあできませんでした。
さて、実は問題は他にもあったのである。
彼もしくは彼女の名前は「オナガマニア」なのだ。
脱走したときが大変だ。
そんな背景を知らぬ人がある家を通りかかるとき、そこから大声で「マニアーック!!」と聞こえるのだ。
オナガマニアでは長かったのか。
僕らはそいつをマニアックと呼んでいたのである。
僕は当事者だから気づかなかったが、心を鎮めて、客観的に当時のことを考えると、その家はミステリーである。
ときどきマニアーックと聞こえる家。
まさか鳥を呼んでいるとは思われまいて。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です