僕の通った中学校には、ちょっとした渡り廊下があって。
そこは夕暮れ時になると、光に照らされてきれいだった。
そんなことを、不意に思い出した。
放課後、委員会なんかの帰りにそこを通るのが楽しみで、わざわざ遠回りしたりもした。
渡り廊下から夕日の方を見ると、学校に設置されている時計と、2階の理科室が視界に入って、もう鍵のかけられている理科室に入りたくなったものだ。
その渡り廊下を過ぎると、確か放送室があって、前に放送委員だったからそのことも思い出せた。
黒いコードが散乱した機材置き場があって、何故かそこに譜面を立て置くやつがたくさんあったんだ。
音楽室は全然違う場所にあるのに、なんでこんなところにそれがあるのか、不思議だった。
ちょうどこの部屋の下が下駄箱で、昔消しゴムを投げて遊んでいたときに非常灯の灯りを壊したことがあった。
先生に怒られたあと、緑色とガラスのかけらを集めて掃除した。
消しゴムを投げたやつは、確か美術室のあたりから投げたんだっけか。
僕は美術でスニーカーの絵を描いたとき、紐の絡み具合を褒められたことがすごくうれしかった。
美術室のにおいも好きだったな。
なんか木屑のにおいがするんだよな、あそこ。
音楽室は、ここからずいぶん遠い。
そこにいくには、職員室の前か2年生の教室前を通ることになる。
職員室はあまり入ったことがないからよく分からないけど、その前の廊下は妙ないろどりの石でできていて、気味が悪い。
かといって違う学年の廊下を歩くほど、勇気はない。
だから職員室の前を歩くことになるんだよな。
その廊下を突き当たった角に階段があって、ここを3階まで上れば、音楽室だ。
僕は音楽が苦手で、音符が読めなかったせいもあり、成績が悪い。
でも歌うのは好きだった。
音楽室は、そこに誰もいないことが不思議なくらい、楽器が散らばり、机はずれ、生活感があった。
机を避けて窓側に来ると、外はもう夕暮れだ。
窓を開けて身を乗り出してみても、譜面立てのある放送室は見えない。
けれども、あの渡り廊下には夕日が当たって、金色に染まっていた。
すごくきれいだ。
もうあそこに戻るころには、夕日は隠れてしまっているだろう。