一度は使いたい。

2車線の、もう片方側の車線を走る前方のトラックを見て、その人は「もしかしたら家畜を運んでいるトラックかも知れない」と言った。
見てみると、かなり通気の良さそうな荷台だ。
50cmほどの仕切りで囲われている。
僕は言った。
「動物はいないでしょ。あの高さでしか仕切りしてないから、いてもジャンプしちゃうじゃん」。
「まあ、豚ならギリギリ飛び越せないかもしれないけど」。
事実、荷台に家畜はいなかった。
それから10分くらいして、僕はなんとなくこう思った。
「豚を話題としたときだけ、「ギリギリ」という表現を「ブヒブヒ」に変えたらどうだろうか」
そうなると先ほどのは
「まあ、豚ならブヒブヒ飛び越せないかもしれないけど」。
この変更で重要となることを、箇条書きにしてみる。
・どうやって豚の話題をさりげなく行うか
・その中で「ギリギリ」という言葉を使う局面を生み出すこと
・「ギリギリ」を「ブヒブヒ」に変えても、相手は会話の前後からそれが「ギリギリ」と同等の意味を持つものであることが理解できること
・相手との信頼関係
とりあえず信頼関係を除く、3つの点について考えてみる。
例えば生肉の話になったとする。
「ブヒブヒ」を試したい僕としては、若干食い気味で「豚の焼き具合」話を行うに違いない。
「あ、でも豚肉って生でも食べられないよね」
ここで次の重要点「ギリギリ生み出し」が違和感なくできるのは、今のところこのくらいしか思いつかない。
「うちのソテーがさあ、まだ肉が赤いんだよね・・・」
「それでも家族みんな、”ギリギリ”大丈夫だって思ってるんだけど」
・・・足りないのである。
この会話では、ギリギリを使う必要性が足りないのである。
それでもブヒブヒを使ってみよう。
「それでも家族みんな、ブヒブヒ大丈夫だって思ってるんだけど」
どうだろう。
何言ってんだの感じだろう。
結局、ギリギリが使われるかどうかすら怪しいため、そこにギリギリ以外の言葉をあてがっても、よくわからないことになるのである。
その点、冒頭の「豚が飛び越せるかどうかが微妙な仕切り」はこの変更の恩恵を最大限に受ける題材だと思う。
ほら、今ですら「豚が飛び越せるかどうかが微妙な仕切り」とタイプするとき、どれほど「ギリギリ」という言葉を使いたかったことか!!。
どうやら、この試みは「豚がいそうなところにある50cmほどの柵」のようなシーンでのみ、使用できるようだ。
「あれ?、あの柵。あれじゃあ豚でもブヒブヒ飛び越せんじゃね?」
けっこうギリギリ感が出てると思うのだが。
ブヒブヒ。
そのしょうもなさで、案外面白い試みであると自負している。
しかし「豚が通れるかどうか微妙な横穴」や「太ってはいるが、やけにセクシーな女性グループ」などという類似案件はあるものの、いかんせん贅沢すぎる。
残念。
僕はしょうもな会話が必要なシーンでは、絶えずトラックを探すことにする。

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