役者兼大道具屋の僕に、舞台で使う「オノ」を作ってほしいという依頼が来た。
もちろん本物ではなく、客席側からそう見えれば良いとのこと。
そこで僕は道具部屋に行って物色することにした。
うちのようにさほど大きくない劇団では、ありあわせの材料で道具を作ることも多い。
僕が依頼主に持っていったのは、針金とコピー用紙、紙粘土でできたオノだった。
依頼主が何回か振り回す。
意外かもしれないが、この材料で作ったものは案外重くなる。
依頼主がうなずくのを見て、僕は稽古に戻った。
「センスシャープ」。
シャープじゃないセンスの持ち主が考えたとしか思えないタイトルだ。
太った男が自分に合う服に焦がれるあまり、人々の衣類をオノで引き裂き奪っていく悲劇。
この公演を控え、劇団員たちは熱心に練習していた。
X月6日、金曜日。
公演も一週間前に迫ったとき、一つの問題がオーナーから提示された。
主人公の太った男、たもつがオノを振りかざし衣類を奪ったとき、客席で見ていたオーナーは「そんなんじゃ切れないだろ!!」と流暢に言い放った。
あわてて依頼主は僕に、もっと本物らしいヤツを作ってくれと頭を下げた。
仕方がないので刃の部分を金属板に変えることにした。
重さが増す上に、鈍く光る。もちろん安全だ。
依頼主も満足し、去っていった。
しかし、公演前日の稽古でまたもオーナーのクレームが。
僕はいなかったのだが、前回と同じ場面で
「それで、切るの?。ほんとにできるの?。」という冷ややかなコメントを残したそうだ。
改良したオノに気づかなかったようだ。
依頼主の泣きそうな顔を見た僕は、仕方なく林業関係の量販店に向かった。
立派な「斧」の出来上がりに、依頼主もほっとした様子だった。
これでとりあえず公演には間に合ったわけだ。
・・・
そして公演の翌日、たもつがスポーツ新聞の一面に載った。
その見出しは、皆さんが予想しただろうものだった。
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横浜、東京、池袋、新宿、渋谷、立川あたりの駅は、行き交う人々を薙ぎ倒したくなるね(>v<)
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ちなみにオーナーは外国人。
「切れる切れない」は、「着れる着れない」と言っている設定でした。