なぜか台北 その38

【あらすじ】
台湾旅行。
=====
台湾のよくわからない場所の川沿いを歩いていく。
そこはコンクリートで盛られた土手のようになっており、当たり前のようにそこにあがる階段は見当たらない。
大型車が敵意むき出しに走る幅広道路を永世中立の精神を持って渡り、コトなきを得る。
土手にあがると、そこは道路と土手、川と高架が遠くの都市的な方へ続いていく。
そんな風景で、まとめると日本だった。
ただ、土手から川をのぞこうとするとき、その間にある雑草地帯。
その雑草はやや南国風。
そのくらいだった。
僕は川の生き物に日本でない何かを見出すべく川面を凝視したが、特に何もおらずただ濁った水が流れるばかりであるあと暑い。
おもしろくない。
日本より南国なのに、その感じがない。
ここは日本の幹線道路付近とあまりに変わらず、灰色だ。
新品のえのぐセットを叩き潰したような色彩の生き物はどうした。
置いておくだけでガラス瓶が割れてしまうような音量のジャングルはどうした。
チームで行動し、毒矢で眉間を狙ってくる原住民はどうした。
と、台湾を責めてみてもどうにもならず、そもそも台湾はそれらを約束してくれていない。
偏見も甚だしいところがある。
そして場所がいけないこともあるだろう。
ともかく川沿いを歩く。
「ああ、あそこに自転車が停まっている。あそこまで歩くのはしんどいな」とつねづね思っていた自転車停車地点に到達しかけた頃、土手を下って川まで到達するまでの空間に畑があるのが見えた。
何か水を大きい桶にためていたり、畑の様子をみるかぎりは今でも絶賛栽培中のようす。
太陽の暴力下の土手の上に座り、畑を眺めているとおじさんが何か作業していることに気づいた。
この自転車の持ち主だろう。
おじさんはラフな姿で畑作業を行う。
こんな場所だ。
毒蛇もいたりするんじゃないかと心配になったりもするが、どうもおじさんは畑仕事の最中にて、別の心配をしているようだ。
僕である。
ちらちらこちらを見ている。
どうも台湾ではこんな時間に、ただ人の畑仕事を見ていることはおかしいらしい。
いや、台湾に限った事ではないか。
ともかくおじさん、大丈夫。
僕は毒蛇じゃない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です