ビロードツリアブについて。

虫を見る分には好きだが触れない。
気持ち悪いし。
そんなことを以前書いた。
しかし、見る分には好きと言えども、昆虫図鑑ではまず「ハエ、ハチ」のページは抜かす。
そのページに記載されている昆虫はほとんどハエ様であって、少しがんばればそこらで見られるから、いまいちグッとこない。
ときどきハエっぽくないやつがいると思えばそれは攻撃的な体色のハチなどであって、これはわざわざ見たくない。
このような理由により、ハエ、ハチのページは閑古鳥がそれらをついばんでいるのである。
ところがたまたまハエ、ハチページを流し見したとき、気になるやつを発見した。
ビロードツリアブという、残念ながら話題になっているハエ、ハチではない感じのやつ。
ただ、こいつは他のハエ様とは違った。
口が長いのだ。
体はハエ様だが、口が長いので他のやつとはかなり違う印象を受ける。
調べてみるとその長い口で花の密を吸うらしい。
よかった何かの体液でなくて。
とにかく唯一、このビロードツリアブはハエ、ハチカテゴリで印象に残ったものになったのである。
そしてこないだ。
サイクリング中に見つけた廃れ気味の神社でこのアブを見た。
ビロードツリアブは地面すれすれをホバリングしながら飛行し、ふらふらしていた。
この手のアブには、ホバリングフライと名付けらたものもいたはず。
ちゃんとホバリングして、えらいやつだ。
そしてこのとき、僕はそいつの口の長さよりも気になることがあった。
ホバリングしているアブの下にある枯れ枝のかけらとか落ち葉の破片が、動いていたのだ。
どうもホバリングしている風圧を受けているようす。
要は、ヘリコプターが着陸する際の、周りの人の風を受ける感じのことが、このアブ周辺でも起きているということだ。
当たり前なことなのだが、いかんせんアブのやることである。
枯れ枝や落ち葉は、律儀に風を受けてなびくことなんてない。
でもなびいている。
アブの陰に沿って、風を受けている。
そもそも陰だ。
アブ程度のことで、わざわざ陰もできることないじゃないかと思う。
ここでアブの陰ができていなくたって、誰も太陽をとがめたりはしない。
だけど陰はアブに従って動いている。
僕はこのアブのことを、この神社で恐ろしく自己主張している怪物のように感じてきた。
陰も作るし風圧でものを動かす。
そして何より口が長い。
神社、廃れている。
僕、50段くらいの階段を上ってきたので役に立たなくなっている。
なんか分が悪い。
とにかく口が長いんだ。
陰もうっすらとその長さを表している。
そして何を、陰を作っとんのだ。
羽音もたてないで、下の枯れ枝を動かしとんのだ。
滞空しとんのだ。
ああ、あっついなここ。
ということで、ビロードツリアブはより印象に残るやつになったのである。

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