誰も知らない。2

昨日からのつづき。
【あらすじ】
①「鈴木さん。なぜあなたは犯人が男であることをご存知なんですか?」
②「鈴木さん。なぜあなたは犯人がパラグライダーで脱出したことをご存じなんですか?」
②のほうが、より言い逃れできない。
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①では、鈴木さん(犯人)は「いや犯人が男だか女だか知らないですけど」とでも言えば、逃れることができる。
そうとうの前段階から、犯人が女性であるふうな事を取り調べで触れていたのなら話は別だが、それでも「ああ勘違いしました」となればそれ以上追求するのは難しそうだ。
一方、②は言い逃れ難しい。
パラグライダーによる逃避は一般的とは言いがたいため、些細な勘違いであらわれる事がないと思われるから。
「だって刑事さん。あなたビルの密室で金庫が盗まれていたって言ったじゃないですか。そこからどう逃げるかとなれば、パラグライダーしかないじゃないですか」
②は言い逃れ難しい。
他にも言い逃れの難しそうなものはないだろうか。
「鈴木さん。なぜあなたが被害者宅の砂糖の貯蔵場所が洗面台の下であることをご存じなんですか?」
なんとなく言い逃れしにくそうだ。
一般的にはキッチン付近なのに、たまたま被害者はせっけんと同じところにスプーン印を置いていたのだ。
鈴木は被害者と同棲していたのだろう。
鈴木はまだ愛し合っていた頃のことを思い出しながら、なぜあのとき砂糖はキッチンの方にしまったほうがいいよと言わなかったのかと後悔し、同時に犯行の動機はそれが引き金だったことを思い出したりするのかもしれない。
「鈴木さん。なぜあなたは犯人が幼少期のころ「デフォルメ」というあだ名だったことをご存じなんですか?」
言い逃れできなさそうなこともさることながら、これがどのように事件に関係したのだろうか。気になる。
また、取り調べにてこの話題にまで持っていった刑事に手腕には驚嘆すべきものがある。
「徳永さん。なぜあなたは犯行現場にあったラジオが壊れかけていたことをご存じなんですか?」
これは悪のり。
今回の件で一番キーとなるのは、言い逃れできないような非日常的なことを実際にやってしまった犯人あるいは被害者、そしてその証拠を見つけた警察。
この2つではないだろうか。
例えば、犯人はパラグライダーを犯行に使ってしまったし、警察はパラグライダーであると確定できる証拠を見つけてしまう。
密室からこつ然と姿を消していたが、パラグライダーがナイター中継の夜空にすごくよく映っている。
警察も複雑であろう。
ということで、これらの点がクリアされて初めて「言い逃れどうこうの攻防」を拝める事ができるわけだ。
そう考えると、この手のドラマはひどくぜいたくである。

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