にじ

死骸とはいえ、たまむしを見つけた。
森が多い場所とはいえ、都内にもいるらしいのである。
こいつはたしか幼虫時代を木の中で過ごす。
その期間は結構長かったはずだ。
そして成虫になっても高いところばかりにいるらしい。
なかなか出会わないものだから、まじまじとながめてしまった。
しかしぼくは出かける途中だったのだ。
その殻を持っておく場所がない。
通り道の塀に置いておくことにした。
帰り、どうやら雨が降ったのか、路面は湿っていた。
たまむしの死骸はどこかに行ってしまったのか、塀の上にはなにもない。
持って行けばよかったか。
しかし、かばんの中でこなごなになったりでもしたら、その昆虫性ふしぶしパーツのせいで二度とそのかばんを使うことはなかっただろう。
それに、雨の日に虹を捕まえておくというのも、あじけないわけで。

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