「どうしても行かなければならないんだ。」
「行くというのなら、私を殺してから行って!!」
「…ゴメン」
と、ここで当て身の登場だ。
男は女の中落ちもしくはみぞおちに打撃を加え、意識薄れゆく恋人に永遠の別れを告げ、一人敵地へと向かうのである。
小さな頃から。
叱られた夜は「この当て身一撃で、本当に人は気絶してしまうのだろうか」という小さなじゅもんが聞こえてきていた。
いろいろ疑問だった。
何か吐いたりしてはしまわないのだろうか。
どのくらいで意識が戻るのか。
後遺症は?。
でも今は、できるできないはともかく、「一撃で仕留めるなんて、どれだけ練習、実践してんだ?」という疑問だ。
「はじめての当て身」でなんて、一撃で仕留めるなんてできるはずがない。
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「…ゴメン」
エイヤ。
あれ、気、失わないな。
エイヤ。
苦しそうだ。
エイヤ。
…気絶したみたいだな。
と彼は、なんとなく別の理由で気絶したっぽい女に、もう一度「ゴメン」と言わなくてはならない。
…ゴメン。
風呂に入るので、つづく。