ちょっとそこまで。26

散歩から戻るころには、夕立まがいの通り雨がうそだったかのように晴れまくり、路面はもう乾いている。
南天でやることはもうひとつあった。
車に乗り込んだ僕は、右足でアクセルとブレーキを交互に踏んだり、両手でハンドルをいい具合にさばきながら、車を色々なところにぶつけないように運転した。
その目的地は案外近く。
というか、たいしてまとまっていない。
道だ。
コンクリートで舗装されてはいるが、かなり乱暴な道。
多くの枯れ枝で覆われたそこは、「あそこあんまし通りたくないな」と思わせるに充分な品格。
ここが僕の父親を希代の蛇ぎらいにし、僕もビビらせたロードなのだ。
小学生だった僕は、そのころトカゲに凝っていた。
なぜトカゲだったのだろう。
ギラギラした光沢だろうか。
しっぽが切れるところだろうか。
いや、たぶん手足とその付け根が人間みたいだったからだろう。
まあトカゲに熱を上げていたわけだが、僕はトカゲを見つけるにはどこがいいかを尋ねまくり、その道を知ったのだった。
歩いて20分くらいのところにある、山道入り口。
そこから10分程度かけて丘をのぼりおりする。
そんな道だった。
その道に、語るところは少ない。
ヘビばかりなのである。
脇にマムシがいるのが見えているので、道の真ん中を歩けば、車にひかれてちぎれたヘビ。
また、晴れているのに活発じゃないものだから枯れ枝なのかヘビなのかもよくわからない。
しかしちゃんと見てみると、かなり多くのヘビが道路上でじっとしているようだ。
食べられてしまったのだろうか。
トカゲは一匹も見つからなかった。
そんな道で、とてつもなく恐ろしかったのが「木の枝から垂れてるヘビ」だった。
完全に誰かがゴムのおもちゃを仕込んだ。
そんな出で立ち。
ヘビもリラックスしてたらあんなことになるんだと思った。
そんな道を経験してから、今でも年に一回くらい、町中に小さいヘビが現れる夢を見るようになった。
道のヘビは動かなかったのに、すばしっこいんだ、夢のやつは。

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