行く先は天草、牛深市。
ここにかろうじて知った人がいるのである。
今泊まっている宿から目的地までは、カーナビ換算だと2時間程度。
しかし熊本駅で「道が1本しかないから、くそ混む」的なことを聞いている。
故に8時半出発。
相手には訪問を知らせていないため、あまり朝早くてもどうかという大人的配慮と、突然訪れたったろうという子供的配慮がすばらしく融合した、いい時間だ。
ほんのり道を間違えたりしたものの、松島有料道路まではかなり順調に進捗した。
運転中はいらいらするようなシーンもなく、音楽も楽しめた。
しかし有料道路を降りて少し進んだ所あたりから、だんだんと混み始める。
こういうとき、自分の入る道路の先が遠くまで見えてしまうことは、苦痛以外の何者でもない。
確かに道は1本。
ずっと先まで車が詰まっているところを目の当たりにすると、工事などの単発的な渋滞原因ではないことに気づかされ、がっくりしてしまうのだ。
仕方がないので大声で歌い、それを対向車線の人に見られても気にすることなく。
そしてかなりぐねった合流車線を越えたあたりから、どうにか混雑も収まってきた。
と同時に、道が山に囲まれだす。
不安だ。
向かっている所は海に近い所なのに、山だ。
以前も同じ道路を通ったはずなのに、見覚えがない。
確か、5つ橋のあるところがあった。
あそこはもう通っただろうか。
紳士服の店が2件、近立している。
なぜだ。
もしこのあたりの紳士の密度が全国平均の2倍だったとしても、紳士服の店は1件でいいはずだ。
そもそも紳士の密度を計算するには、紳士の何たるかが数値化されていなくては出ないはずだ。
何気にそういうデータがあるのだろうか。
まずは坂道でオレンジをたくさん転がすのだろうか。
胸ポケットからぴこっと白いハンカチが出ているのだろうか。
雨の日、カサを持たずにバス停で待ってみるのだろうか。
あんまりこういうの、好きじゃないな。
このあたりのバス停は、なかなかのモラトリアム感を出している、ような気がする。
帰りに写真を撮る、と心に決める。