タロットの絵柄に被害者が模される、猟奇的な連続強盗事件が発生。
これを「タロットの絵柄が変われば事件は起こらなかったはず」と読んだ金田少年は一路、タロットカードが生まれたあたりの時代へ!!。
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「あのーすいません。大アルカナの絵を描いている人ってどなたですか」
「あそこでコーヒー飲んでる人だよ」
さっそく金田少年はその男に事情を説明し、絵柄を変えてはもらえないだろうかと相談した。
「ひどい事件なんです。太陽を模した事件では被害者が日時計の中央に拘束されていたし、星を模した事件では被害者の周りにまきびしがちりばめられていたり」
「まきびしが何なのかはわかりませんが、絵柄を変えるくらいならいいですよ」
と、金田少年は男の前に置かれていた、描き途中らしきタロットカードを見て驚いた。
「ちょ、ちょっと待ってください。この田村というのは何ですか」
「え、田村ですよ田村」
「ちょっと見せてください。・・・ジャスティスがないじゃないですか。正義」
「何ですか正義がないって。風刺ですか」
「そうじゃなくて、正義の変わりに田村なんですよ」
「何ですか正義の変わりに田村って。田村の擁護ですか」
「いやそうじゃなくて」
「いや言い過ぎではないですよ。正義の変わりに田村ってのは。ええ」
「どういうことですか」
「いや田村のやつ、本当にすごいですから、やっぱり」
「だから大アルカナのひとつに入れたんですよ」
「本当に田村が大アルカナなんですか」
「みんなと話したんですよ。やっぱり田村は入れておきたいよねって。もう8対2くらいで田村でしたよ」
「いいえ正義にしてください、正義に」
「そんなに怒らなくても。まあいいですよ。仕方ないですね」
このとき、金田少年は歴史の改ざんをしてしまったかもしれないことに罪悪感を感じていない訳ではなかった。
しかし後世ずっと正義が田村であることへの不信感。
そして結局どこかで田村が正義に変わっているだろうことを考え、強気に要求したのだ。
しかしそんなことを忘れてしまうくらいの絵柄が、大アルカナの中にあるのを気づいた。
「まだです。まだあります。これなんですか」
「吊された男」
「吊された男?。ああこれですか、鬼六です」
「ちょっと待って、言いたいことたくさんあるから」
「まず、事件です。事件のことがありますので、被害者の傷は小さくしたいのです」
「はい」
「そして絵柄、ね。これ和服の女の人が大変なことになってるから」
「はい」
「そして鬼六ね。これ全部まとめて絶対絵柄変えて。そして名前も吊された男にして」
「結構絵を描くの大変だったんですけどね」
そののんきな言い訳に、金田少年は怒鳴らずにはいられなかった。
「花と蛇知ってんなら、まきびし知ってんだろ!!」